米国の代表的な株式市場であるNASDAQ(ナスダック)。アップルやアルファベット(Googleの持ち株会社)、メタ(旧社名:Facebook)などIT関連新興企業が多く上場しており、その成長力から、投資を検討している投資家もいるのではないだろうか。NASDAQの値動きをポートフォリオに組み込む方法として、NASDAQ関連指数を対象とした先物取引やCFDの取引が挙げられる。今回はNASDAQの基本事項および、先物、CFD各取引の仕組みやメリット・デメリットを解説しよう。
目次
NASDAQ(ナスダック)とは? 基本事項を確認
NASDAQ(ナスダック)は、米国を中心としたIT関連新興企業が多く参加する株式市場で、アップルやアルファベット(Google)、メタ(Facebook)、マイクロソフトといった、世界的な企業が多数上場している。また、米国企業のほか日本の任天堂や日産自動車も上場するなど、総企業数は約3,000社に上る。
国際取引所連合によると、加盟国における取引所別時価総額シェアのうちNASDAQは17.7%を占めるという結果も出ており、世界の株式市場に大きな影響を与える市場の1つだといえるだろう。
NASDAQ総合指数、NASDAQ100とは?
NASDAQ総合指数とは、NASDAQに上場している全銘柄を対象とした株価指数だ。1971年2月5日の値を100として、時価総額加重平均により算出される。NASDAQにはハイテク企業・インターネット関連企業が多く上場しているため、NASDAQ総合指数はこれら企業の動向を測るのに重要な指標となる。
▽株価指数とは
株価指数とは、一言でいえば、上場銘柄全体の値動きをあらわす指標です。株式市場全体が上がったか下がったかを見る物差しと考えれば理解しやすいでしょう。
引用:JPX日本取引所グループ| よくあるご質問(株価指数関連)
NASDAQを対象とした株価指数としては、NASDAQ総合指数のほかにNASDAQ100指数がある。これは、NASDAQに上場している企業のうち時価総額トップ100の非金融銘柄で構成された指数だ。指数の計算は1985年1月31日からスタートしており、年に1回、例年では12月に定期的な銘柄の入れ替えが行われる。
▽NASDAQ100とは
The Nasdaq-100 is one of the world’s preeminent large-cap growth indexes. It includes 100 of the largest domestic and international non-financial companies listed on the Nasdaq Stock Market based on market capitalization
引用:Nasdaq | Nasdaq-100 Index
NYダウやS&P500との違い
米国株の指標には、NASDAQ総合指数やNASDAQ100指数のほか、NYダウやS&P500といったものもある。それぞれの特徴を知り、違いを確認しておこう。
▽NASDAQ総合指数とNASDAQ100指数、NYダウ、S&P500の違い
指数 | 組入銘柄数 | 組入銘柄数の特徴 |
---|---|---|
NASDAQ総合 | 3,000 | NASDAQに上場しているすべての銘柄 |
NASDAQ100 | 100 | NASDAQに上場している金融業以外の銘柄のうち、時価総額上位100銘柄 |
NYダウ | 30 | NASDAQやニューヨーク証券取引所に上場している代表的な30銘柄。米国に本社を置いている企業の中から、成長性や知名度の高さを重視して選ばれる |
S&P100 | 500 | NASDAQやニューヨーク証券取引所に上場している代表的な500銘柄。時価総額の大きな企業が選定される |
株価指数先物取引の仕組み
NASDAQ関連指数に投資する方法の中でも、必要資金に対して高いリターンが見込めるものとして株価指数先物取引が挙げられる。株価指数先物取引は、株価指数について、将来のあらかじめ決められた期日に決められた価格で売買することを現時点で約束する取引だ。日経平均株価やTOPIX、NYダウ、NASDAQ100といった株価指数が投資対象となる。
株価指数先物取引で取引されるのは、株式などの金融商品や貴金属・農作物といった現物の商品ではない。そのため具体的な商品の受け渡しは発生せず、決済時には取引時の約定価格と決済価格の差額のみがやりとりされる。たとえば、購入時よりも決済時の価格が上回っていればその差額を受け取り、逆に決済時の価格が購入時より下回っていれば差額を支払う。こうした取引を「差金決済」(さきんけっさい)と呼ぶ。
現物の授受が発生しないため、買いだけでなく「売り」から取引を始められる点も、株価指数先物取引の特徴だ。
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運用成果を安定的に伸ばす手法を受け取る株価指数先物取引と現物株取引の違い
株価指数先物取引と一般的な現物株取引との違いについて、以下で確認しよう。
