世界的なインフレや金融引き締めの影響から、これまで住宅価格が高騰を続けていた国で、不動産バブル崩壊のリスクが高まっている。すでにニュージーランドやカナダでは、不動産価格が急速に下落しており、不動産市場は重大な試練に直面している。
超低金利策、パンデミックで過熱した住宅市場にブレーキ
ブルームバーグ・エコノミクスがBIS(国際決済銀行)やOECD(経済協力開発機構)などの2022年第1四半期または最新の四半期データを分析したところ、OECD加盟19ヵ国において、家賃と住宅の価格を合わせた比率が2008年の金融危機前を上回っていることが明らかになった。これはすなわち、価格がファンダメンタルズ(国や企業などの経済状態などを表す指標)と乖離していることを示す。
過去10年間にわたる超低金利策に支えられ、多数の国や地域の住宅市場は高騰し続け、そこへパンデミックが拍車をかけた。
ロックダウン中は急速に冷え込んだ不動産市場は、経済の正常化と共にせきを切ったかのごとく過熱した。より快適な空間を求める消費者の間で住み替える人が増加したのは、住宅ローンの金利底打ちや緊急経済刺激策に加え、リモートワークが一気に普及したことが理由だ。将来に不安を感じ、賃貸から住宅購入への移行を検討する消費者も増加し、世界的に住宅価格が高騰した。
市場の狂騒に歯止めをかけたのは、インフレ高騰とそれに伴う急速な金融引き締めだ。借入れコストが上昇し、住宅購入を圧迫し始めた。
野村ホールディングスのグローバル市場調査責任者、ロブ・サブバラマン氏は、「金融緩和政策にあおられて高騰し続けていた住宅市場が、間もなく反転する可能性がある」と指摘している。一方、ブルームバーグ・エコノミクスのニラジ・シャー氏は、「金融政策の世界的な引き締めが進行している状況では、価格が急激に下落するリスクは明らかに高まる」との見解を示した。
住宅バブル崩壊のリスクが最も高い10ヵ国
以下、住宅バブル崩壊リスクが最も高い10ヵ国を見てみよう。
ランキングはブルームバーグ・エコノミクスが5つの指標(価格対家賃比率、価格対所得比率、実質上昇率、名目価格の伸び率、融資の伸び率)に基づき、OECD加盟30ヵ国の住宅バブル崩壊リスク度(価格の変動度)を測定したものだ。
ニュージーランド、カナダでは住宅価格が下落
上位国では、急速に住宅価格が下落し、住宅市場が脆弱になっている。
2021年の住宅価格上昇率が約30%を記録したニュージーランドでは、2022年に入り急速に市場が冷え込んでいる。4月、5月と連続で利上げが実施され、2023年には4%へ引き上げられる見通しだ。査定価格を大きく下回る価格で住宅を取引きせざるを得ない売り手が続出しているという。
コロナ禍の2年間で住宅価格が50%上昇したカナダにおいても、同様の傾向が見られる。カナダの大都市では2月から価格の下落率は9%だった。カナダ全体でも4月には2年ぶりの下落を記録し、5月はさらに下回った。
同国の政策金利は2022年初旬の0.25%から、現在は1.5%まで上昇している。一部のエコノミストの予想によると、「さらなる引き締めが実施された場合、住宅価格は最大20%落ち込む」という。