2022年になってからの資産運用はかなりな逆風にさらされている。原因は昨秋以降、FRB(米連邦準備制度理事会)が超金融緩和政策を中立に戻すと意思表明をしたことだ。新型コロナ禍にありながらDX(デジタルトランスフォーメーション)の恩恵を受けて2年間近くも上伸していたナスダック総合指数も、さすがに年初来で2割を超える下落となっている。
こうした不安定な状況は、筆者がバークレイズのウェルス・マネージメント部門でISSヘッドを務めた時代にも経験しているが、お客様の超富裕層のみならず、プライベート・バンカー自身までもが「このまま投資をお勧めして良いのだろうか?」と疑心暗鬼になりがちである。それが超富裕層の損益状況に由来するものならばまったく構わないのであるが、実は別な理由が垣間見えることもある。
たとえば、超富裕層が購入された仕組債がノックイン条項に抵触してしまったケースだ。ノックインに関する説明自体はまともなプライベート・バンカーであれば、必ずきちんと適正に行う。だが、真面目なプライベート・バンカーが、きちんと真剣に考えたうえで提案を練り上げ、お客様の超富裕層に丁寧な商品説明を行い、適合性の原則なども踏まえて行ってきたことが、市場の下落を理由に全否定され、ときに「罪人扱い」のような仕打ちに会うケースがある。結局は「言った、言わない」の水かけ論になることも珍しくはない。