ハイイールド債は債券の一種ではあるが、ハイリスク・ハイリターンの金融商品である。一般的に「債券はリスクが低い」と言われるが、ハイイールド債の取り扱いには注意が必要だ。この記事では、ハイイールド債の概要と特徴、投資方法、おすすめの投資先などを紹介していく。
目次
ハイイールド債とは?
ハイイールド債とは信用格付けが低く、利回りの高い債券のことである。ジャンク債とも言われ、信用格付けがBB(ダブルビー)以下の評価を受けている債券だ。信用格付けの低い債券は高い利回りを設定しないと人気が出ない。そのため、高い利回りを設定して資金を集めている。
債券の中では、ハイリスク・ハイリターンの投資対象で「ジャンクボンド」「ハイ・イールド・ボンド」「高利回り債」とも呼ばれる。
▽日本証券業協会によるハイイールド債の説明
ハイ・イールド債(High Yield Bond)とは、一般的に高利回りの債券を指します。
引用:JSDA 日本証券業協会 | 金融商品に関する広告について(PDF)
なお、ハイ・イールド債は格付の低い債券で、BB格相当以下の格付(投機的格付)が付与されている場合が多く、信用リスクが相対的に高いという面があります。
ハイイールド債の格付けの確認方法
ハイイールド債の格付けは目論見書や募集要項で確認できる。ハイイールド債の格付けを詳細に分類すると「BB」「B」「CCC」「CC」「C」「D」となっており、ハイイールド債はこのいずれかに当てはまる。一方、「AAA」「AA」「A」「BBB」の債券を投資適格債と呼ぶ。適格といっても「100%倒産しない」という意味ではない。「比較的信用力が高い」ということだ。
▽DWSユーロ・ハイ・イールド債券ファンドの交付目論見書に記載のハイイールド債の格付け例
ハイイールド債に投資する際は、ハイイールド債と一括りにせず、投資商品の格付けランクを確認しておくことが重要だ。「BB」と「C」ではリスクが大きく異なる。ちなみに「D」はすでにデフォルト(債務不履行)に陥っており、元利の回収は不可能な状態を指す。
ハイイールド債の特徴
ハイイールド債の概要を掴んだところで、ここからは具体的な特徴について解説していく。投資適格債との違いやリスク面など確認すべき点は多い。債券という文言だけを見て、投資判断してはいけないのがハイイールド債だ。
ハイイールド債の特徴1:利回りが高い(ことが多い)
ハイイールド債は利回りが高いことが多い。2021年11月末時点における米国社債の格付け別利回りは「BB」が3.9%、Bが5.3%、CCC以下が8.3%となっている(イーストスプリングUS投資適格債ファンドの目論見書より)。
▽米国社債の格付け別利回り(2021年11月時点)
一方、上記の格付け利回りを「BBB」以上の投資適格債券で見てみると、「BBB」が2.6%、「A」が2.1%、「AA」「AAA」が2.0%だ。
すべてのハイイールド債の利回りが投資適格債券の利回りを上回るわけではない。しかし、一般的にハイイールド債の利回りが高くなる点は押さえておきたいポイントだ。
ハイイールド債の特徴2:デフォルト率が相対的に高いので、債券でありながらハイリスク商品
ハイイールド債はデフォルト率が相対的に高く、ハイリスクの商品だ。2021年11月末時点での米国社債格付け別デフォルト率は「BB」が0.4%、「B」が1.6%、「CCC」以下が8.5%となっている(イーストスプリングUS投資適格債ファンドの目論見書より。上記掲載の図参照)。
一方、上記のデフォルト率を「BBB」以上の投資適格債券で見てみると、「BBB」が0.2%、「A」が0.1%、「AA」以上は0%だ。
ハイイールド債は高利回りだが、デフォルトのリスクが相対的に大きくなる点に注意したい。
ハイイールド債の特徴3:債券単価は景気拡大局面で上昇し、後退局面では下落する傾向
ハイイールド債の債券単価は投資適格社債と逆の動きをする傾向がある。一般的に債券は低リスク資産と考えられているため、景気後退局面で資金の逃避先として買われ、債券価格は上昇しやすい(利回りは低下する)。
一方、ハイイールド債の債券単価は景気後退局面で下落する傾向にある。リーマンショックがあった2008年は景気後退局面として代表的だが、その年の米国ハイイールド債の年次騰落率は-26.21%であった。しかし、2009年は景気が回復に転じたことから、年次騰落率は56.28%のプラスとなっている。
▽リーマンショック時の米国ハイイールド債の年次/月次騰落率
2020年2月〜3月のコロナショックによる景気後退局面でもハイイールド債は下落に転じた。ただ、2020年4月以降の景気拡大局面では堅調に推移している。
このような傾向からわかるように、ハイイールド債は景気拡大局面で上昇、景気後退局面で下落する傾向がある。
ハイイールド債の特徴4:海外で発行されるものがほとんどで為替リスクあり
ハイイールド債は海外で発行されるものがほとんどである。SBI証券で扱われている主要なハイイールド債も、米国ハイイールドや欧州ハイイールド、アジア各国のハイイールドなど日本国外のファンドが主流だ。
