「値上げ許容」発言の日銀・黒田総裁、日銀職員の年収はいくら?
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日銀の黒田東彦総裁が、2022年6月に「家計の値上げ許容度も高まってきている」と発言し、批判が相次いだ。黒田総裁はデータ分析の結果として発言したようだが、語感から、「日銀は消費者が値上げを容認すると見ている」と捉えられた。うかつな発言の背景には、一般消費者との金銭感覚のズレがあるのかもしれない。

「許容度」はデータ分析上の用語と釈明

黒田総裁の発言は2022年6月6日、東京都内で行った講演会で飛び出した。その後、8日の衆院財務金融委員会で「発言は全く適切な表現でなかった」として撤回するに至った。

発言の撤回に関して、読売新聞オンラインの記事によると、国会答弁で黒田総裁は「許容度」という言葉が誤解を招いたとして陳謝した。「家計が値上げをやむを得ず受け入れていることは十分に認識している」と述べた上で、「別に(消費者が値上げを)歓迎するという意味ではなく、消費行動の分析として(許容度という)言葉を日銀内で使っていた」と説明した。

つまり、あくまで日銀内でのデータ分析の際、家計に多少なりとも余裕がある状況を「許容度がある・高まっている」と表現しており、その意味で使用したということらしい。確かにさまざまな業界に、一般的な使われ方と意味合いの異なる専門用語がある。ただ、それをそのまま世の中に向けて発信すれば、誤解を生みかねないというのは当然の話だ。

ここでは、長引くコロナ禍で経済や家計の先行きに懸念が根強くある中、日本の金融政策をつかさどる日銀の総裁という影響力の大きな立場で、「値上げ許容度」という言葉を安易に用いた背景に目を向けたい。その1つの要因には、日銀の役職員の高給ぶりが挙げられそうだ。

日銀総裁の年収は3,529万円

日銀の役職員の給与は日本銀行法に基づいて決められており、毎月の棒給や資格給、年2回の職務手当や賞与から構成されている。

日銀が2021年6月30日に公表した資料『日本銀行の役職員の報酬、給与等について』によると、総裁は2020年度の役員棒給が2,412万円、役員手当が年間1,117万6,000円で、総額は3,529万6,000円だった。1ヵ月あたりに換算すると約294万円となる。

この金額は民間企業の給与水準を参考にしながら、特別職国家公務員の最高給与を上回らないように決められている。ちなみに、「特別職」とは内閣総理大臣や国務大臣、裁判官、自衛官などが該当する。このうち、内閣総理大臣の年収は4,000万円ほど、国務大臣の年収は3,000万円ほどとされているので、3,529万円という年収は「民間企業の水準を参考にして総理大臣を超えない程度」の金額と言えるだろう。