新型コロナウイルスの世界的な感染拡大やウクライナ戦争などの影響で、サプライチェーン(供給網)が寸断されるなか、「脱グローバリゼーション 」が広がりをみせている。商品・サービスから技術、資金、人材に至るまでグローバルに構築してきたサプライチェーンを抜本的に見直し、可能な限りローカル化を図ることで、自国の経済を守るという考え方だ。

中国,経済
gopixa / Adobe Stock、ZUU online

たとえば、2022年3月4日付のドイツ国営メディア、ドイチェ・ヴェレ(DW)は「パンデミックとウクライナ戦争が、非グローバル時代のターニングポイントになるだろう」との専門家の意見を紹介している。また、5月2日にはIMF(国際通貨基金)の岡村健司副専務理事がブルームバーグの取材に応じ、脱グローバル化や生産拠点を国内に回帰させる世界的な動きについて、「グローバリゼーションが経済に著しい恩恵をもたらしてきたことを認識すべきだ。(中略)ただ、保護主義の台頭や、戦争やパンデミックでサプライチェーンが寸断される懸念が高まる中で、その反動が起きていることは明らかだ」「われわれは世界がブロックに分断されることを懸念している。ブロック化は世界の繁栄の妨げになろう」と指摘している。

そうしたなかで注目されるのは、中国の国家戦略「ITアプリイノベーション」である。後段で詳述する通り、中国は2022年5月、国営企業や政府機関に対して 、海外ブランドのパソコンをすべて中国産に交換するように命じた。交換の期間は2年以内と定められているが、この措置により中央政府レベルだけで最終的に少なくとも「5,000万台のパソコンが中国産に置き換えられる」可能性があるという。国営企業などを含めると処分される海外ブランドのパソコンは膨大な数に上るとみられ、将来的には米国企業のデルやHP(ヒューレット・パッカード)が締め出される一方で、香港のレノボの独り勝ちとなるなど、中国パソコン市場の勢力図が大きく変わる可能性がある。

今回は中国の国家戦略「ITアプリイノベーション」の話題をお届けしよう。