GAFAMなど有名な銘柄が多く上場しているNASDAQ(ナスダック)市場。その時価総額上位の銘柄をもとに算出されるのが「NASDAQ100」指数である。これまで高いリターン実績を誇り、2022年5月の大きな下落すら絶好の投資チャンスと考える人も多い。

本稿では投資家から大きな注目を集めるNASDAQ100指数の仕組みと特徴を紹介する。さらにこれから投資を検討している方に向けて、NASDAQ100指数に投資する方法、さらにメリット、デメリットやリスクについても解説する。

目次

  1. NASDAQ100の基礎知識
  2. NASDAQ100に投資する方法5選
  3. NASDAQ100に投資するメリットとデメリット
  4. NASDAQ100投資のおすすめ戦略
  5. まとめ:強い成長力を持つNASDAQ100は長期的な投資におすすめ

NASDAQ100の基礎知識

乱高下は投資のチャンス? 基礎から学ぶ「NASDAQ100」の特徴とリスク
(画像=maurice norbert/stock.adobe.com)

NASDAQ100とは何か? どんな株価指数なのか? 最初にNASDAQ100について知っておくべき基礎知識をまとめた。すでにご存じのこともあるかもしれないが、おさらいしておこう。

NASDAQ100とは?

米国にあるNASDAQ(ナスダック)市場は、ハイテク株やベンチャー株などが多く上場している株式市場として有名である。そのNASDAQ市場に上場している銘柄のうち、流動性や時価総額の大きな銘柄から金融関連銘柄を除外した100銘柄で構成されている株価指数が、NASDAQ100だ。

米国株にはほかにもNYダウ平均やS&P500などの株価指数があり、また同じNASDAQを対象としたものとしてはNASDAQ総合指数も有名だが、NASDAQ100はそれらと並ぶ知名度の高さを誇る。多くの日本人投資家にもおなじみだ。

NASDAQ100の特徴

NASDAQそのものがハイテク株やベンチャー株を主体としている市場であるため、NASDAQ100の構成銘柄には全体的にグロース株が多い。

グロース株とは将来性が有望で、画期的なアイディアやイノベーションなどによって株価の大化けが期待できる銘柄のことだ。NASDAQ100の構成銘柄であるGAFAMもかつてはグロース株であり、NASDAQ100にはこのほかにもテンバガー(10倍株)を達成した銘柄が多く含まれている。

これまでNASDAQ100を成長させてきたのはGAFAMをはじめとするIT産業の発展だが、NASDAQ市場にはほかにも有望な分野が存在する。それら有望な分野で大化けする企業が現れれば、NASDAQ100はさらに成長するだろう。

NASDAQ100とNASDAQ総合指数の違い

NASDAQ市場にはNASDAQ100だけでなく、「NASDAQ総合指数」と呼ばれる株価指数がある。すでに解説したようにNASDAQ100は主要な100銘柄の株価を指数化したものだが、NASDAQ総合指数はNASDAQ市場に上場している全銘柄によって算出されている。

両者は名称が似ているので混同しやすいが、投資家の間では本稿で解説しているNASDAQ100のほうが広く用いられている。

高い成長力と回復力が魅力のNASDAQ

国内市場ではないにもかかわらず、NASDAQは日本人投資家からも高い人気を集めている。その理由の1つとして考えられるのが、高い「成長力」と「回復力」である。NASDAQ市場は長らく右肩上がりの成長を続けており、そのことはNASDAQ100指数の推移にも表れている。

以下は、NASDAQ100の日足チャートだ。

▽NASDAQ100日足チャート(1994年から2022年)

NASDAQ100日足チャート
画像引用:TradingView

1994年から2022年までの推移は、「右肩上がり」という言葉がふさわしい上昇を見せている。2000年頃に一時的な上昇をしているのは「ITバブル」による影響で、その後に少し下落するも、すぐに緩やかな上昇トレンドに回帰している。2001年ごろのITバブル崩壊の時期に2回大きく値を下げたものの、すぐに回復して強い成長力と回復力を見せつけている。

2020年4月の大きな下落は「コロナショック」によるもので記憶に新しいが、その後いち早く回復し、さらに強く上昇している様子が見て取れる。2022年6月現在では大きく下げているものの、これまでどおりの回復力を期待し、「買い時」と見る投資家も多い。

NASDAQ100に投資する方法5選

NASDAQ100にこれだけ強い成長力と回復力があるならば、長期目線で投資したい、と考える投資家は多いだろう。

日本から個人投資家がNASDAQ100に投資する方法は主に5つある。個別に解説するので、最も自分に合う方法を見つける際の参考にしていただきたい。

NASDAQ100に投資する方法1:NASDAQ100連動型ETF(国内)

