外国債券は、個人投資家が投資する代表的な金融商品の1つだ。しかし、比較的ポピュラーな投資対象であるにも関わらず、外国債券のことを深く理解している個人投資家はそれほど多くないように感じる。この記事では、外国債券とは何か、外国債券の主な種類や発行形態、魅力やリスク、投資方法などを解説していく。
外国債券とは
外国債券とは、発行市場、発行体、通貨のうち、いずれか1つが外国となっている債券である。そのため、「国内で発行される外貨建債券」や「海外で発行される円建債券」も外国債券の一種と言える。
そもそも債券は発行体に融資することで、投資家が利子を受け取るもので、債券ごとに利率や支払い日が定められている。外国債券は一般的に日本の債券より高金利である点が特徴だ。
外国債券の主な種類と特徴
外国債券には様々な種類がある。運用目的を達成するためにも、種類を幅広く知ることが重要だ。ここからは外国債券の種類を1つずつ取り上げながら、その特徴を解説していく。
外国債券の主な種類1:外貨建債券(がいかだてさいけん)
払込み、利払い、償還を外貨で完了させるのが外貨建債券だ。為替変動を受けやすく、円ベースで見たときの受取金額が上下動しやすい。
・各国国内債券
米国なら米国国内、イギリスならイギリス国内の市場で、その国の通貨建てで発行する債券だ。多くの個人投資家が「外国債券」と聞いて真っ先にイメージするものだろう。日本人投資家から見れば外貨で購入するため、為替変動を受ける。
1ドル100円で100万円購入し、償還時に1ドル110円まで円安が進んでいたとすると、10万円の利益となる。一方、償還時に1ドル90円と円高になっていた場合は10万円の損失だ。
・ショウグン債
企業や政府など海外の発行体が日本の投資家を対象に、日本市場で発行する債券がショウグン債だ。払込み、利払い、償還が外貨建となっているため、為替変動を受ける。通常の外貨建債券に近いが、発行場所が日本という点で異なる。
外国債券の主な種類2:円貨建債券(えんかだてさいけん)
円貨建債券は払込みや利払い・償還金の受取りを日本円で行う債券だ。為替リスクを避けたい投資家向けの投資対象だと言える。
・サムライ債
外国の政府や法人が日本市場において、円建で発行する債券がサムライ債だ。外国の政府や法人が円資金の調達のため発行する。
・ユーロ円債
日本や外国の発行体が日本以外の市場(ユーロ市場)で発行する円貨建ての債券だ。利払いや償還も円で行われるため、為替リスクはないが、発行市場の情勢に影響される。投資する際は各国の状況を把握する必要がある点に注意しておきたい。なお、一般的に自国以外の市場を「ユーロ市場」と呼び、欧州通貨のユーロを指しているわけではない。
外国債券の主な種類3:二重通貨建債券(にじゅうつうかだてさいけん)
二重通貨建債券は払込みや利払い・償還金の受取りを2つの通貨で行う。両建てにすることで、為替リスクを軽減できる。円貨建債券で為替リスクを回避する方法もあるが、為替差益を少しでも得たいと考えている場合は検討しておきたい債券だ。
・デュアルカレンシー債
払込みと利払いを日本円、償還金の受取りを外貨で行うのがデュアルカレンシー債だ。利払いは為替変動を受けないが、償還金は為替変動を受ける。
・リバースデュアルカレンシー債
払込みと償還金の受取りを日本円、利払いを外貨で行うのがリバースデュアルカレンシー債である。利払い部分だけが為替変動を受ける点が特徴だ。
外国債券の主な発行形態
ここからは外国債券の発行形態を確認していこう。債券の種類とともに確認しておきたい重要事項だ。発行形態ごとにクーポン(利子)の支払い方法が異なるなどの特徴がある。ここでは3つの発行形態を解説していく。
外国債券の主な発行形態1:利付債(りつきさい)
利付債は定期的に利払いされる債券だ。支払われる回数は債券によって異なる。利付債の中には一定額の利子を定期的に支払う固定利付債と利率が変動する変動利付債がある。
外国債券の主な発行形態2:ゼロクーポン債
ゼロクーポン債は額面より低い価格で発行されるクーポンの支払いがない債券だ。満期日に額面金額が償還され、販売金額との差が利益となる。購入時に割引があるため割引債と呼ばれることもある。
外国債券の主な発行形態3:ストリップス債
ストリップス債は元本とクーポン部分を切り離し、それぞれを割引債として販売している債券だ。元本部分は償還期日が満期、クーポン部分はクーポンの支払い期日が満期となる。
外国債券投資の魅力とメリット
外国債券は一般的に日本の債券より高金利である点が魅力だ。その点を中心にしつつ、外国債券の魅力を複合的に解説していきたい。
外国債券のメリット1:一般的に日本の債券より高金利を享受できる
