「日本株に投資したい」「少ない資金で大きな取引をしたい」と考えているなら、日経平均株価先物取引という選択肢がある。日経平均株価先物取引は、日経平均株価を投資対象とする先物取引だ。その特徴やメリット・デメリット、取引の概要をあらかじめしっかり確認し、資産運用の1つとして検討しよう。

目次

  1. 日経平均株価の先物とは? 基本事項を確認
  2. 「先物取引」の特徴-現物株の取引とどう違うのか
  3. 日経平均株価先物取引のメリット
  4. 日経平均株価先物の注意点
  5. 日経平均株価先物はいくらから始められる? 取引の概要を確認
  6. 日経平均株価先物取引をスタートする手順
  7. まとめ:日経平均先物はハイリスクハイリターン。注意点を確認し少額から挑戦しよう

日経平均株価の先物とは? 基本事項を確認

日経平均株価の先物取引とは?メリットや注意点、始め方など基本事項を解説
(画像=chachamal/stock.adobe.com)

「少ない資金で効率よく、いろいろな日本企業に投資したい」と考えているなら、日経平均株価の先物取引も選択肢の1つだ。ただし、日経平均株価の先物取引は一般的な現物株取引とは仕組みが大きく異なるため、その特徴をよく知る必要がある。ここではまず、株価指数取引と日経平均株価について確認しよう。

株価指数の1つ「日経平均株価」を投資対象とする取引

日経平均株価先物取引は、日経平均株価を投資対象とする株価指数先物取引だ。株価指数の1つである日経平均株価への投資の特徴は、「分散投資効果が期待できること」と「値動きがわかりやすいこと」だろう。

日経平均株価は、一定の基準で選定された東証プライム上場の225社の値動きをもとに指数として算出される。そのため日経平均株価に投資するだけで、複数の企業に投資したのと同様の分散投資効果が期待できるのだ。

また、日経平均株価はニュースなどで報じられることも多く値動きを確認しやすい。先物取引はその仕組み上、投資家は値動きを常に把握しておく必要がある。値動きをつかみやすい日経平均株価は、日ごろ投資にかける時間を確保しづらい人でも、比較的チャレンジしやすい投資対象の1つだといえるだろう。

日経平均株価とは?

日経平均株価は、東京証券取引所のプライム市場上場の約2,000企業のうち、225銘柄の株価を使い算出される株価指数だ。日経225とも呼ばれ、日本を代表する株式指数として多くの場面で利用されている。

組み入れ銘柄の選定では、流動性とセクターのバランスが重視される。市場での安定した取引が見込まれる幅広い業種の企業で構成されている点が、日経平均株価の大きな特徴といえるだろう。

【参考】日経平均プロフィル | 構成銘柄一覧:日経平均株価

「先物取引」の特徴-現物株の取引とどう違うのか

日経平均株価の先物取引をするなら、「先物取引の仕組み」をよく理解しておくことも重要になる。ここでは、先物取引の特徴を5つのポイントで解説する。一般的な現物株取引との違いをしっかりと確認しよう。

先物取引の特徴1:「売り」と「買い」のどちらからでも、取引をスタートできる

先物取引の大きな特徴の1つが、「売り」と「買い」のどちらからでも取引をスタートできる点だ。一方の現物株取引は取引時に株式と代金の受け渡しを行うため、「買い」からしかスタートできない。

先物取引は、将来のあらかじめ決められた期日に、あらかじめ決められた価格で売買することを契約する取引だ。いま手元にない株でも、将来のあらかじめ決めた期日に決めた価格で買う、または、売る契約をすることができる。変動する将来の価格を見越して取引ができるので、値下がり時でも利益を出すことができる。

▽先物取引のおける「買い」(買建)と「売り」(売建)の仕組み

先物取引の特徴2:差金決済が行われる

差金決済(さきんけっさい)が行われるのも、先物取引と現物株取引との大きな違いだ。差金決済とは、取引時に商品や現金の受け渡しを行わず、反対売買によって算出された差額で決済を済ませることをいう。

たとえば、1,000円で買いの先物取引を行ったとする。

期日に価格が1,200円に上昇した場合、利益の200円の受け渡しにより決済は完結する。損失が出た場合も損失額の支払いだけですむため、投資資金が少ない人でも比較的大きな取引ができる決済方法だといえるだろう。この差金決済は、現物株の取引では法律で禁じられており行うことができない。

