この記事は2022年4月1日にSBI証券で公開された「『新しい東証』がスタート! ~市場再編の意味は?銘柄選択に影響は?」を一部編集し、転載したものです。


東京証券市場,市場再編
(画像=PIXTA)

2022年3月までの年度が終了しました。日経平均株価は前年度末比4.65%下落、TOPIXは0.39%下落するなど、総じて冴えない年度になりました。新型コロナウイルスの感染拡大が続いたことに加え、インフレ・金利上昇に対する懸念、ウクライナとロシアの戦闘を背景とするリスク許容度の低下等、厳しい外部環境に悩まされました。

こうした中、4月1日(金)からは新年度がスタートとなりました。4月4日(月)からは、「東証再編」により、東京証券市場の市場区分が変更となります。

投資家にとっては、どのような意味があるのでしょうか。また、銘柄選択に関し、どのような影響が出てくるのでしょうか。

4月4日(月)から市場区分が変更 ―― 押さえておきたいポイントは?

2022年4月1日(金)からは新年度がスタートとなりました。同月4日(月)からは、「東証再編」により、東京証券市場の市場区分が変更となります。

東京証券取引所の市場区分はこれまで、「東証1部」「東証2部」「ジャスダック・スタンダード」「ジャスダック・グロース」「東証マザーズ」でしたが、これが新しく、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編されるというのが変更概要(図表 - 1)になります。ここで特に重要と思われるのが、「東証1部」の銘柄すべてが「プライム」市場に組み入れられる訳ではないという点です。

「東証再編」の概要~「東証1部」から「スタンダード市場」に342社
(画像=SBI証券)

4日の段階では、基本的に再編後の上場市場は、企業の希望通りです。ただ「東証再編」により、新しい「プライム」市場では、一定の時価総額や流動株式比率、流動株式時価総額、利益水準等の条件を満たす必要が出てきます。条件を満たしていないにもかかわらず、「プライム」市場での上場維持を望む東証1部銘柄は、条件改善に向けた計画書を提出し、その努力をしていく必要があります。

したがって、東証1部銘柄のすべてが、「プライム」移行を望めば、それも可能であったと考えられます。

しかし、中には数値基準的には「プライム」市場の条件を満たしつつも、「スタンダード」市場を選ぶ東証1部銘柄(4月1日時点)も数多く出てきました。「プライム」市場への上場を選ぶことで生じるメリットよりも、あえて「スタンダード」上場を選ぶことで生じるメリットを重視した企業も少なくないことになります。

「市場再編」がもたらす銘柄選択のヒントは?

東証1部銘柄が再編後の市場として「スタンダード」市場を選ぶことについて、デメリットはあるのでしょうか。

図表 - 1における東証1部から「スタンダード」市場に移行予定の342社について、2021年3月末以降、2022年3月31日(木)までの株価騰落率をみると、単純平均で3.9%の下落でした。同期間のTOPIX下落率0.39%に対してアンダーパフォーマンスではありますが、日経平均株価下落率4.65%よりはアウトパフォーマンスとなっています。株式市場は、特に「スタンダード」上場を嫌気していた訳ではないようです。

むしろ、「東証再編」のタイミングは、「スタンダード」市場を選択した銘柄にとっては、悪材料出尽くしのタイミングになったかもしれません。

そこで、以下のスクリーニングを行ってみました。

1:4月1日(金)に東証1部上場銘柄で、同月4日(月)以降「スタンダード」市場上場予定の銘柄
2:最低1名以上のアナリストが業績予想を公表
3:市場コンセンサス(Bloomberg集計)で、今期・来期ともに営業増益予想。ただし、今期は黒字予想
4:3月31日(木)現在の時価総額が100億円以上

上記の条件を満たす銘柄を時価総額の大きい順に並べたものが図表 - 2となります。上位8社は時価総額250億円以上あり、「プライム」市場の上場基準を満たしています。しかも、アナリストが当面、上記「3」の利益成長を見込んでいる銘柄となります。「スタンダード」市場を選択したという悪材料は出尽くしとなり、新年度相場で反発力が強くなる可能性もありそうです。

「スタンダード」を選択した東証1部銘柄で、一定の時価総額を有し、アナリストが利益成長を期待している銘柄 「スタンダード」を選択した東証1部銘柄で、一定の時価総額を有し、アナリストが利益成長を期待している銘柄
(画像=SBI証券)

▽当記事の内容について、著者が動画で詳しい解説を行っています。あわせてご視聴ください。

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長
・出身:東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味:ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技:どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物:サイゼリヤのごはん
・好きな場所:秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的な寄稿も多数