東証に上場しているETF(上場投資信託)のなかには、NASDAQ100に連動するように運用されている銘柄がある。これらのETFは、保有するだけでNASDAQ100全体への投資効果が得られるうえ、日本の証券取引所に上場されているため円建てで購入可能だ。

NASDAQ100への連動を目指すETFのうち、純資産額上位から順に運用会社の被りがないよう選出した3件を紹介する。

▽NASDAQ100への連動を目指す主なETF(純資産額順)

ファンド名運用会社名信託報酬等(税込)純資産額(百万円)
NEXT FUNDS NASDAQ-100(為替ヘッジなし)野村アセットマネジメント0.22%56,927
上場インデックスファンド米国株式(NASDAQ100)為替ヘッジあり日興アセットマネジメント0.28%19,742
iFreeETF NASDAQ100(為替ヘッジあり)大和アセットマネジメント0.22%7,619
MORNINGSTARのデータを基に編集部作成。2022年8月10日時点

表中で為替ヘッジありと記載されているものは、為替取引等を活用することで、円高・円安による損益を回避するよう運用が行われる。円高による基準価格の下落を防げるメリットがあるが、円安局面ではデメリットになるうえ、運用コストがかさむため信託報酬が割高な傾向にある。

運用会社によっては、同じ指数をターゲットにした商品で為替ヘッジの有無を選べる場合があるので、自身のリスク許容度に合わせて選択しよう。

東証にはほかにもNASDAQ100と連動するETFが上場されており、2022年8月時点では8銘柄に投資が可能だ。

NASDAQ100に投資する方法2:NASDAQ100連動型投資信託(国内)

上場している投資信託であるETF以外にも、NASDAQ100と連動するように運用されている投信がある。先に上げたETFと運用会社が異なるファンドから、総資産額が上位のものを紹介しよう。

▽NASDAQ100への連動を目指す主な投資信託(純資産額順)

ファンド名運用会社名信託報酬等(税込)純資産額(百万円)
eMAXIS NASDAQ100インデックス野村アセットマネジメント0.44%50,699
NZAM・ベータ NASDAQ100農林中金全共連アセットマネジメント0.44%1,888
PayPay投信 NASDAQ100インデックスPayPayアセットマネジメント0.42%1,130
MORNINGSTARのデータを基に編集部作成。2022年8月10日時点

MORNINGSTARでは、後述するブル型やベア型のファンドを除いて9件の商品が確認できる。

NASDAQ100に投資する方法3:NASDAQ100連動型ETF(米国)

NASDAQ100は米国株の指数なので、もちろん米国にもNASDAQ100と連動するETFが存在する。最も著名かつ日本からでも容易に取引できるファンドは「QQQ」の愛称で知られる「Invesco QQQ ETF」で、2022年6月10日時点の純資産額は1,587億ドルを誇る巨大なETFだ。

▽Invesco QQQ ETFの主なスペック

名称Invesco QQQ ETF
運用会社インベスコ・アセット・マネジメント
信託報酬0.20%
純資産額(百万ドル)177,568
MORNINGSTARのデータを基に編集部作成。2022年8月10日時点

このQQQはNASDAQ市場に上場しているETFなので、米国株を扱っている証券会社の口座があれば日本からでも簡単に売買できる。NASDAQにおける最小取引単位は1株なので、100株分の資金が必要な日本国内のETFよりも少ない初期投資で購入可能だ。

NASDAQ100に投資する方法4:CFD

NASDAQ100と連動するCFD(差金決済取引)商品が複数存在する。いずれもNASDAQ100を参照原資産とした金融派生商品であり、そのうち各証券会社が自社の売買システム内で提供している商品は、「米国テク株100」「米国NQ100」といったようにNASDAQ100と連動していることをイメージさせるような名称となっている。

▽CFDとは?

CFDは「差金決済取引」と訳される投資商品で、投資の対象となっている現物資産をやり取りすることなく、それぞれを参照原資産として「価格差」のみをやり取りする。

たとえば、NASDAQ100を参照するCFDを取引する場合、まず買いか売りの注文を行って、ポジション(建玉)を保有する。その後NASDAQ100に連動してCFDの価格が変動し、結果買った(もしくは売った)ときよりも有利になれば、そこで決済することで利益が生じる。

決済時には、ポジション保有時との差額のみが受け渡されるため、取引を行う際にはCFDの価格よりも少ない証拠金を預け入れればよいことになっている。この仕組みをレバレッジといい、日本の株価指数CFDでは証拠金の10倍までの商品を取引できる。