先物取引の特徴3:限月(げんげつ)が設けられている

限月(げんげつ)が設けられているのも、先物取引の特徴である。限月とは、契約の期限が満了する月のことだ。先物取引では3、6、9、12月が限月で、満期日にはSQ(Special Quotation:特別清算指数)により清算される。

なお、先物取引では満期日まで必ず契約を継続しなければならないわけではない。買いの場合は転売、売りの場合は買戻しをすることにより、満期日前に先物契約を解消することも可能である。

▽限月((げんげつ)とは

先物・オプション取引は取引できる期限毎に商品が分かれており、取引できる期限の月を「限月」といいます。

引用:JPX日本取引所グループ | 限月(げんげつ)

先物取引の特徴4:レバレッジをかけた取引ができる

レバレッジ取引ができるのも、先物取引の大きな特徴の1つだ。レバレッジ取引とは、証拠金を預け入れることで、その数倍の売買ができる投資方法である。

たとえば、200万円の取引を希望する場合、レバレッジ20倍なら10万円(200万円÷20倍)の証拠金で投資をスタートできる。現物株の取引ではできない取引だ。てこの原理のように少ない元手から大きな取引を実現できるのが、レバレッジ取引ができる先物取引の魅力の1つといえるだろう。

先物取引の特徴5:取引時間が長い

現物株取引と比較し取引時間が長いのも、先物取引の特徴だ。

現物株の取引時間は、市場が開いている9時~15時(11時30分~12時30分を除く)だ。一方先物取引は、8時45分~15時15分の日中立会に加え、16時30分~翌朝6時の夜間立会もある。仕事などで日中の株取引を諦めていた人でも、先物取引を活用することで投資の選択肢を増やせるだろう。

▽現物株式と日経平均先物(指数先物)の取引時間の違い

利益への税率は20%。損益通算には注意

先物取引で得た利益には、20%(2037年までは復興特別所得税がかかるため20.315%)の税金がかかる。ここで気をつけたいのは、先物取引は特定口座での取引ができない点だ。

特定口座とは、株式や投資信託の投資で得た利益が源泉徴収されるため原則として確定申告の必要がなく、納税の手間を軽減できる口座である。先物取引は特定口座対象外のため、確定申告による納税が必要な点は知っておこう。

また先物取引は、現物株や投資信託とは損益通算ができないのも注意するべきポイントだ。損益通算とは、一定期間内の利益と損失を相殺することで納税額を抑えられる制度である。

先物取引と損益通算できるのは、国内オプション取引およびFX(取引所取引、店頭デリバティブ取引)などと決まっている。複数の資産へ投資を行っている場合には、どの組み合わせで損益通算ができるのかをあらかじめ把握しておく必要があるだろう。

日経平均株価先物取引のメリット

日経平均株価先物取引にはどのようなメリットがあるのか。ここでは、3つの魅力を解説する。

日経平均株価先物取引のメリット1:日本の代表的な企業に分散投資できる

先述の通り、日経平均株価へ投資することで複数の個別銘柄に投資を行ったのと同様の分散投資効果を得られるのが、日経平均株価先物取引のメリットの1つだ。日本を代表する複数の企業に投資したいと考えているなら、日経平均株価先物取引は有力な選択肢となるだろう

日経平均株価先物取引のメリット2:利益を狙えるチャンスが増える

利益を狙えるチャンスが多いのも、日経平均株価先物取引のメリットだ。「買い」と「売り」の両方から投資をスタートできる先物取引では、現物株取引よりも多くの相場状況で利益を狙えるチャンスがある。

「買い」スタートのみの現物株取引の場合、価格の上昇が想定される局面でしか投資をスタートできない。一方「売り」からの投資もできる先物取引では、今後価格が下がるであろう局面でも投資が可能だ。

たとえば、ある期日に1,000円で売るという取引をしたとしよう。この場合、期日に価格が900円に値下がりしていても1,000円で売ることができるため、差額の100円を利益として得られる。

より多くのチャンスを持って積極的に資産運用をしたいなら、日経平均株価先物取引も検討するべき投資方法の1つとなる。

日経平均株価先物取引のメリット3:手持ちの資金以上の投資ができる

レバレッジ取引により手持ちの資金以上の投資ができるのも、日経平均株価先物取引のメリットだ。投資は、元手が大きいほど大きな利益が期待できる。たとえば、1万円の投資が10%値上がりしても、1,000円の利益しか得られない。しかし、同じ10%の利益だとしても投資額が100万円だった場合には、得られる利益は10万円に増える。

