特集「不動産業界トップランナーに聞く。アフターコロナ時代の経営戦略」では、各社のトップにインタビューを実施。新型コロナウイルス感染症が収束した後の社会における不動産業界の展望や課題、この先の戦略について、各社の取り組みを紹介する。
2016年に創業し、東京、大阪、名古屋と言った主要な首都圏を中心に新築から中古まで幅広い物件を取り扱う株式会社TAPP。業界内でもいち早くオンライン集客の流れを取り入れる、顧客が安心して不動産投資に取り組めるサポート体制など先進的なサービスでシェアを伸ばすTAPPだが、急成長を支えるのは社員や顧客など「人」を重視する経営スタイルにある。
(取材・執筆・構成=山崎敦)
兵庫県生まれ。大手不動産会社に入社後、投資用不動産の営業として勤務。その後、不動産ベンチャー企業に創業メンバーとして参画し、役員として金融業務や開発仕入れに従事する。2016年に株式会社TAPP設立 代表取締役就任。
中国生まれ。
21歳で熊本のマーケティング会社に入社しあらゆる事業のマーケティング責任者として17年以上従事した後、2019年7月にTAPPに参画。
マーケティングチームの立ち上げを行い、わずか数ヶ月で同業界でトップクラスのマーケティング実績を残す。
マーケティング部課長、部長、執行役員を経て2020年に取締役就任。
コロナ禍にも負けない成長率。スピード感のある成長の基盤は、社員が担う
― TAPP様の現在の事業と、立ち上げからこれまでに成長してきた変遷を簡単にご紹介ください
TAPP代表・山地氏(以下、社名・敬称略):TAPPは2016年の創業時から、東京や大阪、名古屋といった首都圏の駅近の物件を中心に、ワンルームマンションを取り扱う投資用不動産事業を行っています。
私は、不動産販売や賃貸管理はもちろん、顧客への融資付、物件の仕入れといった各業務に関して一貫した経験があったので、当初は1人で事業を行っていました。やがて、前職で一緒に役員をやっていた仲間であり、現在は人事の責任者を担当している乾が加わって、1年目から共に働き始めました。
さらに、そこにマーケティング責任者の苗が参加しました。役員は私と乾と苗の3人ですが、それぞれの強みを活かした役割分担によって自社に「ヒトモノカネ」+「情報」という要素が整った結果、この5年間は一定の成長を遂げることできたと思っています。
TAPPが、投資用不動産業界で飛躍的に成長した理由は、MA(マーケティングオートメーション)とデータドリブン経営を取り入れた点が大きいのです。投資用不動産業界というのは、アナログといいますか、IT化やDX化がとても遅れています。そこで、マーケティングの人材採用強化から完全インハウス化・KPIKGIの可視化・AIの活用、適した営業体制の変更まで、1年で大きく組織改革を行いました。結果、圧倒的な成果を出せるようになりました。
コロナ禍による緊急事態宣言などの影響で、この2年間、投資用不動産業界のほとんどの会社で業績が低迷しているようですが、TAPPはコロナ始まってから1ヶ月というスピードでオフラインから完全にオンラインに切り替えました。当社のバリューである「すぐやる」と「やりきる」でシェアを大きく拡大することができました。
▽株式会社TAPP社内の様子
― TAPP様がビジネスを行う中でもっとも重視するポイントは何ですか
山地:「人」です。TAPPが伸びた理由は、全て「人」がきっかけなのです。社員教育はもちろん、優秀な方々を採用するためにお金や時間の投資をしています。
ビジネスは、一緒に参加してくれた人たちが作るものだと思っていますから、自社のビジョンには「自分の人生に投資する人が溢れる世界を創る」をすえています。この「自分の人生」というのは、顧客だけではなく、社員を含めて関わった人全てのことです。
自分の人生へ投資するようなチャレンジ精神旺盛なメンバーを採用して、仕事においてもプライベートにおいても最高の人生を送れるようになってほしいと思っています。そして、関わった取引先や顧客の人々にもそれが伝播していくようなことを会社としてやっていきたいと考えています。
― 業界内におけるTAPP様の強みはなんでしょうか
山地:大きくは「人」と「集客」になるかと思います。前者に関しては数値化するのが難しいですが、同業界内において採用、特に新卒採用において良い人材を採用することができていると自負しています。後者に関しては、自社調べてはありますが、業界の中でも2番手の位置にいると考えています。
TAPPの掲げるバリューに「Exciting:ワクワクする、Speed:すぐやる、Achieve:やりきる」というものがあります。その中の「Speed:すぐやる」という部分では、私を始めとした役員や部長、課長、一般社員も、決断が早いというところは強みの1つではないかと思います。
コロナ禍になってから、他社がオンライン集客に本腰を入れたのは1年〜2年後でしたが、TAPPの場合は苗が主導ですぐに始めることができました。やると決めたら、知見がないものに対してもすぐに意思決定していける強さがTAPPとしての強みです。