▽NASDAQ100と連動する主なCFD

名称取扱会社・取引所種別
米国テク株100IG証券店頭取引
米国NQ100GMOクリック証券
米国NAS100楽天証券
NASDAQ-100リセット付証拠金取引くりっく株365(東京金融取引所)取引所取引
※IG証券、GMOクリック証券、楽天証券、くりっく株365の各商品ページを基に編集部作成

表にあるとおり、証券会社独自の商品ではない、東京金融取引所を介した取引所CFDである「くりっく株365」も存在する。この「くりっく株365」はNASDAQ100のほかにもさまざまな株価指数と連動する銘柄を提供している。いずれも株価指数提供会社から正式なライセンスを受けているため、商品名には指数の名称がそのまま用いられている。

NASDAQ100に投資する方法5(番外編):レバレッジ型(ブル型)投資信託

5つめは番外編の扱いとなるが、投資信託のなかにはNASDAQ100を対象に、より大きな値動きとなるように設定されているレバレッジ型(ブル型)の商品がある。対象銘柄のうち、総資産額が10億円を超える主なファンドを紹介する。

▽NASDAQ100に連動する主なレバレッジ型投資信託

ファンド名運用会社名信託報酬等(税込)純資産額(百万円)
iFreeレバレッジ NASDAQ100大和アセットマネジメント0.99%166,387
楽天レバレッジNASDAQ-100楽天投信投資顧問0.77%28,345
MORNINGSTARのデータを基に編集部作成。2022年8月10日時点

これらの投資信託はいずれも1日あたりの値動きがNASDAQ100の価格変動に対して2倍となるように運用されている。実際の運用において、これらのファンドを2日以上保有した場合の投資成果は、同期間におけるNASDAQ100の値動きと比較して2倍とはならない点には注意が必要だ。

なおこの他にも、投信のなかにはNASDAQ100の逆、あるいはその数倍の値動きとなるよう運用されたベア型ファンドが存在する。

NASDAQ100に投資するメリットとデメリット

高い成長力と回復力が魅力のNASDAQ100だが、当然ながらメリットやデメリット、リスクが存在する。ここではNASDAQ100投資のメリットを3つ、デメリット(リスク)を2つ解説する。

NASDAQ100投資のメリット

NASDAQ100に投資することで、以下の3つのメリットがあると考えられる。

・NASDAQ100投資のメリット1:GAFAMをはじめとする世界的な成長企業に投資できる

GAFAMやEV(電気自動車)大手のテスラ、映像配信サービスのネットフリックスなどの企業はいずれもNASDAQ100構成銘柄だ。これら日本でもおなじみの世界的企業の株を個別に買うには多くの投資資金が必要になる。しかし、NASDAQ100連動のETFや投資信託を購入すれば、多額の資金を用意せずとも、商品を通じて世界的企業に投資できる。

▽NASDAQ100の主な構成銘柄

社名・代表的なサービスティッカー時価総額(億ドル)
アルファベット(Google)GOOGL(クラスA株)
GOOG(クラスC株)
15,360
15,475
アップルAAPL28,592
メタ(Facebook)META4,561
アマゾンAMZN14,027
マイクロソフトMSFT21,113
テスラTSLA8,809
ネットフリックスNFLX1,022
NASDAQのデータを基に編集部作成。2022年8月10日時点

・NASDAQ100投資のメリット2:今後の成長が期待できる銘柄が多数含まれている

すでに述べてきているように、NASDAQはハイテク株・ベンチャー株を中心とした株式市場であり、グロースに期待できる銘柄が多く上場している。さらに時価総額上位に変動があれば原則としてNASDAQ100の銘柄入れ替え時に反映されるため、NASDAQ100に連動する商品を保有しておくことは、今後急進する対象銘柄があっても漏れなく投資できることに繋がる。

米国におけるハイテク企業・ベンチャー企業の将来性に期待するグロース投資をしたいのであれば、NASDAQ100は有望な選択肢になるだろう。

・NASDAQ100投資のメリット3:100銘柄に分散投資する効果が得られる

投資においてリスクを分散させるのは定石である。それは成長力のある企業に投資するグロース投資においても同様だ。その点、NASDAQ100は選りすぐりの銘柄の集合体であるため、そこへの投資は100の投資先に分散投資したのと同様だといえる。

NASDAQ100投資のデメリット、リスク

NASDAQ100への投資には、メリットだけではなくデメリットやリスクもある。ここではNASDAQ100投資で知っておくべき点を解説する。

・NASDAQ100投資のデメリット、リスク1:構成銘柄の傾向が偏りがち

NASDAQはハイテク株やベンチャー株が主体の市場である。NASDAQ100はそこに属する銘柄からピックアップされているため、どうしても銘柄の傾向が偏りがちだ。しかもNASDAQ100は金融セクターを除外しているため、なおさらITやハイテク株などに偏りやすい傾向にある。これがリスク分散の効果を弱める可能性がある。