日本の債券は低金利が続いているが、外国債券は日本と比較して高金利である点がメリットだ。2022年6月時点で、米国国債10年物利回りは2%台後半、ドイツ国債10年物利回りは1.0%前後、イギリス国債10年物利回りは2%前後で推移している。
一方、日本国債10年物利回りは2022年6月時点で0.2%を超える程度だ。2015年以降のチャートを見ても、1%以下で推移していることがわかる。時期によって変動はあるが、外国債券のほうが一般的に高金利だ。
▽外国債券と日本国債の金利の違い
債権名 | 種別 | 年利回り |
---|---|---|
米国国債10年 | 外国債券 | 2.940% |
ドイツ国債10年 | 外国債券 | 1.265% |
イギリス10年国債 | 外国債券 | 2.154% |
日本国債10年 | 国内債券 | 0.240% |
新興国の債券も高金利であることが多い。ただ、新興国の場合は、高金利でもリスクが大きい点に注意が必要だ(リスクの種類については後述)。
このように、一般的に日本以上の高金利を享受できるのが外国債券である。日本の低金利が続いている以上は日本の債券より高金利を享受できる可能性が高い。
外国債券のメリット2:為替差益を得る可能性がある
為替差益が得られる可能性がある点が2つめのメリットだ。外国債券購入後に円安に動いた場合、為替差益が得られる。2021年7月時点でドル円レートは110円だったが、2022年4月には一時130円台となった。1ドル110円で110万円分(1万ドル)を購入していた場合、2022年4月には約130万円になった計算だ。
このように、円安による為替差益が得られる可能性がある一方、為替の予測は難しい。また、円高で為替差損が生じるリスクや為替差益が得られるのは外貨建部分のみである点に注意が必要だ。
外国債券のメリット3:分散投資先の1つにすることで運用リスクを下げることができる
分散投資の投資先の1つにすることで、リスクを下げられるのが外国債券への投資における3つめのメリットだ。日本の株式と債券にのみ投資している場合、日本国内の事情による影響を大きく受ける。また、株式だけを保有した場合、資産が大きく目減りするリスクを伴う。
一方、外国債券を分散投資の1つとして保有している場合、他の投資先の値動きとは異なる動きになるため、運用リスクを低減できる。
外国債券投資のリスク
外国債券は魅力もあるが、リスクもある。金利だけを見ていると、想定外のリスクに巻き込まれる可能性があるので、リスク面は把握しておかなければならない。ここからは外国債券投資のリスクを5つの項目に分けて解説していく。
外国債券投資のリスク1:価格変動リスク
外国債券には、価格変動リスクがある。償還日まで保有すれば、(その通貨ベースでの)額面通りの金額を受け取れるが、償還日前に売却する場合、その時点での市場価格で売却しなければならない。その場合、元本以下の価値になってしまうケースがある。
このような価格変動リスクと金利、他の投資先との分散効果などを総合的に判断して、外国債券に投資することが大切だ。
外国債券投資のリスク2:信用リスク
外国債券への投資における2つめのリスクが、信用リスクだ。発行体の利払い遅延やデフォルトなどのリスクが信用リスクとなる。国家の財政破綻などで、利息や償還金が支払われない場合、投資家は大きな損失を被ってしまう。
信用リスクを判断する上で、参考になるものとして格付けがある。「AAA(トリプルエー)」から「D」までランクがあり、Dはデフォルトだと判断した場合に格付けされるランクだ。
「AAA」「AA」「A」「BBB」は投資適格債券とされていて、比較的リスクが低い。一方、「BB」「B」「CCC」「CC」「C」は投機的水準と呼ばれ、リスクが高くなる。格付けは変化するので、ランクが高いからと言って、この先ずっと安全というわけではない。ただ、信用リスクを判断する上で、押さえておきたいのがこの格付けだ。
▽債券の格付け
外国債券投資のリスク3:カントリーリスク
通貨を発行する国の経済的変動や政治体制の転覆などのカントリーリスクが、外国債券への投資に関する3つめのリスクだ。取引規制などで、途中売却ができなくなるケースなどが挙げられる。
国家情勢が不安定だと、債券価格の大幅な変動や償還金の支払いに影響が出る可能性がある。特に、新興国は政治体制や経済的不安を抱えている国が多く、カントリーリスクに注意したい。
地政学リスクを抱える国や政治・経済情勢が不安定な国の外国債券に投資する際は、国家情勢を見極めてから、投資する必要がある。
外国債券投資のリスク4:為替変動リスク