このようにある程度大きな利益を狙うには、まとまった額で投資を行う必要がある。しかし、投資に回せる余剰資金を一定以上確保することが難しい場合も少なくない。そのような時は、レバレッジ取引を活用した投資にチャレンジしてみるのも1つの選択肢だ。

もちろん、レバレッジ取引はそれだけハイリスクであり、投資資金を大きく減らす可能性もある。次から説明する注意点、リスクもよく確認し、理解をする必要がある。

日経平均株価先物の注意点

日経平均株価先物取引は、ハイリスクハイリターンな投資方法である。想定外の大きな損失を出さないためには、いくつかの注意点を知っておく必要がある。

日経平均株価先物の注意点1:損失額が証拠金以上の額になる可能性がある

注意点の1つめはレバレッジ取引を行うことで、損失額が証拠金以上の額になる可能性がある点だ。現物株取引の場合、仮に10万円で投資した企業が破綻し株式の価値がゼロになったとしても、損失額が投資した10万円以上になることはない。

しかしレバレッジ取引では、損失額が証拠金額で収まらないケースもある。たとえば、10万円の証拠金でレバレッジ10倍の100万円の取引をしていたとしよう。価格の変動により資産が70万円まで値下がりしたら、損失額は証拠金よりも多額の30万円となってしまう。

このように先物投資では、大きな利益を狙える一方で損失が証拠金以上の額に達する可能性がある点には十分注意したい。

日経平均株価先物の注意点2:損失が大きくなった場合、追加の証拠金の差し入れが必要

損失が大きくなった場合、追加の証拠金の差し入れが必要になるケースがあることも、日経平均株価先物取引の注意点だ。損失の発生によって資産が最低証拠金所要額を割り込んだ場合、追加の証拠金の差し入れを求められる。

差し入れには一定の期限があるため、速やかに入金手続きを進めることが肝心だ。そのためにも、先物取引を行う際には、いくらかの現金を手元に残しておくことが重要になる。

日経平均株価先物の注意点3:追加の証拠金が差し入れられない場合、強制決済される可能性も

追加証拠金の差し入れを求められているにもかかわらず期日までに入金されなかった場合、現在保有している取引が強制決済される点は十分注意したい。強制決済では、現在の運用状況に関わらず保有している先物契約が清算されることで、含み損が損失として確定してしまうのだ。

先物投資を成功させるには値動きや運用状況を定期的に確認し、証拠金の管理をしっかりと行っていくことがもっとも重要なポイントとなるだろう。

日経平均株価先物はいくらから始められる? 取引の概要を確認

日経平均株価先物取引は、商品によって最低取引額が異なる。ここでは、日経平均株価先物取引に投資できる2つの商品の概要を解説する。

日経平均株価先物には「日経225先物」と「日経225mini」がある

日経平均株価先物取引には、「日経225先物」と「日経225mini」の2つの商品がある。一般的な先物取引である「日経225先物」に対し、個人投資家でも取引がしやすいよう少額からの投資に対応しているのが「日経225mini」だ。

日経225先物と日経225miniの取引概要を比較

日経225先物と日経225miniでは、取引にどのような違いがあるのか。それぞれの概要を以下で確認しよう。

▽日経225先物と日経225miniの取引概要の違い

日経225先物日経225mini
取引単位日経平均株価の1,000倍日経平均株価の100倍
値動きの刻み10円5円
1枚当たりの取引金額例(日経平均株価が20,000円の場合)2,000万円200万円
レバレッジ約15倍約15倍
1枚当たりの証拠金額(一例)126万円12万6,000円
※ 証拠金額は7月4日時点のもの

日経225先物の最低取引単位は、価格の1,000倍だ。そのため、仮に日経225先物の価格が2万円とすると、2,000万円が最低取引単位となる。しかし投資のスタートにそれだけの金額が必要かというと、そうではない。実際には約15倍のレバレッジ取引ができるため、取引に必要な証拠金額は約126万円(2,000万円÷15.8倍)となる。

日経225miniの最低取引単位は100倍である。日経225miniの価格が2万円とすると、200万円が最低取引単位だ。約15倍のレバレッジで取引を行う場合、取引に必要な証拠金額は12万6,000円となる。

このように日経225と日経225miniは、必要な証拠金額も大きく異なり、それだけリスクも異なるものだ。資金力が少ない投資家や先物への投資初心者は、日経225miniで少額から投資を始めてみるのがおすすめだ。

