本記事は、清水康裕氏の著書『エンゲージマネジメント 本当に愛される職場のつくり方』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

従業員エンゲージメントを高めることで得られる「3つのメリット」

メリット
(画像=Dzmitry/stock.adobe.com)

私は現在、独立して経営コンサルタントとして活動していますが、5年前までは会社員でした。

システムエンジニアとしてキャリアをスタートし、その後はコンサルタントとして国内のシンクタンクや外資系のコンサルティングファームで経験を積んできました。

コンサルタントとしては、官公庁でシステムの刷新、民間企業で基幹業務の改革など、多種多様な案件に従事してきました。

独立してからは、会社員時代の経験を活かし、大企業から中小企業まで100社以上の企業の経営者様と組織改革を行ってきました。そこで感じたのは、経営者と従業員に心理的な隔たりがあるということです。

私の実家は造り酒屋だったのですが、私が幼少のときに廃業しました。昔ながらの日本酒の製造販売が時代遅れになったためです。

あのときもっと従業員と力を合わせて新しい市場を開拓していれば、もっと時代に合った日本酒を開発できていれば、未来は変わっていたかもしれません。

エンゲージマネジメントとは

エンゲージマネジメントとは、エンゲージメントとマネジメントを組み合わせた造語です。

エンゲージメントは、従業員が仕事に対して自らの意思で前向きに取り組む姿勢のことです。マネジメントは、経営者による従業員の管理です。

エンゲージマネジメントは、従業員が能力を最大限発揮できる環境を経営者が整えるということです。

従業員が会社を愛し、会社の永続的な発展を願えば、経営者と同じ思いを共有することができます。従業員のエンゲージメントが高まると経営者が1人で抱えていた課題を従業員と共に解決に向けて動き出すことができます。

経営判断に多くの視点が加われば、それだけ検討の幅が広がり、経営者の勘も冴え渡ります。

エンゲージメントは従業員の会社への忠誠心と似ていますが、それよりももっと踏み込んだものです。

忠誠心は、会社のために会社から与えられた業務を忠実に行うことです。

しかし、エンゲージメントは、それに加え、従業員が経営者と共に、もっと社会に貢献するためにどのようなことができるのかを積極的に考え、実践することを目的とします。

もちろん、今でも経営者は従業員に労働する環境を提供し、従業員はその中で最大限の力を発揮して貢献しています。

それをエンゲージマネジメントでさらに良い環境を作り出し、従業員の貢献度合いをレベルアップするという好循環を作り上げることができます。

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(画像=『エンゲージマネジメント 本当に愛される職場のつくり方』より)

経営上のメリット1 経営判断の精度向上

エンゲージマネジメントを実践することで、会社は変化します。また、その変化は会社の成長を促します。

会社が成長することによる経営者へのメリットは、経営判断の精度を上げることができることです。従業員が活性化し、従業員が自ら多くの情報を発信し行動すれば、それだけ経営の判断材料が充実するということです。

従業員が活性化して、時間の「質」が高まると、経営者は「楽」になります。指示しなくても、従業員が自ら考えてくれるので、経営者は経営課題の対応に多くの時間を割くことができるからです。

これは「現場から距離を置く」ということではなく、自分が「現場の担当者にならない」ということです。

実際にはこれがなかなか難しく、経営者自らが動いてしまいがちです。なぜなら、人に指導するよりも自らが動く方が作業も早く、楽だからです。

しかし、これを続けてしまうと組織の成長の機会が失われてしまいます。また、従業員が自ら考えて行動することを放棄し、「指示待ち体質」になってしまう可能性があります。

小さな会社であれば、計画通りに従業員を採用することが難しいため、経営者自身が技術業務や営業業務を行わざるを得ず、業務に忙殺されがちです。どうしても直近の作業に注力する比率が高くなり、肝心の会社の成長のための次の一手を打つのが遅れてしまいがちです。

経営上のメリット2 従業員の意欲向上

会社が成長すると売上や利益が向上します。そして従業員の意欲が向上します。

従業員が活性化するということは、仕事に充実感があり、楽しく働けるということです。職場が楽しければ、その会社をより一層好きになります。そうすると従業員は「会社をもっと良くしよう」と考えてくれるようになります。

