一般的に賃貸住宅市場は4月に入ると徐々に動きが落ち着き、繁忙期から閑散期へと移行していきます。繁忙期のうちに空室が埋まらず、繁忙期後も入居者募集をしているオーナーは4月以降になると徐々に焦りを感じることもあるでしょう。
本記事では、繁忙期後に入居者募集をするにあたり、落ち着きつつあるお客様を取り込むために有効な戦略を5つ紹介します。
賃貸住宅市場の繁忙期はいつ?
入居者募集をするにあたっては、まずお客様の動きが活発になる時期がいつなのかを知ることが重要です。時期によって最適な戦略が異なる場合もあるため、入居者募集の方法を考える際の判断材料の一つにしましょう。
繁忙期は年に2回ある
一般的に賃貸住宅市場の繁忙期は年に2回あり、それは1〜3月と9〜10月です。これらの時期は年間を通じて入退去が最も盛んになります。
繁忙期はお客様の数も多いため、募集を開始したその日のうちに複数の申込が入ったり、退去前の部屋に先行申込(入居者がまだいる部屋に入る申込)が入ったりすることも珍しくありません。繁忙期は貸し手市場であるため、礼金や家賃を強気で設定しても入居者が見つけやすい時期であるともいえます。
繁忙期は進学、就職、転勤のシーズン
1〜3月と9〜10月が繁忙期になる理由は、進学、就職、転勤のシーズンであるためです。
繁忙期は地方から都心部に出てくる人や急いで部屋を見つけなければいけないお客様も多いため、物件選びや内見に多くの時間を割けないという場合もあります。
入居者募集が短期決戦になることも往々にしてあるため、いかに迅速な対応ができるかが空室を埋める大きなキーポイントの一つです。
繁忙期後でもできる5つの戦略とは?
繁忙期を過ぎるとお客様の動きが急激に止まるかというと、必ずしもそうではありません。繁忙期に埋まりきらなかった空室の入居者募集のためにオーナーとしてできることはあります。
繁忙期後の入居者募集において、できる戦略は以下の5つです。
・時期をずらして部屋探しをしているお客様を狙う
・法人の社宅需要を取り込む
・仲介業者への営業を強化する
・入居者の引越し費用の一部を負担する
・入居時初期費用の一部を負担する
時期をずらして部屋探しをしているお客様を狙う
お客様の中には、あえて繁忙期を外して部屋探しをするお客様も一定数います。繁忙期は貸し手市場であり、引っ越しの需要も多いことから、部屋を借りるにあたってのコスト(家賃、礼金、引越し費用等)が高くなる傾向があるためです。
上記のようなお客様を見つけるためには、各仲介業者にヒアリングを行うことで、お客様の動向をリサーチしたり、繁忙期後も多くのお客様を抱えている仲介業者を見つけたりすることが重要です。
時期をずらして部屋探しをしているお客様を多く抱える仲介業者を見つけることができた場合、そのお客様が繁忙期後に部屋探しをしている理由をヒアリングするようにしましょう。そうすることで、そのお客様を取り込むために有効な更なる施策が見えてくる可能性が高まります。
法人の社宅需要を取り込む
法人の場合、特有の要因により部屋(社宅)探しをする時期が繁忙期後になることも想定されます。社員寮やウィークリーマンション等に仮住まいさせながら、新入社員に対して入社後1ヵ月ないし数ヵ月程度にわたって集合形式の研修を行い、その後に各拠点へ本配属させるという場合もあり得るためです。
上記のようなお客様に訴求するためには、法人社宅に強い仲介業者に対して物件の告知をするのが効果的といえるでしょう。
そのエリアではどの法人が、いつ、どのような条件で社宅を探すことが多いのかという例年の傾向に関する情報を事前に仲介業者から仕入れておくことで、的確な時期に的確な訴求ができるようになります。
仲介業者への営業を強化する
繁忙期を過ぎると仲介業者の業務量が少しずつ落ち着くため、オーナーや管理会社からの営業に応じやすくなります。仲介業者の手が比較的空きやすい、かつ繁忙期のお客様の動きが残っている繁忙期後は、仲介業者への営業を強化するのに最も適した時期であるともいえるでしょう。
基本的には管理会社に依頼をして、物件の営業図面を各仲介業者に配布してもらうという形になりますが、オーナー自らが仲介業者に出向くというのも選択肢の一つです。
時間と手間はかかりますが、仲介業者の生の意見や現場の状況を知ったり、仲介業者との関係を構築したりする良い機会になるでしょう。
また、仲介業者への営業をするにあたり、期間限定で広告費を上乗せするキャンペーンを実施するという方法も効果的かもしれません。
仲介業者の主な収入源の一つは広告費であることから、広告費が上乗せされた物件の情報は仲介業者にとって有益です。そのため、繁忙期後に残ったお客様にその物件を紹介してくれる可能性が高まるかもしれません。
入居者の引越し費用の一部を負担する
引越し費用を少しでも抑えて部屋探しをするお客様に訴求するために、引越し費用の一部をオーナーが負担するというキャンペーンも有効な施策の一つかもしれません。
繁忙期後であっても引越し費用は決して安くはない金額になる場合が多いため、上記のようなお客様に響く可能性があります。
「引越し費用の一部」を決める際は、家賃の金額を基準にするといいでしょう。家賃10万円、引越し費用の負担割合を家賃の2割までとした場合、オーナーが負担する金額は2万円(10万円×20%)であるため、遅くとも入居開始日の翌月の家賃収入で回収可能です。
入居時初期費用の一部を負担する
入居時初期費用を少しでも抑えて部屋探しをするお客様に訴求するために、入居時初期費用の一部をオーナーが負担するというキャンペーンも有効な施策の一つといえます。
入居時初期費用には以下のようなものが挙げられます。
・敷金
・礼金
・前払い家賃
・仲介手数料
・保証会社の保証料
・火災保険料
・鍵交換費用 など
入居時初期費用は合計すると数十万円程度になることが多いため、費用に敏感なお客様に響く可能性があります。「入居時初期費用の一部」を決める際は、初期費用総額の◯割という上限を決めておく、またはオーナー負担とする項目を予め定めておくという方法のいずれかが適切でしょう。
本施策を実施した場合に、オーナー負担分の金額を家賃収入の何ヵ月で回収ができるかという視点を常に持っておくことが重要です。
繁忙期後でも工夫次第では入居者を見つけられる
繁忙期後はお客様の動きが下火になり、空室を埋めにくくなるのが一般的ですが、お客様がゼロになるわけではありません。オーナーの経営努力と工夫次第では、繁忙期後であってもお客様の動きとニーズをとらえることで空室を埋めることは十分に可能といえます。
また戦略を考える場合は、いずれの戦略についても家賃や礼金等の募集条件が相場に適合しているかどうかを確認することも重要です。まずは競合物件と比較して、適切な募集条件を設定するということから始めましょう。
(提供:Incomepress )
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