この記事は2022年5月2日に「月刊暗号資産」で公開された「Wikipedia、暗号資産による寄付受け入れを停止」を一部編集し、転載したものです。


インターネット上のフリー百科事典サイト「Wikipedia」を運営する非営利団体Wikimedia(ウィキメディア)財団が2日、暗号資産(仮想通貨)での寄付の受け入れを完全に停止する方針を明らかにした。同団体は今まで、ビットコイン(BTC)やビットコインキャッシュ(BCH)、イーサリアム(ETH)による寄付を受け付けていた。

ウィキメディア財団が最初にビットコインでの寄付を受け付け始めたのは2014年のことだ。当初は、同財団への寄付を「シンプルかつ包括的にすること」を狙いとしてビットコインを寄付方法に追加したという。

なお、同財団が当初は米大手暗号資産取引所コインベース(Coinbase)を介して暗号資産での寄付を受け入れていたが、その後は複数の暗号資産での寄付を受け付けるためにBitPayのサービスを利用していた。

今回、ウィキメディア財団が暗号資産による寄付の受け付けを停止するきっかけとなったのはコミュニティ投票の結果であった。投票では、暗号資産での寄付を全面的に停止したいという回答者が全体の70%を占めていた。

また、ウィキメディアのコミュニティ内では暗号資産による寄付の受け入れの是非に関する議論は3ヶ月前から行われていた。そこで暗号資産寄付の停止を求めたのは、環境への負荷や環境持続性を懸念してのものが大多数を占めたという。他には、暗号資産のボラティリティが非常に高いことを指摘した声もあった。

ただし、Wikipediaで編集を務めるMolly White氏によると、議論に参加したのは400人程度のコミュニティメンバーに過ぎなかったという。さらに、ウィキメディア財団のコミュニティが行った議論では、暗号資産が環境に悪影響を与えるものとは一概には言えない点が見過ごされていたと言える。

ビットコインのマイニングではこれまで石炭燃料が多く使用されていたが、現在では環境への影響を意識して再生可能エネルギーを活用したマイニングやPoW(Proof of Work)を利用しない暗号資産も登場している。

そもそも2021年度は同財団への寄付総額のうち、暗号資産によるものは全体の0.08%程度に収まっていたため、寄付の手段としては影響力が最も低いものであった。(提供:月刊暗号資産