2020年2月に起きたロシアによる隣国ウクライナへの侵攻は、世界を揺るがす大事件となりました。西側諸国をはじめとする世界各国はこれに反発し、強力な経済制裁を発動しました。その経済制裁はロシアの関係者にも「予想をはるかに上回る」と言わしめるもので、当然その影響はロシア経済や一般市民にも及ぶことになります。

経済制裁の効果がすぐに顕著に表れることはありませんが、やがて効果が表れるようになります。それに先立ち、ロシア国内ではさまざまな現象が起きました。自国通貨であるルーブルが紙切れ同然になるのではないかというリスクが現実味を帯びたとき、ロシアの人々はどんな行動を取っているのでしょうか。その行動からは、経済破綻やハイパーインフレなどに備える資産防衛術として学ぶべきことがあります。

経済制裁がロシア経済に与えたインパクト

ロシアへの経済制裁でロシア市民がとった行動から学ぶ資産防衛術の基本
(画像=OlivierLeMoal/stock.adobe.com)

武力による侵略行為や軍事的な合意違反などに対しては、これまでにもさまざまな国に経済制裁が行われています。イランや北朝鮮はその代表格で、いずれも経済が疲弊していることからも経済制裁がもつ「威力」がわかります。

ロシアへの経済制裁を受けてロシアルーブルは暴落、モスクワの証券取引所では株式取引が停止となり、金融市場が混乱しました。もちろんロシア以外の金融市場も株の暴落などで混乱が生じましたが、ロシア国内の混乱はその比ではありません。

対ドルレートが80ルーブル前後だったものが一気に100ルーブルを超え、さらに上値をうかがう動きを見せているため、ロシア国内でルーブルを保有している人の資産が日に日に目減りしていることになります。こちらはそれを示すUSD/RUB(ドル/露ルーブル)のチャートです。

ロシアへの経済制裁でロシア市民がとった行動から学ぶ資産防衛術の基本
出典:TradingView

ウクライナ侵攻がいつ始まったのか、もはや言うまでもないと思います。一時160ルーブルを超える局面があり、対ドルでルーブルは半値にまで暴落しました。これは間違いなく経済制裁による影響と、その思惑による投機売りによるものです。

「このままでは貯金を持っていても紙切れになってしまう」、そう考えたロシアの人々が資産防衛に走りました。

ロシアでまず「買われたもの」とは

所有しているルーブルが暴落を続けるなか、ロシアの人々は主に以下のようなものを買いました。それぞれの銀行や百貨店、ブランド品の販売店などに長蛇の列ができたといいます。

・米ドルなど外貨への両替
・ブランド品、高級腕時計、宝石
・iPhoneなど換金性の高いデジタル機器

ロシアでこうしたものを買う人が多くなったのは、資産価値を守るためです。暴落するルーブルではなく価値が低下しにくいものに換えておくことで資産を防衛しようとしているわけです。これは逆に考えると、こうした資産はいずれも資産防衛に有効であるともいえます。

もう1つの傾向として、ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)の値上がりが挙げられます。法定通貨ではなく国境の概念がない暗号資産であればルーブルで持っておくよりも安心と考えた人が多かったのか、ウクライナ侵攻後にビットコインの価格が急騰する場面がありました。法定通貨ではない特徴をいかしてロシア側でも経済制裁逃れに暗号資産を利用しているのではないかとの憶測もあるため一概にはいえませんが、この有事が暗号資産の価格に影響を及ぼしている可能性があるといえるでしょう。

ロシアの人々が起こしている行動は、インフレ対策の基本でもあります。戦争などの有事ではなくてもインフレは通貨の相対的な価値を低くするため、資産防衛のためには現金ではなく別のインフレに強い資産に換えておく必要があります。

世界の経済はすでにインフレへの傾向が顕著になっています。長らくデフレに苦しんできた日本にはまだまだ出遅れ感がありますが、世界の主要国は以下のようにインフレへの傾向を強めています。こちらはCPI(消費者物価指数)の各国推移です。米国を筆頭にインフレが進行していることが見て取れます。

ウクライナ侵攻がなくても、世界はインフレに向かっていました。日本でもやがてインフレへの傾向が強まり、ロシア国内のような状況ではないとしても資産防衛の必要性が高まってくるのは必至です。

インフレに強い資産とは

インフレに強い資産にはどのようなものがあるのでしょうか。インフレになると貨幣の価値が下がるため、その対極である現物資産の価格が上昇します。たとえば、以下のような資産はインフレになると価格が上昇しやすいため、インフレに強い資産といえます。

・金(ゴールド)
・原油、穀物など社会、生活に必要な商品
・主要国の外貨(米ドル、ユーロなど)
・物価連動国債
・不動産

いずれも所有しているだけで大きな利益を生むわけではありませんが、これらの資産は物価高や円安といった局面になっても資産価値が低下しにくいだけでなく、逆に値上がりする可能性もあります。

4つめにある物価連動国債は耳慣れない方もおられると思いますので、補足します。この物価連動国債とは財務省が発行している日本国債の一種で、CPI(消費者物価指数)に連動するためインフレによる物価上昇が起きてもその分利子が大きくなるため、インフレへのリスクヘッジが可能です。

資産防衛の観点から組み入れたい投資

資産運用の観点からの資産防衛で意識したいのは、株や投資信託といった定番の投資商品だけでなく上記で紹介したようなインフレに強い資産を組み入れていくことです。以下の資産を組み入れることによって、それぞれ解説しているリスクヘッジ効果が得られます。

組み入れるべき資産理由と得られる効果
金(現物)、金ETFなど株価と逆相関の関係あるため株価の下落があっても金価格上昇でリスクヘッジができる。
外貨円安が進行した場合、米ドルやユーロなど主要外貨は上昇しやすくトータルでの資産目減りを防げる。
物価連動国債インフレの進行に備えつつ、日本国債で安全運用できる。
現物不動産不動産はインフレに強く、短期的な価格変動があまりない。

不動産投資がインフレに強い理由

先ほど、リスクに強い資産として4つめに不動産を挙げました。現物資産の代表格で、インフレで物価が上昇すると所有している物件の価値と合わせて家賃相場が上昇します。つまりインフレによる影響を受けにくく、同時に衣食住の1つに関わる投資なので急激な需要の減少が起きにくく、不景気にも強いことがメリットです。

主な収入源に毎月の家賃収入を充てているため、株やFX、暗号資産のように短期的に大きな利益を得るようなことはありませんが、金融機関の融資を利用して長期的に取り組むと他の投資では得られないような高い資産形成効果が得られます。資産形成には単に資産を増やすのではなく、資産を守る役目もあります。その意味においても不動産は現物資産の代表格として資産防衛に資するところが大きく、もしインフレの次にデフレがやってきたとしてもあまり大きな影響を受けることなく資産を守ることができます。

ロシアの人々の行動を他山の石とする

さすがにロシアの人々が資産防衛のために今すぐ不動産を購入することはできないと思いますが、幸い私たち日本人はそこから得られた教訓で不動産を含むさまざまな資産を購入することができます。ロシアで起きていることから多くのことを学び、長い人生を安心して送ることができる資産防衛に役立てたいものです。

(提供:Incomepress



【オススメ記事 Incomepress】
不動産投資にローンはどう活用する?支払いを楽にする借り方とは
お金の貯め方・殖やし方6ステップとは?ごまかさずに考えたいお金の話
日本人が苦手な借金。良い借金、悪い借金の違いとは?
あなたは大丈夫?なぜかお金が貯まらない人の習慣と対策
改めて認識しよう!都市としての東京圏のポテンシャル