・NASDAQ100投資のデメリット、リスク2:金利上昇に弱い

金利と株価は逆相関の関係性があるため、金利が上昇すると株価は下落しやすい。特に景気変動などの影響を受けやすいグロース株主体で構成されているNASDAQは金利上昇によって下落しやすく、金利が上昇するとNASDAQ100は下落することが多い。

上段にて紹介したNASDAQ100のチャートでは2022年5月から指数を大きく下げているが、これは米国の金利引き上げが要因だと指摘されている。

NASDAQ100投資のおすすめ戦略

ここまでの情報をもとにNASDAQ100への投資を検討している投資家に向けて、おすすめの投資戦略を提案したい。これらの考え方を実践すると、より確実性の高い投資ができるだろう。

NASDAQ100投資のおすすめ戦略1:長期的な積立

一時的な下落局面がありつつも長期的には上昇トレンドを続けてきたNASDAQ100は、一定額を定期的に購入し続ける「ドルコスト平均法」との親和性が高い。ドルコスト平均法に従って購入し続けることで、価格変動が平均化される。特に暴落が起きた時は多く買えるため、平均購入価格を引き下げることができる。

▽ドルコスト平均法(定額購入法)の概要と効果

短期的な価格変動に一喜一憂せず長期的に積み立てていけば、将来NASDAQ100が現在よりも成長していた場合に、とても高い資産形成効果が得られる。

NASDAQ100投資のおすすめ戦略2:積立頻度を高める

ドルコスト平均法を実践する場合、毎月決められた日に購入するような運用をイメージする方は多いだろう。しかしNASDAQ100は短期的に大きな値動きをすることがある。そのため、「毎月」よりも「毎週」「毎日」といったように積立の頻度を高くしておくと、より価格変動のリスクを平均化しやすい。

たとえば、数日間だけ価格を大きく下げるようなことがあっても、毎日少しずつ積み立てていれば、下落時に安く買えるチャンスが広がる。証券会社によっては積立購入を自動化できるので、こうした機能もしっかり活用したい。

NASDAQ100投資のおすすめ戦略3:信託報酬が安い銘柄を選ぶ

長期目線のNASDAQ100投資をする場合に注目したいのが信託報酬だ。信託報酬は、ETFや投資信託を運用するために投資家が運用会社、販売会社、信託銀行に支払う費用であり、それが高いとせっかくの運用益を目減りさせてしまう。より高い投資効果を得るためにも、信託報酬はできるだけ抑えたい。

一般的に、非上場の投資信託よりもETFのほうが信託報酬は安い傾向にある。本稿で紹介している主なETFの信託報酬は以下のとおりだ。

▽主なNASDAQ-100関連ETFの信託報酬

ETF銘柄名信託報酬(米国の場合は経費率)
NEXT FUNDS NASDAQ-100(為替ヘッジなし)0.22%
上場インデックスファンド米国株式(NASDAQ100)為替ヘッジなし0.275%
Invesco QQQ ETF0.2%
※各ファンドの目論見書を基に筆者作成。2022年7月25日現在

NASDAQ100投資のおすすめ戦略4:NISAを活用する

NISAは運用益のうち一定額が非課税になる税金の優遇制度だ。一般NISAは5年間毎年120万円まで、つみたてNISAは20年間毎年40万円まで非課税枠を活用できる。そのため、利益が出た際に本来は課税対象となる分が手元に残るのが特徴だ。

一般NISAの対象となっている投資商品のなかには先ほど紹介した「QQQ」や「iFreeレバレッジ NASDAQ100」などNASDAQ100関連のものも含まれている。NASDAQ100投資をする際にはNISA口座から購入し、非課税のメリットを享受したいところだ。なお、つみたてNISAの対象となる投資信託にはNASDAQ100関連商品は含まれていない。

まとめ:強い成長力を持つNASDAQ100は長期的な投資におすすめ

強い成長力と回復力が魅力のNASDAQ100について、具体的な投資の方法やメリット、デメリット(リスク)について解説した。これまでの成長力を見る限り、2022年5月から始まっている急落も一時的な「押し目」であると見る投資家は多く、今後もNASDAQ100人気は続きそうだ。この機会に投資を始めようと考えている方は、リスク面などもしっかり理解したうえで長期目線の投資に臨んでみてはいかがだろうか。