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不動産投資では、しばしばローン(金融機関からの融資・借金)を活用します。手持ち資金以上の資産価値がある物件を運用する場合が多く、間違った使い方をしてしまうと自身の生活費を大きく圧迫しかねません。逆にローンを上手に活用することで、少額の資金で効率よく資産形成を実現することができます。この記事では、不動産投資におけるローン・融資・借金の考え方を解説します。
目次
1.借金の分類
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まずは堅実な資産形成を目指す上での悪い借金と、良い借金の特徴を整理します。
1-1.悪い借金
資産を減らしていくだけの借金は避けるべき借金です。趣味や友人との食事など、目先の消費を目的とした消費者金融やリボルビング払いによるカードローンの利用は、悪い借金の典型例といえます。不動産投資でいうと、収益物件を取得したものの、想定通りの収入や節税効果を得られず、自身の許容金額以上に月々の支払いをしなければならない状態に陥る借金が該当します。
1-2.良い借金
無理なく返済でき、中長期的な資産拡大につながる借金は、望ましい借金といえます。このような借金は、少額の手持ち資金で資産価値の高い投資対象を運用するレバレッジ(てこ)効果を加え、効率よく資産を増やすことが可能になります。
2.悪い借金はキャッシュフローが悪化する
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2-1.短期・高金利で借入を行う
短期でローンを利用した場合、長期ローンと比較して1年あたりの返済額が大きくなるため、年間のキャッシュフローの悪化要因になります。同じく高金利の借入れも年間の利払いが増えることを意味し、キャッシュフローの悪化要因となります。年間の支払い金額が高くなる場合はその出費に見合った収入が得られるのか、厳しく精査する必要があります。
2-2.リスクや出費の見積もり不足
リスクや出費の見積もり不足も悪い借金におちいりやすい要因です。例えば不動産投資におけるリスクの一つに空室リスクがありますが、なかなか入居者が見つからずに空室期間が長引くと、家賃収入がない状態でローンの返済を続けなければなりません。予想以上にキャッシュフローが悪化する結果となりうるので、注意が必要です。
3.富裕層が借金をして不動産投資をする理由とメリット
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望ましい借金で着実に資産を拡大していく富裕層は多いです。彼らは自己資金に余裕がある場合でも、税金対策や金融機関との信用醸成のため、積極的に借入を活用して不動産投資をします。
3-1.税金対策
不動産は償却資産といって、税制上、時間の経過とともに価値が目減りしていく資産と見なされます。築年数が経過するにつれて低下する資産価値は減価償却費として経費計上することができます。
キャッシュが流出することがない減価償却費を活用した税金対策は、所得が高い富裕層に広く浸透しているスキームです。
また、富裕層はいつかやってくる相続への対策を講じる必要があります。現金よりも不動産の形で相続したほうが相続財産の評価額が低くなるため、資産の一部を不動産にしておくことは相続税対策につながります。
国税庁の土地や家屋の評価については下記をご覧ください。
3-2.金融機関との信用醸成
富裕層の多くは資産管理や事業の資金調達など、さまざまな場面で金融機関と深い取引関係を有しています。
金融機関としてはより信用力のある顧客に融資したいと考えている一方で、顧客である富裕層は金融機関からお金を借りてそれを完済することで信用を醸成できます。本当に資金が必要になったときに備えて普段から信用を得ておくことは見えない財産になるため、多少の利息を支払ってでもお金を借りることに価値があると考えます。
4.良い借金で不動産投資を行うためのポイント
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つづいて、中長期的な資産拡大につながる借金とするためのポイントを紹介します。
4-1.低金利かつ長期のローンを組む
ローンの年間返済金額や金利の支払いを抑制することは、安定した不動産経営につながります。
毎年着実にキャッシュを増やすことで、大規模修繕費などの急な出費にも対応でき、資金的に余裕ができれば繰上返済で返済期間を短縮する選択肢も出てきます。
