個人事業主などの自営業者は基本的に国民年金保険のみの加入になります。そのため、会社員など厚生年金保険加入者に比べると、リタイア後に受け取れる年金額は少なくなります。

ただ、自営業者などの国民年金保険のみの加入者に対しても、老後の資産を増やせる公的制度は存在します。本記事では、自営業者が利用できる公的な年金制度について解説します。

国民年金基金 

個人事業主が利用できる公的年金制度とは?
(画像=AndreyPopov/stock.adobe.com)

国民年金基金制度は、国民年金法の規定に基づいた公的な年金制度です。会社員の人は厚生年金保険と国民年金保険の2階建てですが、自営業者は国民年金保険にしか加入できません。これでは将来受け取れる年金額に差が生じることから、その差を解消する目的で創設されました。

国民年金基金制度が創設されたのは1991年5月で、これにより自営業者も2階建ての年金設計が可能になっています。

国民年金基金は、「全国国民年金基金」と3つの「職能型国民年金基金」によって運営されており、2019年の4月に全国47都道府県の「地域型国民年金基金」と22の「職能型国民年金基金」が合併して設立されています。

加入資格者

国民年金基金に加入できる人は、

・日本国内に居住する20歳以上60歳未満の自営業者とその家族
・自由業、学生

などの国民年金第1号被保険者、および

・60歳以上65歳未満の人
・海外に居住しており、国民年金に任意加入している人

です。

会社員などの国民年金第2号被保険者、および第2号被保険者の被扶養配偶者(第3号被保険者)が加入することはできません。

掛け金および給付の種類

国民年金基金の月額掛け金の上限は6万8,000円です。また、私的年金制度の1つであるiDeCo(個人型確定拠出年金)にも合わせて加入する場合は、iDeCoの掛け金との合計額が6万8,000円となります。

国民年金基金の給付については、老齢年金と遺族一時金が用意されています。老齢年金は口数制となっており、何口加入するかによって受け取れる年金額が異なります。

なお、1口目は終身年金、2口目からは終身年金もしくは確定年金から選択することができます。遺族一時金については加入状況に応じて金額が決まります。

国民年金との関係

国民年金基金は、国民年金の保険料を納付していることが前提となっています。そのため、国民年金の保険料を滞納した場合は、その滞納期間に対する国民年金基金の年金給付は受け取れない事になっています。

また、国民年金基金への加入は任意です。ただし、加入後は途中で任意に脱退することはできません。そして、60歳になった場合や会社員になった場合などには、国民年金基金の加入資格を喪失することになります。

加入するメリット

月額の掛け金である6万8,000円の範囲で、自由にプランを設定できる点がメリットです。加入した後も、その人のライフステージに合わせて月々の掛け金を変更することもできます。そのため、無理のない範囲で老後の資金を形成していくことができます。

また、民間の個人年金保険に加入した場合、2012年1月1日以降に加入した場合は最大4万円の生命保険料控除の適用を受けることができますが、国民年金基金の掛け金は全額が社会保険料控除の対象となるため、個人年金保険と比べ、所得税や住民税の節税効果が大きい点が特徴となっています。

付加年金 

付加年金とは、国民年金の第1号被保険者および任意加入被保険者のための制度です。月額400円の掛け金を国民年金保険料に上乗せして納付することで、将来年金を受け取る際に「200円×付加年金保険料納付月数」が加算されます。

支払った掛け金は2年以上年金を受け取ることで元が取れる計算になりますので、少しでも年金受給額を増やしたいと思っているならば、ぜひ取り入れたい制度です。

付加年金を利用する際の注意点

付加年金には物価スライド制は適用されません。そのため、物価が上昇している局面では注意が必要です。また。国民年金基金に加入している場合は、国民年金基金の中に付加年金相当額が含まれているため、付加年金に別途加入することはできない点にも気をつけておきましょう。

小規模企業共済 

小規模企業共済とは、小規模企業の経営者や役員および個人事業主が、廃業や退職時の資金調達を目的として積み立てていく制度です。もっぱら退職金として活用できる制度で、掛け金は小規模企業共済掛金等控除の対象となり、全額を所得控除することができます。

加入するメリット

小規模企業共済に加入するメリットは以下の3つです。

1.掛け金は加入後も変更可能

小規模企業共済の掛け金は、月々1,000円~7万円までの範囲で、500円単位で自由に設定することができます。加入後もそのときの状況に合わせて変更することができ、掛け金全額を所得控除にあてることができる事からも節税効果につながる点がメリットです。

2.共済の受け取りは分割でも可能

退職金としての活用方法が多いといわれる小規模企業共済ですが、退職時だけではなく廃業時にも共済金を受け取ることができます。満期や満額といった概念はないことから、長期的に掛け金を支払う方が節税効果は大きくなります。

共済金の受け取り方は「一括」「分割」「一括と分割の併用」の3つから選ぶことができます。一括で受け取る場合は退職所得として扱われ、退職所得控除の適用を受けることができるほか、分割で受け取る場合は公的年金として扱われることから、公的年金控除の適用を受けることができます。

3.低金利の貸付制度が利用できる

小規模企業共済では、それまでに支払った掛け金の範囲内で事業資金などを目的とした貸付制度が利用できます。現在用意されている貸付制度は以下の通りです。

・一般貸付
主に事業資金を迅速に借り入れ可能

・傷病災害時貸し付け
病気がけがによる入院や災害などによる被害を受けた際の経営安定化を図る目的で利用可能

・創業転業時、新規事業展開時等貸し付け
新規開業や転業、事業を拡大する際などに必要な資金を借り入れ可能

・廃業準備貸し付け
廃業時に必要な資金を低金利で借り入れ可能

・緊急経営安定貸し付け
経済状況の変化などによって資金繰りが困難になった際に、経営の安定化を図る目的で利用可能

・福祉対応貸し付け
共済の契約者もしくは同居する親族のために必要な住宅リフォーム資金や福祉器具購入資金としての借り入れが可能

・事業承継貸し付け
事業承継に必要な資金を借り入れ可能

いずれも低金利で借り入れることができるため、自営業者や個人事業主の人にはぜひ活用してもらいたい制度といえるでしょう。

自営業者や個人事業主は公的年金制度の活用を視野に入れておこう 

超高齢化社会といわれている今、老後資金については誰もが不安に感じているところですが、自営業者や個人事業主などは国民年金保険にしか加入していないケースも多く、会社員と異なり手厚い保障制度もありません。そのため、老後資金はもちろんのこと、病気になった場合の収入や経営の安定を常に考えておく必要があります。

本記事で紹介した公的年金制度を活用し、追加の年金そして退職金の構築を図るとともに、税制面のメリットを最大限利用することも考えましょう。

特に小規模企業共済では、老後資金だけではなく、経営上の不安を解消するための貸付制度も用意されています。老後資金の確保そして、現役世代の福利厚生の一環として取り入れてもよいでしょう。

これらの公的年金制度の内容をしっかりと理解し、うまく組み合わせながら、事業の安定そして老後の不安を解消していくことがポイントです。

(提供:Incomepress



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