投資と聞くと、通常は株式や不動産を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、リスクを抑えて運用したい場合は債券投資も選択肢といえます。債券は株式や不動産とは仕組みが異なるため、投資を始める前に特徴を理解しておくことが大切です。
この記事では、債券投資のメリットとリスク、始め方について詳しく解説します。
債券投資とは
債券とは、国や企業などが資金調達のために発行する有価証券です。資金調達が目的である点は株式と同じですが、債券は発行時に利率や償還日などの条件が決められています。保有中は定期的に利子が支払われ、償還日まで保有すると額面金額が支払われる仕組みです。
株価の変動に損益が左右される株式に比べると、債券は安定した収益が期待できるでしょう。
債券は中途売却による現金化も可能です。ただし、中途売却の場合は市場価格で取引されるので、売却時の価格によっては損失が生じることもあります。
債券価格と金利の関係
一般的に債券価格と金利には以下のような関係があります。
・市場金利が上昇すると債券価格は下がる
・市場金利が低下すると債券価格は上がる
債券の利率は発行時の金利動向に応じて決定されます。債券の多くは、購入後に市場金利が上昇しても利率は変わらない固定利付債です。そのため、市場金利が上昇すると、すでに発行した債券の魅力は低下します。
例えば、市場金利が1%から3%に上昇すれば、今後発行される債券は市場金利3%を基準に利率が設定されます。その結果、過去に購入した利率1%の債券は投資対象としての魅力が低下し、価格は下がります。市場金利が低下した場合は逆の関係となるため、債券価格は上がります。
債券の格付け
格付けとは、発行体の信用度を格付会社が評価してランク付けしたものです。債券には、発行体の破綻によって元本の返還や利払いに影響が出る「信用リスク」があります。債券の格付けによって、発行体の信用度を確認することが可能です。
格付けは「AA」「B」といったアルファベットで表記され、最も信用度が高いのが「AAA(トリプルエー)」です。「BBB(トリプルビー)」以上は投資適格格付けと呼ばれ、比較的安全性が高いとされています。一方、「BB(ダブルビー)」以下は信用リスクが高まります。
ただし、格付けはあくまでも信用度の相対的な位置づけです。元本の返還や利払いを保証するものではないことを理解しておきましょう。
債券の主な種類
債券を発行体で分類すると、主に「国債」「社債」「外国債券」の3種類があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
国債
国債とは、国が発行する債券です。国が元本と利子の支払いを保証しているため、安全性が高いといえます。国債は普通国債のほかに、個人でも購入しやすい「個人向け国債」があります。
個人向け国債は「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類で、それぞれ1万円から購入可能です。変動10年は実勢金利に応じて半年ごとに利率が変わるため、金利が上昇すれば適用利率も上がります。
個人向け国債は、発行後1年経過すると中途換金が可能です。中途換金は直近2回分の利子が差し引かれますが、価格変動がないため、過去に受け取った利子を含めると元本割れはしません。
社債
社債とは、企業が発行する債券で「事業債」とも呼ばれます。利率や償還までの期間は、発行時の市場金利や発行体の信用度に応じて決定されます。発行体である企業が破綻すると債務不履行となるため、国債に比べると信用リスクは高くなります。
外国債券
外国債券とは、「発行体」「通貨」「発行場所」のいずれかが外国である債券です。外国債券にも、国が発行する「国債」と企業が発行する「社債」があります。外国債券の利率は、発行国の金利水準に左右されます。外国債券の多くは外貨建てであるため、損益が為替レートに左右されるのも特徴です。
債券投資のメリット
債券投資には、以下のようなメリットがあります。
比較的低リスクで運用可能
債券投資は、満期保有が前提なら比較的低リスクでの運用が可能です。保有中は定期的に利子が支払われ、満期まで保有すれば額面金額が返還されます。運用成績が価格変動に左右される株式や不動産に比べると、安定した利益が期待できます。
時間や手間がかからない
債券投資は、時間や手間がかからないのもメリットです。発行時に利益が決まっているので、満期まで保有する場合は債券価格の変動を気にする必要がありません。日々の値動きや金利動向を何度も確認する必要がなく、忙しい人でも取り組みやすいでしょう。
分散投資先として活用できる
一般的に債券と株式は相関関係が低く、反対の値動きをする傾向にあります。株式と債券の両方を保有すれば、株式の損失を債券の利益でカバーすることが可能です。結果として、資産全体の値動きを緩やかにする効果が期待できます。
債券投資のデメリット
債券投資のデメリットは、資産を大きく増やすのは難しいことです。
株式や不動産に比べると、債券の期待リターンは低い傾向にあります。日本では1999年に導入されたゼロ金利政策の影響で低金利が続いており、国内債券の利率は低く設定されています。外国債券の利率は比較的高めですが、期待リターンは株式より低いので、債券投資だけで資産を増やすのは難しいでしょう。
債券投資のリスク
債券投資は安定した利益が期待できますが、元本が保証されているわけではありません。投資をする前に、どんなリスクがあるかを確認しておきましょう。
元本割れリスク
債券を中途売却する場合は市場価格で現金化されます。債券価格は金利動向によって変動するため、購入時より価格が下がっていれば元本割れします。債券投資で元本割れを避けるには、なるべく満期まで保有することが大切です。
信用リスク
信用リスクとは、債券の発行体が破綻する可能性があることです。発行体の財政や経営状態が悪化すると、元本の返還や利払いが予定通り行われないことがあります。債券投資では、格付けなどで発行体の信用度を見極める必要があります。
為替変動リスク(外国債券)
外国債券の多くは外貨建てのため、換金時の為替レートによって損益が変わります。購入時より円安になると為替差益を得られますが、円高になると為替差損が生じます。外貨ベースでは利益が出ていても、円での手取り額が元本を下回る可能性があるので注意が必要です。
カントリーリスク(外国債券)
外国債券には、発行体の所在する国や地域の政治・経済情勢によって債券価格や債務の履行に影響が出るカントリーリスクもあります。外国債券に投資する場合は、発行国の政治や経済の動きも確認しておきましょう。
債券投資の始め方
債券投資を始めるには、債券を扱っている証券会社で口座開設をします。証券会社によって取り扱い銘柄が異なるので、比較検討して幅広い銘柄を扱う証券会社を選ぶといいでしょう。個人向け国債であれば、都市銀行や地方銀行などでも購入可能です。
投資信託を活用する方法もある
債券投資は個別銘柄を購入する以外に、債券を中心に運用する投資信託を活用する方法もあります。1本でさまざまな債券に分散投資ができるので、リスク軽減が期待できます。
一方で、投資信託は販売手数料や信託報酬といった運用コストがかかります。特に国内債券の投資信託は期待リターンが低いので、コストに見合うリターンを得られるかを見極める必要があるでしょう。
まとめ
リスクを抑えて安定したリターンを目指す場合、債券投資は選択肢の1つとなります。ただし、期待リターンはそれほど高くないので、債券投資だけで資産を大きく増やすのは困難です。投資で資産を増やしたい場合は、株式や不動産などを組み合わせることを検討しましょう。
(提供:Incomepress )
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