為替変動リスクがある点が、外国債券への投資にかかる4つめのリスクとして挙げられる。外国債券の購入後、円高に動いた場合は為替差損が生じる。円安に動けば為替差益が生じるわけだが、円高に動けば損失が生じる可能性があることには注意したい。
為替変動リスクに対処するには円貨建債券を購入する方法がある。また、二重通貨建債券は為替リスクを完全に避けることはできないが、外貨建債券に比べて為替リスクが低くなる。
為替動向を読む能力が高い投資家の場合は円高局面で積極的に投資する方法もあり得るだろう。外貨建債券を購入する際は、為替リスクに注意して購入していきたい。
外国債券投資のリスク5:流動性リスク
債券を償還日までに売却する場合、市場に買い手がいなければならない。流動性がないと買い手がおらず、売却価格に影響する。これが流動性リスクだ。
債券の発行量や債券の人気度によって、流動性は異なる。新興国債券や格付けが低い債券は大きな流動性リスクを抱えているケースがあるので注意したい。
外国債券に投資する方法
外国債券の魅力やリスクを理解した上で、ここからは具体的にどうやって投資していくかを解説していく。主な投資方法としては個別銘柄、投資信託、ETFがあり、それぞれ特徴が異なる。選び方のポイントとともに、債券に投資する方法を確認していこう。
外国債券に投資する方法1:個別銘柄
個別銘柄は各証券会社で購入できる。個別銘柄に投資した場合の魅力は、高金利を享受できる可能性がある点だ。投資信託やETFに投資した場合、リスク分散効果とともに、リターンも分散してしまう可能性がある。その点、個別銘柄であれば投資家が自由に投資先を選べるので、金利が高い銘柄に集中して投資することも可能だ。
選び方のポイントとしては、限られた資金のなかでも、できるだけ分散投資を行うことだ。たとえば、1,000万円の余裕資金を1つの銘柄に集中投資してしまうと、その銘柄に何かあったときのリスクが大きくなる。そのため、「1銘柄の投資金額を200万円に抑えて、5銘柄に投資する」といった分散投資を実践するとよいだろう。
銘柄によっては、最低投資金額が大きいこともあるので、分散できるほどの余裕がない場合は、個別銘柄は諦めて、投資信託やETFを活用することも検討したい。
外国債券に投資する方法2:投資信託
投資信託は、少額から手軽に様々な外国債券へ分散投資できる投資方法である。銀行や証券会社などから投資でき、ネットからでも売買可能だ。
外国債券の投資信託に投資する意義としては、分散効果が挙げられる。個別銘柄のみを保有した場合はリスクが大きくなるが、投資信託の場合は分散効果によって、リスクが限定的になる。
たとえば、外国債券ファンドとして有名な「エマージング・ソブリン・オープン(毎月決算型)」は、サウジアラビアやカタール・アラブ首長国連邦など数十の新興国に投資する投資信託だ。数十ヵ国に投資するため、1ヵ国の情勢が不安定になっても、トータルの損失は限定的になる。
▽エマージング・ソブリン・オープン(毎月決算型)」の投資先(2022年2月28日現在)
選び方のポイントとしては、どんな債券にどれくらい投資しているのか、基準価額の推移はどうなっているのか、誰がどのように運用しているのか、純資産総額の推移はどうなっているのか、購入手数料や信託報酬のコストはどれくらいか、などが挙げられる。
「個別銘柄で高金利を獲得するのか、投資信託でリスクを限定的にするのか」を吟味して、投資対象を選んでいきたい。
外国債券に投資する方法3:ETF
債券ETFも投資信託と同様に、複数の債券に分散できる(分散効果が得られる)のが特徴だ。
ETFは投資信託の一種だが、投資信託と異なるのは、上場しているため証券会社からしか購入できない点だ。投資信託は銀行などでも購入できるが、ETFは銀行では購入できない。売買方法は株式投資とほぼ同様で、指値注文や成行注文ができる。また、ETFは指数に連動するように運用されるため、一般的に投資信託より手数料が安い。
選び方のポイントとしては、どの指数への連動を目指しているのか、どんな債券にどれくらい投資しているのか、基準価額の推移はどうなっているのか、純資産総額の推移はどうなっているのか、購入手数料や信託報酬のコストはどれくらいか、などが挙げられる。
まとめ:外国債券と一言で言っても様々な投資方法がある
この記事では外国債券の魅力やリスク、投資する方法などについて解説してきた。
将来の資産形成を考える上で、外国債券も重要な投資先になる可能性がある。魅力やメリット、リスクを押さえておくことが重要だ。
外国債券に投資すると一言で言っても、様々な投資方法があることがおわかりいただけたのではないだろうか。内容をよく吟味して、投資先を検討してもらいたい。
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