例えば、私生活でのちょっとした出来事も、自分の仕事に応用しようと工夫するようになります。

これは、仕事と私生活が互いに良い作用をおよぼすこと、つまり、ワークライフバランスが取れている状態になったと表現できます。

ワークライフバランスとは、単純に仕事(ワーク)と私生活(ライフ)、それぞれの時間を確保(バランス)しましょう、というものではありません。

仕事(ワーク)と私生活(ライフ)、どちらも同じくらい重要視することで、相互に良い作用をもたらす状態のことを表します。。

1日は24時間です。

時間を「量」で捉えると単なる時間割、時間をどう配分するかが基準になってしまいます。

時間を「質」で捉えると、それぞれの時間がどれだけ充実しているかを基準にすることができます。

充実感を得るために必要な時間の「量」は、ひとそれぞれですし、何をするのかによっても異なります。仕事と私生活それぞれで充実感を得るためにどの程度の時間が必要なのかを考えるとそれぞれの時間の「量」と「質」の価値が釣り合います。

釣り合っていないシーソーは支柱を長くしても傾きが大きくなるだけで、いずれすべて滑り落ちてしまいます。釣り合っているシーソーは支柱をどんどん高くすることができます。

支柱を高くすることは、従業員自身のレベルアップと考えてください。仕事と私生活それぞれが充実している場合、趣味や読書、全く環境の異なる人との会話から得た経験や情報を仕事に活かして職場でリーダーシップを発揮したり、アイデアを新商品開発に役立てたり、顧客との話題作りに貢献したりと、さまざまな場面に役立てることができます。

仕事での段取りやチームワーク、人事異動のような経験を私生活に取り入れることで、いかに効率よく家事をこなすか計画を立てたり、家族で料理を分業して一体感を味わったり、たまには家庭での役割を変えてそれぞれができることを増やしたりと、日々の生活に刺激が加わります。

仕事と私生活を別のものとして完全に区切ってしまうよりも、融合させることで、それぞれの時間の「質」が大きく変化します。

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(画像=『エンゲージマネジメント 本当に愛される職場のつくり方』より)

経営上のメリット3 経営資源(人・モノ・金・情報)の充実

私は30年間、経営コンサルタントとしてさまざまな企業の経営者と話をする機会に恵まれました。

支援してきた企業は、数名で頑張っている小規模な企業から1万人以上の従業員を世界中に配置している企業までさまざまです。

支援してきて気付いたのは、会社の規模、業種、業態にかかわらず、すべての経営者に共通していることがあるということです。

それは、常に人事に関する問題を抱えているということです。

会社組織の適正化ついては、ほぼすべての経営者が問題意識を持っています。経営資源は人、モノ、金、情報ですが、この4つの経営資源のうち「人」の能力だけは不安定で、定量的に図ることが難しいことが問題の原因ではないかと思います。

人の能力や意欲は、その引き出し方次第で効果的に高めることもできれば、逆に低下させてしまうこともあると、多くの経営者はわかっています。しかし、人の問題は不確かで効果を把握しにくいため、どうしても後手に回りやすいのです。

多くの経営課題を抱える経営者の問題解決の優先順位は、次の通りです。

(1)カネの調達
(2)モノの調達
(3)情報の収集
(4)ヒトの問題解決

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(画像=『エンゲージマネジメント 本当に愛される職場のつくり方』より)

カネ、モノ、情報のトラブルの解決は即効性があります。そしてその効果は定量的に確認することができます。

しかし、ヒトの問題は不確かで、効果を把握しにくい傾向があります。

ヒトは柔軟に対応すること、言い換えると我慢して気力で乗り切ることができてしまうため、つい後回しにしてしまいがちです。

そして、なし崩し的に「現状体制維持」という状況に陥り、「悩みはあるけど解決できない」という永遠のテーマという扱いになってしまいます。

エンゲージマネジメントを駆使することで、ヒトの問題を解決し、従業員のやる気を引き出し、生産性を上げることができれば、ビジネスの最前線に立つ従業員の持つ情報を会社の共通知識にすることができます。

それは、生きた情報を経営に活用することにつながり、モノ、カネの問題発生を予防し、発生したとしても影響を最小限に食い止めることができます。

経営に限らず、決断の最終的な決め手は勘と度胸です。

決断を下すには、過去の実績や経験値を駆使して未来を予測することが重要です。

未来を予測するにあたって、過去だけではなく、現在の状況を的確に把握する情報を持てば、判断の精度が増します。

最終的な決断は勘と度胸であることに変わりはありませんが、従業員からの情報を入手することで勘はより一層鋭くなり、根拠を持って決断することで一歩踏み出す度胸も生まれます。

エンゲージマネジメント 本当に愛される職場のつくり方
清水康裕(しみず・やすひろ)
中小企業診断士。株式会社ワイズリッジ代表。大学で経営工学を専攻後、EYアドバイザリーアンドコンサルティングに就職。シンクタンク、外資系コンサルティングファームにて100件以上の業務改革プロジェクトに従事。独立後は中小企業診断士として、年間50社以上の企業のコンサルティング・企業研修を実施。従業員が自ら考え、自ら答えを出す自走型組織への改善を支援している。

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