▽株価指数先物取引と現物取引との違い
株価指数先物取引 | 現物取引 | |
---|---|---|
取引時の現物の受け渡し | なし | あり |
決済方法 | 差金決済 | 現物決済 |
証拠金の差し入れ | あり | なし |
レバレッジ取引の有無 | あり | なし |
取引のスタート方法 | 売りもしくは買い | 買いのみ |
限月(げんげつ)の有無 | あり | なし |
株価指数先物取引では、あらかじめ決められた「限月」の最終取引日が過ぎると、SQ値と呼ばれる特別に算出された価格と、取引時の約定価格との差額によって差金決済が行われる。契約時の価格とSQの価格差によってどのような損益が発生するかを、以下で確認しよう。
▽先物取引で発生する損益のパターン
契約内容 | SQの価格 | 損益 |
---|---|---|
「買い」の場合 | 契約時の価格よりも上がった場合 | 利益が出る |
契約時の価格よりも下がった場合 | 損失が発生 | |
「売り」の場合 | 契約時の価格よりも上がった場合 | 損失が発生 |
契約時の価格よりも下がった場合 | 利益が出る |
先物取引を「買い」からスタートしたとする。たとえば、契約時の価格が1,000円でSQが1,100円になった場合は差額の100円が利益となる。一方SQが900円になったとすると100円の損失となる。
逆に「売り」からの契約でスタートしたとしよう。仮に契約時の価格が1,000円でSQが1,100円に値上がりした場合、100円の損失が発生する。SQが900円に値下がりすると、100円の利益を受け取れる。
なお株価指数先物取引では、必ず満期日まで契約を続けなくてもよい。期間中に「転売」や「買戻し」といった反対決済をすることで、満期日前に差金決済を行うことも可能だ。
▽特別清算数値(SQ値)とは
スペシャル・クォーテーション(Special Quotation)の略です。主に指数先物・オプション取引の満期日の決済に用いられる数値のことです。
引用:日本取引所グループ | 先物取引について
株価指数先物取引のメリット
株価指数先物取引の主なメリットは、以下の4つである。
▽株価指数先物取引の主な4つのメリット
・レバレッジ取引により資金効率の良い投資ができる
・個別の銘柄選定が不要である
・投資のチャンスが多い
・取引時間が長い
株価指数先物取引のメリット1:レバレッジ取引により資金効率の良い投資ができる
株価指数先物取引では、レバレッジ取引による資金効率の良い投資が可能だ。レバレッジ取引とは、証拠金を預け入れることで、その数倍の売買ができる投資方法である。
たとえば、10万円の証拠金を預けてレバレッジ20倍の取引を行った場合、200万円(10万円×20倍)まで投資できる。投資に充てられる予算が少ない人でも大きな取引ができる点が、レバレッジ取引の魅力だといえるだろう。
株価指数先物取引のメリット2:個別銘柄の選定が不要である
指数を取引対象とする株価指数先物取引は、個別銘柄の選定をせずに複数の銘柄に投資するのと同様のリスク分散効果が得られる。なぜなら株価指数は、そもそも多数の銘柄の動きをもとに算出されているからだ。
仮に構成銘柄の1つが破綻したとしても、分散投資の効果により損失が一定の範囲内に収まることが期待できる。
株価指数先物取引のメリット3:投資のチャンスが多い
先述のとおり、契約時に現物の受け渡しが発生しない先物取引では、「買い」だけでなく「売り」からも取引をスタートできる。そのため、将来的に指数の価格が下がりそうな局面でも投資のスタートが可能だ。投資の機会を増やし資産運用を積極的に行いたいなら、先物取引は有力な選択肢となる。
株価指数先物取引のメリット4:取引時間が長い
現物取引と比較して取引時間が長いのも、先物取引の特徴である。日本国内における現物取引の取引時間は、平日9時~15時(11時30分~12時30分を除く)だ。一方NASDAQ先物の場合は、米国における冬時間の期間ならば月曜7時から土曜日7時まで取引可能(火曜から金曜の8時45分〜9時を除く。いずれも日本時間)である。
日本の祝日でも原則問題なく取引可能な点もメリットだが、逆に米国の祝日やその前日はスケジュールが変更となることは知っておこう。
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運用成果を安定的に伸ばす手法を受け取る株価指数先物取引のデメリット
次に、株価指数先物取引のデメリットについても確認しておきたい。
▽株価指数先物取引のデメリット
・リスクが大きい
・追加証拠金の差し入れを求められるケースがある
・強制決済が行われる可能性がある
・一部の商品は国内から取引しにくい
株価指数先物取引のデメリット1:リスクが大きい
株価指数先物取引はレバレッジ取引による資金効率の良い投資ができる一方、元手以上の投資を行うため損失額が大きくなる。そのリスクを抑えるには、投資初心者のうちはレバレッジを抑えた投資を行うことや、保有中の運用状況を把握し余裕資金内での投資に収めることがポイントになる。