▽SBI証券取り扱いのおもなハイイールド債券投信(2022年6月12日現在)
海外の債券に投資するので、為替リスクに気を配らないといけない。購入した後で円高方向に進めば、為替差損が生じる。
ハイイールド債に投資する主な方法
ハイイールド債の概要を理解したところで、実際に投資する方法を見ていきたい。個別銘柄、投資信託、ETFそれぞれ投資方法が異なる点に注意が必要だ。ここでは、投資する際のメリットや注意点を踏まえつつ、具体的な投資方法を確認していく。
ハイイールド債に投資する方法1:個別銘柄
1つめに挙げられるのが個別銘柄に投資する方法だ。証券会社で社債を買い付け、投資する方法が一般的で、格付けや各銘柄の現状を確認して投資する必要がある。購入金額が高くなることも多く、銘柄にもよるが最低投資金額が数百万円、数千万円になるものもある。
そのため、分散投資しにくくなるので、投資先への依存度が大きくなる。一方で、利回りの高い個別銘柄への投資に成功した場合は高利回りを享受できる。
ハイイールド債に投資する方法2:投資信託
投資信託もハイイールド債に投資する方法の1つで、証券会社や銀行などで購入できる。組み入れられる銘柄は投資信託によって異なるので、投資する前に調べておきたい。
組み入れ銘柄は各投資信託の目論見書で確認できる。例えば、代表的な投資信託であるフィデリティ・USハイ・イールド・ファンドに関しては、「個別企業分析によって、銘柄を選定する」と目論見書に記載されており、組み入れ上位10銘柄や格付け別組み入れ状況も公開されている。
▽フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの組み入れ銘柄
投資信託は個別銘柄より投資先が分散される特徴がある。事前にどんな組み入れ先があるのかチェックしてから投資したい。
ハイイールド債に投資する方法3:ETF
ETFは投資信託とは違い、銀行からの投資はできず、証券会社からのみ投資できる。例としては「iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債ETF(HYG)」が挙げられる。株式銘柄と同様の取引が可能で、マーケットが開いているときであれば、パソコンやスマホアプリから指値注文や成行注文などで売買できる。
ハイイールド債の個別銘柄に投資するチェックポイント
ここからはハイイールド債の個別銘柄に投資する際のポイントをお伝えしていく。投資信託やETFに投資する際のポイントとは異なる点に注意しておきたい。
ハイイールド債投資のチェックポイント1:デフォルトしなければ満額が返ってくる
ハイイールド債のデフォルト率は比較的高いが、デフォルトしなければ、償還日までに満額が返済される。したがって、投資する際はデフォルトリスクを事前に判断しなければならない。
▽デフォルトリスクとは
投資した債券について元本の払い戻しや利子の支払いが滞ったりする可能性のこと。
引用:JSDA 日本証券業協会 | デフォルトリスク(でふぉるとりすく)
信用格付けが低いことから、投資家側の銘柄を見極める目もより重要になる。個別銘柄はデフォルトするかしないかを見極める視点が求められる投資対象だ。
ハイイールド債投資のチェックポイント2:最低購入金額が高くなりやすい
最低購入金額が高くなりやすい点も注意しなければならない。銘柄にもよるが最低投資金額が数百万円、数千万円になるものもあり、個人としてはそれなりの金額だ。
ハイイールド債投資のチェックポイント3:分散投資しにくい
購入代金が高くなると分散投資しにくくなる。若干極端な例になるが、投資資金2,000万円で、最低購入金額2,000万円のハイイールド債に投資した場合、分散投資はできなくなる。
ハイイールド債の個別銘柄に投資する際は、資産の分散をどうするかを事前に検討しておきたい。あまりにも分散が難しい場合は、個別銘柄は諦めて、投資信託やETFを活用することもひとつの選択肢だろう。
ハイイールド債投資のチェックポイント4:流動性が低い
購入金額が大きく、格付けが低い債券であるため、流動性が低くなりやすい。市場環境が悪い場合は、デフォルトリスクの高いハイイールド債をわざわざ新規に買い付ける投資家が少なくなるため、流動性がさらに低くなる可能性がある。
ハイイールド債投資のチェックポイント5:買いたいタイミングで銘柄がないときがある
債券は株式ほど日々活発に売買されるようなものではないので、買いたいタイミングで(購入できる銘柄がなく)購入できない可能性がある。基本的に買いたいタイミングで買える株式やETFなどの取引とは異なる。
ハイイールド債の投資信託やETFに投資した際のポイント
ハイイールド債の個別銘柄への投資について特徴や注意点を理解したところで、ここからは、ハイイールド債の投資信託やETFに投資する際のポイントを解説していく。個別銘柄に投資する際のポイントとは異なる部分があるので注意したい。
ハイイールド債の投資信託やETF投資のポイント1:分散投資しやすい
