2022年5月、仮想通貨(暗号資産)に「大事件」が起きました。それまで時価総額ランキングでも10位以内に入るほどの地位を誇っていた仮想通貨のLUNAが大暴落し、その下落幅はなんと99.99%。それまで価値のあった資産が「ほぼ無価値になる」というものでした。
LUNAの大暴落につられる形で仮想通貨全体の信用が損なわれ、仮想通貨の代表格であるビットコインまで大きく値を下げる事態となりました。
仮想通貨投資をしている人にとってはもちろん、そうでない人に対してもこの「大事件」は多くの示唆をもたらしています。この「大事件」で何が起きたのか、そしてこれによって得られる3つの教訓について解説します。
LUNAが99.99%下落!そのとき何が起きたのか
2022年5月、仮想通貨のLUNAが大暴落をしました。下落幅は99.99%以上なので、これは事実上資産としての価値を失ったと考えてよいでしょう。この下落が始まったのは、2022年5月5日です。まずはLUNAの値動きをご覧ください。
どこから下落が始まったのかは一目瞭然で、そこから一気に暴落しているのが見て取れます。高いときには118ドル台をつけていたLUNAが、2022年6月12日には0.00007ドル台にまで下落しています。チャートを見ても、数値を見ても、LUNAの下落がいかに凄まじいものであるかがわかります。しかも、一度暴落したLUNAの価格は回復することなく、ほぼ無価値状態のままです。
このLUNAの「大事件」を理解するには、関連するもう1つの仮想通貨であるUSTについても知っておく必要があります。こちらが同時期のUSTの日足チャートです。
このUSTについては、それまで横ばいで推移していたところから突然暴落しているのがわかります。暴落が始まるまで横ばいだったのは、このUSTがステーブルコインと呼ばれる特殊な仮想通貨だからです。
ステーブルコインとは、米ドルや日本円などの法定通貨と価値が同一になるように運用されている仮想通貨のことで、USTは米ドルと連動するステーブルコインです。そのため、1UST=1ドルの価値を維持してきたのですが、USTの価値を裏づけるために流通しているLUNAが暴落したことでドルペッグ(ドルとの連動)が崩れ、こちらもほぼ無価値になってしまいました。
「大事件」の主役、LUNAとUSTってどんな仮想通貨?
この「大事件」の当事者となったLUNAとUSTは、どんな仮想通貨なのでしょうか。USTが米ドルと連動するステーブルコインであることは、すでに解説しました。そしてLUNAは、このUSTの価値を担保して流通させるために発行されている仮想通貨です。このプロジェクトは韓国企業によって運営されているため、LUNAとUSTの両者は韓国由来であることにちなんで「キムチコイン」とも呼ばれています。
ところで、USTのようなステーブルコインはほかにもあります。米ドルペッグのステーブルコインとして最も有名なのはUSDT(テザー)で、2022年6月時点での時価総額はビットコイン、イーサリアムに次ぐ第3位です。USDTと名前が似ているため混同しがちですが、USDTとUSTは別物の米ドルペッグ型ステーブルコインです。
USTは1UST=1ドルになるように運営されているステーブルコインで、LUNAはその価値を維持するために運営されているプロジェクトの基軸通貨です。平たくいえば、LUNAの仮想通貨としての価値によってUSTの米ドルペッグが維持されているということです。
ついに揺らいだ、ステーブルコインの信頼性
ステーブルコインには、いくつかの種類があります。代表的なステーブルコインであるUSDTは法定通貨担保型で、USDTの発行量と同じ額の米ドルを確保し、いつでも米ドルを交換できるようにしておくことでUSDTの価値を担保しています。
「大事件」の当事者となったUSTは、LUNAとのアービトラージによって価値が維持されるアルゴリズム型のステーブルコインです。ここで見慣れない言葉が出てきたので、補足して解説しましょう。
連動する対象の資産と比べて価格が下落したら価格が元に戻ることを期待した投資家による買いが入りやすくなります。逆に価格が高くなったら投資家による売りが入りやすくなります。こうした取引のことをアービトラージ(裁定取引)といいます。
投資家はUSTのドルペッグが崩れそうになったらLUNAを通じてアービトラージを行い、運営側はLUNAの供給量を自動調節することによってUSTの価値を維持します。
しかし、2022年の5月にこのUSTが大きく売られたことでドルペッグが崩れます。この急激な動きに動揺が走り、USTの裏付けとなっていたLUNAも大きく売られ、両者ともに暴落したのが事の経緯です。
時価総額が小さく知名度も低い「草コイン」と呼ばれるような仮想通貨の暴落であればニュースにもなりませんが、時価総額で上位10以内にあったステーブルコインのドルペッグが崩れ、そのプロジェクトで用いられているLUNAまで暴落したことは、大きな衝撃をもって受け止められました。
2022年6月時点で、USTとLUNAは暴落したままになっており、価値を取り戻す気配はありません。
この「大事件」から学べる3つのこと
仮想通貨に対して懐疑的な見方をする人は依然として多く、そんな人たちはUSTとLUNAの暴落劇を見て「やっぱり」と感じたかもしれません。この「大事件」は仮想通貨投資を検討している人にとって、多くの示唆をもたらしています。ここから学べることを、3つに整理して解説します。
ステーブルコインは万能ではない
ステーブルコインは元々、価格が乱高下しやすいままだと仮想通貨を決済通貨として利用しにくいという理由から、価格の安定を目指して生み出されたものです。これなら仮想通貨の決済機能を法定通貨並みにできるとして多くのステーブルコインが開発されましたが、ステーブルコインといっても裏付けとなる資産や仕組みが脆弱で、ひとたび大きく売られると収拾がつかなくなってしまうことが前例として証明されました。
USDTのように米ドルの現物が裏付けになっているものは資産価値の維持が期待できますが、それ以外の仮想通貨担保型やアルゴリズム型のステーブルコインは、対象資産との連動性を維持できるのか疑問符がつくこととなってしまいました。ステーブルコインは万能ではなく、どの銘柄も同じではないということです。
仮想通貨は一瞬で無価値になることがある
基本的に仮想通貨には、その仮想通貨を基軸通貨とするサービスがあります。イーサリアムであればスマートコントラクトと呼ばれる自動契約機能を活用したDeFi(分散型金融)やNFT(非代替性トークン)などが代表的で、これらのサービスが普及するにつれてイーサリアムの実需も膨らんでいきます。
このように実需が期待できる仮想通貨と違い、具体的な用途が定まらず実績が少ないような仮想通貨の価格が高騰したとしても、それはバブル的な高騰に過ぎない可能性があります。バブルは必ず崩壊するので、今後USTやLUNAのように無価値になってしまう仮想通貨があっても不思議ではありません。
まだまだ脆弱な仮想通貨市場
仮想通貨の価格が乱高下しやすいのは、市場がまだまだ脆弱であることの証左です。主要な法定通貨はここまでの乱高下をすることはなく、安定感では依然として大きな差があります。
しかし仮想通貨は今後も発展していくことが確実で、淘汰が進むことによって本当に投資価値のある仮想通貨が生き残っていくことでしょう。今後はますます通貨ごとの用途や利用価値、それに基づく実需の動向などをしっかりと見極めることが求められます。
(提供:Incomepress )
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