2022年前半はウクライナ情勢の影響や、インフレを懸念する動きが強くなり金価格が史上最高値を記録しました。金は投資家の間でも安全資産という認識が強いことから、金融市場において不安が高まった結果ともいえるでしょう。

しかし、これからも金価格が高騰していくとは限らず、反対に下落する可能性もあるため価格の高騰を受けて金投資を検討している方は注意が必要です。

本記事では、金価格が高騰した背景と金価格が上昇する3つの理由について解説し、金価格が下落する要因と過去に金価格が下落した事例も紹介します。

2022年4月金価格が最高値を更新

2022年に金価格が最高値を記録した背景と価格上昇の3つの理由
(画像=jesada/stock.adobe.com)

2022年4月20日、金価格は1グラムあたり8,969円となり最高値を更新しました。2021年は年間を通して平均価格6,000円台で堅調な上昇を続けてきましたが、2022年3月に平均価格が7,000円を超え、4月に最高値を記録することとなりました。1月の最低価格が6,680円であったことから、約3ヵ月で2,289円の値上がりを記録したことになります。

金価格が高騰している背景

金価格の上昇の背景には、ウクライナ情勢の深刻化により安全資産の需要が増えたこと、インフレの進行により投資対象として金を求める投資家が増えたことがあります。また、金はドル建て取引が中心となっているため、円安が金の円建て価格を上昇させたともいわれています。

新型コロナウイルスの影響により経済復興の見通しがつかず長期的な上昇を続けてきた金ですが、2022年中の出来事により、投資家からの不安が高まったことが高騰の要因といえるでしょう。

金価格が上昇する理由とは

一般的に金価格が上昇する理由は主に3つあります。

・金需要が高まっている
・インフレによってお金の価値が減少する
・地政学リスクが高まる

それぞれ詳しく解説します。

金需要が高まっている

金には埋蔵量という概念があり、地球上で無限に採掘できるわけではないため希少価値があります。その上で幅広い需要があることから、安全資産として投資需要も生まれました。

世界の金需要の内訳は、2020年において宝飾品が約37.5%、産業などのテクノロジーに利用されたケースが約8.1%、地金・金貨・メダル・ETFなどの投資需要が合計で約47.5%、中央銀行などのその他の金融機関からの需要が約6.8%となっています。

金価格の上昇は今回の高騰の背景でもある投資需要の増加だけでなく、宝飾品の売上が大きく増加した場合や、最新のテクノロジーに金が応用された場合などにも期待されます。

インフレによってお金の価値が減少する

インフレによって物価が継続的に上昇する状況では、紙幣の価値が減少するため実物資産の需要が高まります。そのため、現金を希少性があり需要もある実物資産に換えて保有すれば、インフレが発生しても保有している資産の価値を守ることができます。

金はインフレ対策における代表的な実物資産として認知されているため、インフレが懸念される状況では、多くの投資家が現金を金に換えることから金価格が上昇しやすくなります。

地政学リスクが高まる

戦争の発生や疫病の流行などにより経済不安が生まれると、戦争や疫病の発生地域の通貨を中心に値下がりしやすくなります。このような問題によって、経済の先行きが見えないことを地政学リスクと呼び、世界的に地政学リスクが高まると投資家は、株などのリスクの高い資産を売却し、安全資産を購入するようになります。

投資対象としての金は、有事の金とも呼ばれており、地政学リスクが高まった状態において買われやすい資産です。

今後金価格が下落する要因

2022年4月まで金価格は上昇してきましたが、これから金価格が下落、場合によっては暴落する可能性はあるのでしょうか。今後、金価格が下落する可能性がある要因として、下記の3つが挙げられます。

・世界情勢の安定化
・インフレの終了やデフレの懸念
・金自体の需要低下や供給量の増加

それぞれ詳しく見ていきましょう。

世界情勢の安定化

世界情勢が安定すると、経済の先行きが見通せない状況ではなくなるため、地政学リスクが低下します。株、仮想通貨(暗号資産)などの他の投資対象が注目されるようになり、高い利益が得られることが期待されると、金を売却して、リスクの高い資産を購入する動きが活発化します。

世界情勢の安定化は、他の投資対象のメリットが大きくなるので、金価格を下落させる可能性があるといえるでしょう。

インフレの終了やデフレの懸念

インフレの心配がなくなった場合や、反対に物価が持続的に下落するデフレが警戒されるようになると、金価格が下落する可能性があります。ただし、デフレが必ずしも金価格の下落を意味するわけではありません。実際に過去の相場おいて、デフレの状況でも金価格が下落しなかったこともあります。

しかし、インフレを懸念して高騰したのであれば、現在の状況が崩れることで価値が見直され、下落につながることは考えられるでしょう。

金自体の需要低下や供給量の増加

今回の高騰には大きく関係しませんが、金自体の需要が低下する理由や希少価値が減少する理由があれば金投資におけるマイナス材料となります。

例えば、宝飾品の売上が大きく低下し、金需要が減少した場合や、金が利用されているテクノロジーにおいて金の代替となる金属が提案され、金が必要とされない状況になることが挙げられます。

過去に金価格が下落した事例と最低値の更新

日本において金価格が大幅に下落したのは、1980年代~2000年代までのことです。1983年、OPECは原油価格を大幅に値下げしました。原油価格は金価格と連動することが多いため、金価格もこの影響を受けて下落を続けます。

1998年、日本の金価格は865円まで下がっており、この価格が史上最低値になります。背景としては日本が高度経済成長期にあり、日経平均株価が大きく上昇し、株への投資需要が高まったことで金への投資需要が下がったことが挙げられます。仮に1998年の最低値で金を購入し、2022年4月を迎えたとすれば資産価値は約10倍になっています。

日本の高度経済成長期が終わるバブル崩壊は1991年ですが、バブル崩壊後も2000年代まで金価格は下落傾向にあったため、仮に最低値に近い価格で購入していたとしても長期的に保有するのは忍耐が必要であったことでしょう。

金を保有するなら長期的な資産形成を前提に

金への投資方法は、延べ棒やインゴットなどの地金の購入、投資用金貨である地金型金貨の保有、金を投資対象にしたETFに投資するなどさまざまな方法があります。

今回の金価格の上昇は、地政学リスクやインフレによる投資不安によって引き起こされたため、金価格が高騰しているからといって短期的に保有すると損をしてしまうかもしれません。

過去の事例では20年近く金価格が下落傾向にあったこともあるので、金の保有を検討するなら最悪の事態も想定して、長期的に保有することを前提に購入することが重要です。また、インフレ対策となる実物資産は必ずしも金に限らないため、不動産など他の実物資産に目を向けるのもいいでしょう。

(提供:Incomepress



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