ETFや投資信託は分散投資しやすい。1つのETFや投資信託を購入するだけでも、多くの銘柄が組み入れられているため、分散投資になる。
また、最低購入金額が低く、フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドなどの主要な投資信託は100円から購入できる場合が多い。少額で投資できるため、分散投資は個別銘柄よりもしやすい。
ハイイールド債の投資信託やETF投資のポイント2:個別銘柄のような満期償還はない
投資信託やETFが保有するハイイールド債は、償還したとしても償還金を別の債券に再投資することが一般的だ。そのため、満期償還を気にせずに長期間投資できる。なお、投資信託自体の運用期間が定められていることがあるので、その点は注意が必要だ。
また、満期がないため個別銘柄より途中解約しやすいことも特徴だ。個別債券への投資を終了する際は売却コストが高くなるケースがあるが、債券ファンドは相対的に流動性を確保しやすいため、解約のハードルは個別銘柄より低い。
ハイイールド債の投資信託やETF投資のポイント3:コストが高い
ハイイールド債の投資信託やETFは比較的コストが高い。ハイイールド債の投資信託であるフィデリティ・USハイ・イールド・ファンドコストは購入時手数料が上限3.30%、信託報酬が年1.738%となっている。個別銘柄の場合は、実質的に購入手数料はかかるものの(表面上はない)、保有期間中のランニングコストはかからない。
ハイイールド債の投資信託やETF投資のポイント4:流動性が高い
投資信託やETFの流動性は個別銘柄より高い。最低取引金額が低く抑えられ、いつでも売買できるのがその理由だ。流動性が低い個別銘柄を中途換金した場合は、信用リスクを加味した安値での売却となる可能性があるが、投資信託やETFではその可能性が抑えられる。
ハイイールド債の投資信託やETF投資のポイント5:基本的に買いたいタイミングでいつでも買える
投資信託やETFは証券会社などから売買すればよいので、基本的にいつでも買える。投資信託は銀行や証券会社などから、ETFは証券会社からネットで比較的簡単に売買できる。売買のタイミングを自由に決めたい場合は個別銘柄を避けるのが無難だ。
おすすめ・注目のハイイールド債投資信託とハイイールド債ETF
ここからはハイイールド債投資信託やETFの具体的なラインナップについて見ていきたい。様々な商品があるが、ここでは2つ例を挙げる。代表的な商品の特徴を見ながら、ハイイールド債投資信託やETFの特徴を理解していこう。
注目のハイイールド債投資信託:フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドはハイイールド債に投資する代表的な投資信託だ。北米を投資対象としており、個別の企業分析によって銘柄選択している。
購入時手数料は3.30%を上限として、販売会社が定めることになっており、信託報酬は純資産総額に対して、年1.738%となっている。
年間収益率も見ておこう。2021年の年間収益率は20.4%となっている。過去5年まで遡ると、2020年は-2.4%、2019年が13.0%、2018年が-6.2%、2017年が4.5%だ。また、2012年は27.8%と年間収益率が高い。
▽フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの年間収益率
注目のハイイールド債ETF:iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債 ETF(HYG)
iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債ETFは、米ドル建ての高利回り社債で構成される指数と同等水準の投資成果を目指している。トータルリターンは2021年が4.12%、2020年が4.12%、2019年が14.23%、2018年が-1.93%、2017年が6.09%だ。
ファンドが保有している銘柄数は1,277となっており、数多くの銘柄に分散されている。信託報酬は0.48%だ。このETFを活用すれば、少額から比較的低コストで米国のハイイールド社債に幅広く投資できるというわけだ。
▽iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債 ETF(HYG)の年間収益率
まとめ:ハイイールド債は比較的利回りが高いが、そのぶんリスクも高い
この記事では、ハイイールド債がどのようなものなのか、具体的にどんな投資対象があるのかなどについて解説してきた。
ハイイールド債は比較的利回りが高いが、デフォルト率や格付けを詳細にチェックしてから投資しないと、思わぬ損失を被ってしまう可能性がある。投資するメリットとデメリットを十分吟味した上で、投資するかどうかを検討してみてはいかがだろうか。
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