日経平均株価先物取引をスタートする手順

日経平均株価先物を取引するには、証券会社での口座開設が必要になる。ここでは、証券会社選びのポイントと、取引までの手順を見ていこう。

日経平均株価先物取引のスタート手順1:まずは口座開設。証券会社を選ぶ3つのポイント

ストレスの少ないスムーズな投資を行うには、証券会社選びも重要だ。まずは、証券会社を選ぶ3つのポイントを確認しよう。

・証券会社を選ぶポイント1:希望する商品の取り扱いがあるか
証券会社を選ぶにはまず、希望する商品の取り扱いがあるかを確認する必要がある。日経平均株価先物(日経225)については、おおよそどこの証券会社でも取り扱っているが、他の先物商品については、証券会社によって取扱商品ラインナップが異なる。資産運用における口座の使い勝手にも影響するので、口座開設前に必ず確認しよう。

・証券会社を選ぶポイント2:取引手数料が高くないか
先物取引の取引手数料は、証券会社によって異なる。一例として、主要ネット証券における日経225miniの取引手数料を以下で確認しよう。

▽主要ネット証券における日経225miniの取引手数料(1枚あたり/税込み)

会社名取引手数料
SBI証券38.5円
楽天証券38.5円
松井証券38.5円
マネックス証券38円
auカブコム証券41.8円
SBIネオトレード証券36.3円
※ 証拠金額は7月4日時点のもの※2022年7月8日時点、各社ホームページより編集部調べ
手数料は、投資においてコストとなる。資産運用を成功させるには、利益を上げることに加えコストを抑えることも重要だ。手数料の確認は、証券会社選びで必ず行うべきポイントの1つである。

・証券会社を選ぶポイント3:使い勝手が良いか
日経平均株価先物取引をするなら、使い勝手が良い証券会社を選ぶことも重要だ。どの証券会社の使い勝手が良いかは、投資家によって異なる。

たとえば、すでに証券総合口座を持っており使い慣れた証券会社があるなら、そこで先物口座を開設するのも1つだろう。スマホやタブレットからの取引をするなら、取引ツールとなるアプリの使いやすさも重要になる。先物取引に不安があるなら、証券会社のサポート体制も確認したい。

どの証券会社が使いやすいかは人それぞれだ。まずは自分の投資スタイルを確認し、それに合った証券会社を選べるかが重要になる。

日経平均株価先物取引のスタート手順2:先物・オプション取引口座を開設

取引する証券会社が決まったら、先物・オプション口座を開設しよう。なお、取引したい証券会社の証券総合口座が未開設の場合は、先物・オプション口座と併せて証券総合口座の開設も必要だ。

先物・オプション口座のみの開設なら、即日で手続きが完了するケースもある。一方、証券総合口座の開設が必要な場合は、数日~1週間程度かかることもある。

口座を保有しているだけでは、手数料などのコストは掛からない。今後先物取引を検討しているなら、あらかじめ口座開設手続きを済ませておくことで、スムーズに取引をスタートできるだろう。

日経平均株価先物取引のスタート手順3:ルールやリスクを確認し同意する

日経平均株価先物取引は、ハイリスクハイリターンな投資だ。先述の通り損失額が大きくなる可能性もあるため、取引のスタートにあたってはルールやリスクの確認が求められる。投資家自身で口座開設手続きや取引を進めるネット証券の場合も、必ず同意書を一読しルールやリスクを把握しよう。

日経平均株価先物取引のスタート手順4:投資資金(証拠金)を口座に入金する

先物取引をスタートするには、先物・オプション口座への投資資金(証拠金)の入金が必要だ。入金は、証券総合口座から先物・オプション口座への振替により行う。先物口座に直接振り込むことができない点は、知っておくべきポイントだ。証拠金の入金ができたら取引を開始していこう。

まとめ:日経平均先物はハイリスクハイリターン。注意点を確認し少額から挑戦しよう

日経平均株価先物取引は、ハイリスクハイリターンな投資である。日本を代表する企業への少額からの分散投資やレバレッジを効かせた大きな取引ができるといった魅力がある一方、大きな損失が発生したり、追加での証拠金の差し入れを求められたりするといった注意点もある。

日経平均株価先物取引に初めて挑戦するなら、少額からの投資が可能な日経225miniを検討しよう。メリットと注意点をしっかりと確認し、積極的な投資方法として運用資産の1つに組み入れてみてはいかがだろうか。