「ゴールベース・アプローチ についてどう思われますか?」

最近、筆者が主宰する「ファンドガレージ」に上記のようなお問合せが寄せられるようになった。また、大手金融機関に勤務する知人からも「ゴールベース・アプローチについて教えて欲しい」といったメールを頂戴することもある。確かに、近年は日本の資産運用業界でも「ゴールベース・アプローチ」という言葉をよく耳にするようになった。

ゴールベース・アプローチ,とは
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ゴールベース・アプローチとは、お客様が達成したいと考える「ゴール」に合わせて提案する金融サービスとされている。米国の資産運用業界では主流的な考え方とも言われ、日本においても今後広く浸透するのではないか、との観測もある。お客様が目指す「人生のゴール」を達成するのをお手伝いするサービス、換言すれば「お客様の人生に伴走するような」金融サービスといったところだろう。

さて、資産運用業界でもてはやされている感のあるゴールベース・アプローチであるが、率直に言って「何の新鮮味も感じられない」というのが筆者の感想である。英バークレイズのウェルス・マネージメント部門でそのリサーチと商品関連にまたがるISSヘッドとして、富裕層ビジネスの最前線に立った筆者からすれば「当たり前」の考え方だからだ。そもそもプライベートバンクという存在自体が歴史的にそうした役割を担ってきた。

ちなみに、本稿を執筆するにあたってネットで「ゴールベース・アプローチ」という単語を検索したところ、極めて興味深い事実が浮かんできた。すなわち、同じ「ゴールベース・アプローチ」という言葉でも、考え方や取り組み方、あるいはそれに基づいた商品の性格に差異が見受けられたことだ。またしても、この業界特有の「曖昧な定義」による言葉遊びが広がっている印象は否めない。