定量的な強みになると思いますが、もう1つ。2016年に創業して早々、大阪支社と名古屋支社を立ち上げたので、東京の会社でありながら、大阪や名古屋の物件を販売したり、顧客にリーチしたりすることができました。創業2年目の2018年の時点で、大阪や名古屋の開拓に関して先んじて手を打てたことで優良な物件を扱うことができるようになりました。東京、大阪、名古屋の新築も中古も取り扱っている企業はほとんどないと思っています。TAPPはとても幅広く物件提案ができるという強みがあります。
幅広い物件提案ができることは、提案の幅が広がるので「現場サイドは苦労するのでは」と思われがちですが、TAPPは柔軟に変化に対応するというところで営業のマインドセットをしていますので、新しいものに対してすぐ取り組んでくれるという社風も会社の強みのひとつだと考えます。
▽質問に答えてくれた山地氏
顧客と社会の課題を、DX化と投資教育で改善していく
― TAPP様は不動産売買、不動産開発、不動産管理など不動産投資に関する幅広い事業を行っていますが、近年、TAPP様の顧客が抱える問題や課題にはどのようなものがありますか
山地:TAPPは投資用不動産の開発販売を行う会社なので、顧客の方が買い手という立場になります。そんな中で顧客側が抱える問題というのは、未来に対する不安というのがほぼ100%かなと思っています。下記に、当社に寄せられるよくあるお悩みの例を上げさせていただきます。
・上場企業勤めで年収は1000万円以上あるが、出費が多く貯金は300万円ほどしかない
・毎月の出費に加え、保険料に5万円ほど捻出しているため貯蓄ができない
・将来、子どもに何かしら財産を残したいが投資のことは何も分からない
・忙しく資産運用を勉強する暇はない
・インフレ対策と社会情勢に影響されない資産ポートフォリオについて相談したい
TAPPは「利益を生み出すパートナー」として、顧客の不安を少しでも減らすようなアドバイスをさせていただいています。今後、年金だけでは生活できないことが明らかな世の中になりますから、退職金や預貯金をすり減らしていくストレスが生じるでしょう。それを不動産投資による家賃収入で現役時代の生活レベルを保ち、ゆたかな老後を過ごして頂きたいと考えています。
貯金における「老後2000万円問題」というのは、生活必要最低限の金額のことです。年収が高い人ほど、現状の生活水準のまま老後を送る仮定で計算をした場合、資産が足りなくなってしまうケースがほとんどです。2000万円を貯金できたとしても、老後の生活が豊かになるわけではないということを知らない人は多いのです。
また、年金世代だけではなく若手世代においても資産運用は重要です。TAPPとしても、業界のDX化をトップで走っていくことで、これから社会を担う若手世代にも不動産投資をより身近なものにできると考えています。
老後の不安や資産運用の悩みを解決したい、或いは不動産投資に興味がある人は是非TAPP主催の無料資産運用セミナーにご参加ください。
― 昨今の新型コロナウイルスの流行をはじめ、空き家問題や2022年問題、高齢化社会の加速や若年層の人口減少など、日本全体の問題が不動産投資業界へ与える影響についてどうお考えですか。また、そのような問題に対してどのような対策を取られていますか
山地:それらの課題を放っておけば、不動産投資業界だけではなく、ほとんどの業界に明るい未来はないでしょう。特に若年層の人口減少というのは致命的だと思っています。そこに対してTAPPが何か具体的な対策を取れるわけではないのですが、政府の方で少子高齢化を避けるような政策をとってもらいたいと個人的に考えています。
ただ、1つだけいえるのが、この投資用不動産業界において15年前まではいわゆる電話営業、見え方によっては押し売りと捉えられてしまうような販売の仕方しかなかったのが、今は本当に一般的な資産運用として広く認知され、普通にテレビCMなどの広告も出るような金融商品として地位が昇格したと思っています。人口がこれからもどんどん減るということはただただ懸念ではありますが、もっと不動産投資に対しての認知度高めていくことによって、損益分岐のような形で日本全体の問題に対して一定の解決はできるのではないかと思っています。
セールスの分業化とAIをいち早く取り入れた社員教育
― 売上や企業成長、事業展開の点におきまして、TAPP様の5年後、10年後の目標・未来構想を教えてください
山地:5年後には上場を果たし、売り上げ1000億円を目指したいと思っています。10年後は、1兆円に近い規模のビジネスをやりたい、という思いがあります。
投資用不動産に育てていただいた、という思いがありますので、この業界のリーダーになるだけの売上や実績を作ります。並行して、この業界をもっと周知することに3〜5年間は専念したいと思っています。その上で、乾の人事領域と、苗のマーケティング領域の強みを活かして、その領域をもっと強めていきたいと思っています。
働き方や営業の仕方や営業のDX化といったTAPPの仕事の進め方や考え方を、投資不動産という切り口で業界問わず広げていきたいと思っています。
マーケティングでは、リノベーションのような、空き家再生に近い事業に着手しようと思っています。この事業は3〜4年前からずっとやりたいと思っていました。社会問題の解決にもつながりますし、関係者が全員よかったと思ってもらえる商品になるでしょう。10年後くらいまでには実現したいですね。
