この記事は2022年4月28日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「キャピタル・アセット・プランニング【3965・スタンダード】個人資産形成と金融機関システムのDX化支援 3年後にはストック収益を全体の8割に」を一部編集し、転載したものです。
キャピタル・アセット・プランニングは、金融分野に特化した独立系システムインテグレーターだ。同社は1990年の設立以来「個人と企業の資産を取り巻く課題にフィンテックで支援する」(北山雅一社長)ことを目的に、生保や銀行、証券など金融機関向けシステムを提供してきた。個人では人生100年時代到来による資産運用、企業では2025年の壁問題と、金融ビジネスが直面する課題は多い。こうした環境のもと、同社は新システムの開発を軸に、新たな事業領域の拡大を図る。
▽北山 雅一社長
「ゴールベースプランニング」フィンテック技術で提供
同社は、2020年に開発した「ゴールベースプランニングシステム」を、成長戦略の柱に位置付けている。同システムは、主にファイナンシャルアドバイザー(FA)が顧客の生涯資産予測に使用するシステムとして開発されたもの。
「ゴールベースプランニング」とは、短期・長期の目標の立案と目標達成可能性評価のこと。米国では10年ほど前より、投資ポートフォーリオの正当性を判断する指標として用いられてきた。
「個人の投資目標は、生活費の確保、趣味、住み替えなど、人によって千差万別です。もちろん投資目的も期間も予算額も違う。フィンテックによる資産作りの自動化は進んでいますが、資産ができた後の運用方法まではカバーできていないケースも多い。将来の自分が本当に望む生き方かできるよう、当社のシステムを使って生涯の資産運用問題を解決していければと考えます」(同氏)
株式、不動産管理、保険設計、相続対策などを組み合わせてシミュレーションし、生活費確保や旅行、子供達への援助などそれぞれの目標達成確立を判定可能だ。
「老後の生活では、夫はゴルフを月1回はしたいが、妻は家のリフォームを優先したいなど、夫婦間でずれが生じていることも多い。そこで大切なのは目的の優先順位付けです。自分達だけでやるのは難しいため、FAが家族の間に入り意見をすり合わせます。優先順位をつけた目標に対して、当社システムでシミュレーションし、継続してモニタリングしていく。人の力と当社のテクノロジーを融合させ、個々人の幸せをベースとした生涯資産運用を実現します」(同氏)
同社はFAに対し、資産3億円以上の富裕層向けに「WMW」、現役世代の資産形成を支援する「DYG」と呼ばれる資産管理プラットフォームを展開、顧客への資産運用アドバイスをサポートする。また金融系ウェブサービスを提供するマネーフォワード社と連携し、資産を見える化した30、40代向けスマホアプリも提供している。
一方、企業向けシステムでは、銀行・生保のDX化を推進するシステムを開発、「2025年の壁」問題に対応する。
「今後、全金融機関で年間1兆8,000億円のシステム投資が実行され、これからも拡大が予想されます。そのうち全体の46%を占める生保マーケットは巨大で、顧客の85%が生保である当社はこの市場を狙っていきたい」(同氏)
現在、同社の売上は生保を中心とした受託開発事業が中心だが、今後はクラウドシステムを提供することでストックビジネスを強化していく考えだ。
受託モデルからの転換期。連結売上高90億円目指す
2021年11月に策定した、2022年9月期から3カ年の中期経営計画でも、個人や金融機関でのDX化支援が軸となっている。
個人の資産管理向けの「ゴールベースプランニングシステム」では、会計事務所、フィナンシャルアドバイザー、生保代理店向け、個人向けの販売を強化。いわばB to B to C事業でシステム使用料、FPフィーシェア、資産残高課金とストックオプションを創出。2022年9月期に1億2,000万円から2024年9月期には3億6,000万円と3倍の伸びを目指す。
一方、BtoB事業である企業向けシステムでは、レガシーシステム刷新の受託売上収益でフロー収益、使用料、保守料でストック収益をあげていく。さらにクラウド化し、クラウド売上比率を2022年9月期の27%から2024年9月期には50%にする。また、ストック収益を全体売上高の80%、5億8,800万円とする目標を掲げる。
計画の実現のために、提携先の拡大に注力。金融関連企業との連携を強めている。2021年12月には大手資産管理サービス会社ガイアと資本提携。「ゴールベースプランニングシステム」を提供することで、全国のFAへ拡充を図っていく。また、2022年の1月には生保系システムに強いキヤノンマーケティングジャパンと資本業務提携を発表した。
同社は4月からの東証市場再編でスタンダード市場を選択した。その理由の1つに北山社長は人材確保への投資を挙げる。
「はじめはプライムの猶予期間を考えていましたが、それより自社での成長戦略を優先しました。現在の課題としては、エンジニアの確保です。人件費が高騰しており、金融システムベンダーだけがライバルではない状況です。中長期的な成長ができる足元を固めたうえで、プライムへの再挑戦も考えていきたい」(同氏)
▽東京オフィスの様子
同社を取り巻く事業環境。「人生100年時代」到来と「2025年の壁」問題
日本では人生100年ともいわれる超長寿時代が到来する。老後資金枯渇が懸念され、それは老後2,000万円問題とも言われている。近い将来、相続税は東京都民の6人に1人が払う計算となる一方、最高税率は55%とOECD加盟国中最も高いのが現状だ。しかも国税庁による相続財産の内訳をみると、不動産など分割しにくい財産が約50%を占めるという。日本での生涯資金運用には相続税納税、争いを発生させない財産分割という課題が発生している。
一方で、企業のシステム老朽化も問題視されている。それが、2025年の崖問題だ。金融機関では60年以上前のプログラミング言語を使って稼働しているシステムも多い。古い言語でメンテナンスができる人材が定年退職などで減少、効率の悪いシステムを使い続けることで省力化できず国際競争力の低下が懸念されている。2025年以降、毎年最大で12兆円の経済損失が生まれるといわれており、新システムの導入への動きが加速している。
2021年9月期 連結業績
売上高 | 66億3,100万円 | 前期比 3.6%減 |
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営業利益 | 1億2,000万円 | 同 28.8%減 |
経常利益 | 1億1,700万円 | 同 30.9%減 |
当期純利益 | 6,900万円 | 同 22.1%減 |
2022年9月期 連結業績予想
売上高 | 73億4,000万円 | 前期比 10.7%増 |
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営業利益 | 2億5,00万円 | 同 70.1%増 |
経常利益 | 2億2,500万円 | 同 90.8%増 |
当期純利益 | 1億4,000万円 | 同 101.2%増 |
※株主手帳5月号発売日時点