またNASDAQ関連指数先物の場合、ドル建てでの取引となるため為替の影響を受ける点にも留意しよう。
株価指数先物取引のデメリット2:追加証拠金の差し入れを求められるケースがある
相場の急変などにより損失額が一定のラインを超えた場合、追証(おいしょう)と呼ばれる追加証拠金の差し入れを求められるケースがある。先物取引を行うにあたっては追証で慌てることがないよう、ある程度の資金を手元に残しておくことも重要だ。
株価指数先物取引のデメリット3:強制決済が行われる可能性がある
一定の時限を過ぎても追加証拠金が支払われない場合、保有する取引が強制決済される可能性がある点にも注意したい。強制決済されると損失額が確定するため、証拠金以上の損失となった場合には即座に補てんを求められることは知っておこう。
株価指数先物取引のデメリット4:一部の商品は国内から取引しにくい
各運用会社が株価指数をターゲットに運用指図を行い、証券会社などを通じて販売される投資信託や、それを証券取引所に上場するETFとは異なり、株価指数先物は各国の金融商品取引所に上場される。
たとえばNASDAQ100先物が上場されているのは、現状シカゴ・マーカンタイル取引所のみだ。この取引所の商品を扱う証券会社のうち、日本国内から容易に利用できる企業は多くない。
先物取引の税金
先物取引で得た利益には、20%(2037年までは復興特別所得税がかかるため20.315%)の税金がかかる。知っておきたいのは、現物取引とは異なり特定口座での取引ができない点だ。そのため、納税は自身で確定申告をする必要がある。
▽特定口座とは
居住者等が、金融商品取引業者等に特定口座を開設した場合(1金融商品取引業者等につき、1口座(ただし、課税未成年者口座として設けられた特定口座を除きます。)に限られます。)に、その特定口座内における上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額については、特定口座外で譲渡した他の株式等の譲渡による所得と区分して計算します。この計算は金融商品取引業者等が行いますので、金融商品取引業者等から送られる特定口座年間取引報告書により、簡便に申告(簡易申告口座の場合)を行うことができます。
引用:国税庁 | No.1476 特定口座制度
併せて先物取引は、現物の株式や投資信託とは損益通算ができないことにも気をつけたい。損益通算とは、一定期間内の利益と損失を相殺することで納税額を抑えられる可能性がある、投資家ならぜひ知っておきたい制度の1つだ。
先物取引と損益通算できるのは、国内のオプション取引やCFD、FX(取引所取引、店頭デリバティブ取引)などに限られる。複数の商品に投資をしている場合には、どの組み合わせで損益通算ができるのかを事前に把握しておこう。
NASDAQに投資するならCFDを検討しよう
先述のとおり、NASDAQ関連指数の先物を国内から購入する方法は限られている。そのためNASDAQに投資をするなら、ここまで紹介した先物取引よりもCFD(Contract for Difference:差金決済取引)を検討すべきだろう。
CFDは先物取引と同じく、株価指数の差金決済ができる取引方法である。しばしば先物取引と混同されることもあるが、より少額から取引可能なため個人投資家でも始めやすい。CFDと先物取引の違いについて、NASDAQ100に投資する場合を例に以下で確認しよう。
▽CFDと先物取引の違い
CFD (くりっく株365 NASDAQ-100リセット付証拠金取引) | 先物取引 (E-Mini Nasdaq-100 index) | |
---|---|---|
取引手数料 | なし | あり |
1枚あたり単価 | NASDAQ100の数値×10円 | NASDAQ100の数値×20ドル |
最低投資額※ | 6,500円程度 | 169万円程度 |
限月 | 年ごと | 四半期ごと |
CFD取引は、取引手数料が無料で限月が長いのが特徴だ。また、先物取引と比べて少額から投資できるため、初心者でも始めやすい方法だといえる。NASDAQ先物への投資を考えているなら、ぜひCFDを検討したい。
NASDAQに投資できる「くりっく株365」
CFDを利用してNASDAQに投資するなら、「くりっく株365」を検討しよう。CFD取引にはくりっく株365のような取引所CFDと、店頭CFDがある。取引所CFDと店頭CFDそれぞれの特徴を確認しよう。
▽取引所CFDと店頭CFDの違い
取引所CFD | 店頭CFD | |
---|---|---|
価格を決める人 | 取引所 | CFDを提供している会社 |
取扱銘柄数 | 少なめ | 多い |
コスト | 高め | 低め |
取引所CFDの最大の特徴は、取引業者破綻時に投資家が預けている保証金が全額保証される点だ。そのため、店頭CFDと比べると安心して取引ができる。店頭CFDは、取扱銘柄が多くコストが低めな点が魅力だが、約定価格など取引条件はCFDを提供する会社によって異なることは知っておこう。
くりっく株365とは?