やりたいビジネスはいろいろありますが、まずは親和性がある不動産業界に近いところで、できることを着々とやって行きます。関わっている人に面白いと思ってもらえるような、社会の役に立てる事業を手掛ける会社を作っていきたいと思っています。
― お話いただいた内容を受けて、目標に向けて現在取り組んでいることや、取り組もうとしていることはありますか
山地:資用不動産業界は1人の営業マンが集客、提案、販売、アフターフォローまで含めて行うのが常識になっています。しかし、TAPPの場合はそこを分業化しておりまして、マーケティング ・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスまでを100人ちょっとの体制で運用、実践しています。今後、より洗練させていけば他社にお伝えできるレベルに到達するかなと思っています。
苗:少し補足をさせていただきます。TAPPでは創立4年目から「The Model」を基にマーケティング ・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスと分業制にしています。
デジタルマーケティングによって獲得したリードをインサイドセールスで精査し、それからフィールドセールスで営業活動する流れでやっています。この流れの中でそれぞれのKPIの可視化とモニタリングをします。さらに、顧客の条件やニーズ、インサイドセールス担当者とフィールドセールス担当者の特徴といった情報を元に、AIで営業のKPI予測をしています。
すべての活動をデータ化し、インサイドセールスの誰がどの顧客に対応した方がより満足度を高められるのか、「明日○時にご予約した方に対しては、このインサイドセールス担当がいいのではないか」とか、あらかじめ予測をして、顧客満足度を上げているというような取り組みをしています。
営業担当者の業績の分析もAIで見ています。たとえば、入社2年目のAさんと新入社員のBさんはどういうお客さんが得意か苦手か、どういう話題に対してうまく回答できているか、そういうちょっとしたくせについてAIからの助言を受けています。それによって研修プログラムを強化して、成長させていくというようなPDCAを回しています。
AIは、簡単な予測モデルを社内のエンジニアで作って「自社に対してどのようにカスタマイズしていくか」というノウハウを蓄積している段階です。データ化やAI予測といった部分をパッケージ化して、中小企業の皆様からニーズがあれば、まずは無料でご提供し、そこで共同でのテスト開発ということを視野に入れています。
▽質問に答えてくれた苗氏
顧客心理に寄り添う丁寧なサポートが信頼関係構築のカギになる
― これから本格的に不動産投資を始めたい、または、現在行っている不動産投資で最大限のパフォーマンスを狙いたいと考えている投資家の皆さまへ、TAPP様からメッセージをお願いします。
山地:自社のビジョンとして「自分の人生に投資する人が溢れる世界を創る」というものを掲げておりますので、パフォーマンスを上げたいのであればいち早く、不動産投資に取り組んでいただきたいというところが全てだと思っています。
不動産投資の良いところは、ほったらかしていても家賃収入を得られるというところです。1年でも1カ月でも一日でも早く始めれば、それだけ多くの利益が得られます。思い立ったらいち早く行動していただきたいです。不動産の物件というのは、ただ1つとして同じものはありません。物件の良し悪しや管理会社の選定にこだわるより、いち早く決断することが利益に繋がります。
不動産投資が、人生への投資に繋がり、仕事やプライベートがよりダイナミックで面白くなると思っています。その1歩目のお手伝いをできるように社員一同で誠心誠意頑張っています。
また、先に申し上げましたが、TAPPの強みのひとつに新築から中古までさまざまな物件を取り扱っているというものがあります。大抵は中古に強い企業、新築に強い企業といったように偏りがでるものですが、TAPPは顧客の要望に合わせて幅広くコンサルティングする体制が整っていますので、顧客の人生設計に合わせた適切なご提案が可能です。
苗:投資をご検討されている人は、ぜひ一度、話を聞いていただきたいと思っています。現役のビジネスマンは忙しく、投資の勉強をする時間は持てないでしょう。その結果、投資商品には興味があっても、なかなか金融リテラシーを高くすることができないのだと思います。不動産投資に関してご存じない人も多いと思いますので、TAPPのセミナーなどにお越しいただいて、ぜひ金融リテラシーを高めていただきたいですね。
少し大きな話になりますが、日本全体の金融リテラシーが高くなり、投資人口が増えれば、日本経済の活性化に貢献できます。その結果、TAPPの「自分の人生に投資する人が溢れる世界を創る」というビジョンに近付いていくのではないかと思います。TAPPを、不動産の販売だけではなく、投資全般のコンサルサービスとしてぜひご利用いただきたいという気持ちをすごく強く持っています。