現在の低金利の市場環境下では、金利よりも返済期間の短縮の方がキャッシュフローの改善に与える影響が大きく、特に重視すべきといえるでしょう。
不動産会社によっては提携先の金融機関で融資のアレンジを行い、有利な条件を引き出してくれる場合もあります。付き合いのある金融機関がない場合は不動産会社を介した融資相談も選択肢として検討しましょう。
4-2.出費やリスクを正確に把握する
借入金の返済や金利以外にも、不動産投資では運営中に多くの出費が発生します。
不動産投資にかかる主な費用
- 建物管理費
- 修繕積立金
- 保険料
- 税金(固定資産税、都市計画税、所得税、住民税)など
状況に応じて専門家への追加依頼費用なども発生するので、余裕を持った資金計画を練ることが求められます。
また不動産投資におけるリスクも事前に想定しておく必要があります。ほとんどのリスクは事前に想定さえしておけば問題なく対策できるものばかりなので、しっかりと対策して想定費用に含めておきましょう。
不動産経営の主なリスク
- 空室リスク
- 家賃下落リスク
- 家賃滞納リスク
- 災害リスク
- 大規模修繕リスクなど
5.不動産におけるローンの種類
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金融機関からの借入を活用する際には、ローンの性質をある程度把握した上で金融機関とコミュニケーションを取るようにしましょう。
個人が不動産取得でローンを組む場合、主に不動産投資ローンと住宅ローンに大別でき、不動産投資ローンはさらにアパートローンとプロパーローンに分かれます。
アパートローン | プロパーローン | 住宅ローン | |
---|---|---|---|
借入金の用途 | 不動産経営を目的とした居住用不動産の取得 | 融資の際に銀行から指定される | 自宅の購入や増改築 |
審査基準 | 個人の属性、物件の収益性や資産性を中心に総合的に判断 | 案件ごとに独自判断 | 年収など、個人の属性が重視される |
保証 | 保証会社の用意が必要 | 保証会社の用意は不要 ※連帯保証人を求められる場合が多い | 保証会社を用意しない場合、融資手数料がかかることが多い |
金利 | 高 | 中 ※物件の収益性が認められた場合 | 低 |
5-1.アパートローン
アパートローンとは投資用不動産を取得する際に活用できるローンの一種です。審査基準や融資の条件が金融機関ごとにある程度パッケージ化されている点が特徴としてあげられます。保証会社の用意を求められるため、保証会社利用料が発生します。
5-2.プロパーローン
プロパーローンも不動産投資ローンの一種です。アパートローンとは異なり保証会社の用意が必要とされず、金融機関自体がリスクをとり貸付をします。ある程度パッケージ化されているアパートローンとは異なるオーダーメイド型のローンといえます。物件の資産性や収益性次第ではアパートローンよりも低い金利で融資を受けられる可能性が高い一方、審査基準は厳しい傾向にあります。
関連記事:不動産投資ローンの審査基準!融資を受けるポイントや流れ、注意点を解説
5-3.住宅ローン
住宅ローンとは、居住用住宅の購入などの資金を借りるために活用するローンです。
代表的な商品として、独立行政法人である住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携し、固定金利で最長35年の長期ローンを提供する「フラット35」があります。
長期かつ低金利で借入を行うことができますが、投資用の物件では利用できません。もし投資用物件に利用してしまうと、残債務の一括返済請求など大きなペナルティがあります。投資用物件の取得でフラット35活用を提案する悪質な不動産会社もあり、そのような会社とは決して契約を結ばないようにしましょう。
6.借金で堅実な資産形成を実現するためにはパートナー選びが最重要
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借金を望ましい形で活用するためには、正確なシミュレーションやローンの知識が不可欠です。
不動産会社は物件選びのみならず、シミュレーション設計、銀行融資のアレンジ、物件管理など幅広くサポートしてくれますが、知見の浅い業者に任せてしまうと大きな損失につながってしまう恐れがあります。
不動産投資のパートナー選びは投資の成否をわける重要なポイントです。確かな実績と知見がある会社に依頼するようにしましょう。
(提供:Dear Reicious Online)
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