くりっく株365は東京金融取引所に上場する取引所CFDだ。2021年12月末時点で口座開設数は49万を突破するなど、利用者は年々増えている。くりっく株365で取り扱う銘柄を、以下で確認しよう。
▽くりっく株365の取扱銘柄
引用:くりっく株365 | 「くりっく株365とは」をもとに筆者作成
*株価指数
・日経225、NYダウ、NASDAQ-100、DAX、FTSE100
*ETF
・金ETF、原油ETF
取引所CFDは店頭CFDと比べ取扱銘柄が少なめとはいえ、くりっく株365では世界の主要な株価指数および、金、原油を取り扱っており、CFDにこれからチャレンジする投資家であれば物足りなさを感じることもないだろう。
くりっく株365では、ポジションを持っている株価指数の構成銘柄に配当がある場合、株価指数を基にした配当相当額の受け払いが行われる。そのため、売買によるキャピタルゲインに加えてインカムゲインに期待できる点も、くりっく株365の魅力だといえる。
くりっく株365で取り扱う「NASDAQ-100リセット付き証拠金取引」の特徴
くりっく株365では、2022年2月28日から「NASDAQ-100リセット付き証拠金取引」の取り扱いをスタートした。NASDAQ-100リセット付き証拠金取引は、米国で前述の株価指数であるNASDAQ100を提供するNASDAQ, Incから正式なライセンスを受けた、国内初の取引所CFDだ。
NASDAQ100には、いわゆるGAFAMと呼ばれる世界のITを代表する銘柄が多く組み入れられているため、ハイテク銘柄への分散投資を代替できる指標として人気が集まっている。
NASDAQ-100リセット付き証拠金取引の特徴は、以下の4つだ。
▽NASDAQ-100リセット付き証拠金取引の特徴
・日本円で取引できる
・取引単位は「(NASDAQ-100)×10倍」のミニサイズ
・レバレッジ取引が可能
・毎日ほぼ24時間、祝日も取引できる
NASDAQ-100リセット付き証拠金取引は、日本円で取引をスタートできる。為替レートを気にすることなく投資ができるため、初心者でも始めやすいといえるだろう。
また、最小投資額が少ないのも特徴だ。取引単位が「(NASDAQ100の価格)×10倍」と低めに設定されていることに加え、レバレッジ取引を活用すればさらに少額からの投資が可能になる。なお、1ドル130円、NASDAQ100が13,000ポイントの場合、必要最低証拠金は約6,500円程度となっている。
くりっく株365で取り引きするには取扱会社での口座開設が必要
くりっく株365での取引は、以下の取扱会社(「くりっく株365取引参加者」)で口座を新たに開設し、証拠金を預託したうえでスタートしよう。
▽くりっく株365取扱会社一覧
・岩井コスモ証券 ・KOYO証券
引用:くりっく株365 | 「くりっく株365とは」をもとに筆者作成
・AIゴールド証券 ・日産証券
・SBI証券 ・ひまわり証券
・auカブコム証券 ・フジトミ証券
・岡三オンライン証券 ・マネースクエア
・岡安商事株式会社 ・豊トラスティ証券株式会社
\銀行や証券会社では教えてくれない/
運用成果を安定的に伸ばす手法を受け取るまとめ:先物取引のメリットとデメリットを確認し、NASDAQ先物にチャレンジしてみては
NASDAQは、ハイテク株をポートフォリオに取り入れたい投資家にとって無視できない株式市場だ。NASDAQ関連指数に投資する方法の1つとして、NASDAQ先物が挙げられる。ETFや投資信託と比べると、レバレッジ取引により資金効率が良い投資ができる点や、買いと売りの両方から取引をスタートできる点、取引時間が長い点などがメリットだ。
一方デメリットとしては、レバレッジ取引のため損失額が大きくなる可能性がある点や、証拠金追加の差し入れが間に合わなかった場合に強制決済が行われる点、為替の影響を受ける点、一部の指数先物は国内からの購入が難しい点などがある。
NASDAQ指数に投資する方法としては他にもCFDがある。こちらはレバレッジなど先物と同様のメリットを持ち、低額から始められるうえ国内からでも利用しやすい。それぞれの取引について注意点などをよく確認し、資産運用に組み入れてみてはいかがだろうか。