本記事は、清水康裕氏の著書『エンゲージマネジメント 本当に愛される職場のつくり方』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
GAFAの福利厚生が充実している理由
従業員にとって魅力的な制度をつくる
GAFAという言葉をご存じでしょうか?
「G」はGoogle、「A」はAmazon、「F」はFacebook、「A」はAppleを指し、アメリカ発の最も影響力の高いIT企業4社を表した略語です。
GmailやGoogle Chrome、amazon、FacebookやInstagram、iPhoneやMacBookなど、一度は利用したことがあるのではないでしょうか。
このような世界中で利用されている商材を持つ企業をGAFAと称しています。これらの企業は、我々の生活を一変させました。
GAFAは世界を舞台に大きな影響力を持つ企業であると同時に、多くの従業員を雇用していることも特徴の1つです。
これらの企業は、優れた人材が能力を最大限発揮できるように、そして、他の企業に転職してしまわないように、魅力的な企業であるための努力を惜しみません。
報酬が高いことは言うまでもなく、福利厚生も充実しています。
私は長らく、「外資系企業の従業員は短期間で転職を繰り返す」「組織と従業員の関係が希薄」というイメージを持っていたので、この事実を知ったときは少々驚きました。
福利厚生の代表的な例として、従業員が無料で利用できる食堂というのがあります。
食堂は常時オープンしていて、社員であれば無料で利用できるというものです。しかもレトルトや乾物ではなく、調理された温かい食事や新鮮な野菜などが提供されるようです。
その他、従業員ならいつでも利用できるフリースペース(机や椅子、ホワイトボードなどが完備された広場のようなもの)や、スポーツ施設、ジムなどがあります。
昨今のコロナ禍を背景に、GAFAの福利厚生の内容も変わってきているようですが、このような福利厚生は社会的に注目を集めますし、従業員にとって大変魅力的です。
このような環境で働くことができれば、働いている従業員たちは「世界を動かす仕事をしている」という誇りとともに、「この会社は従業員を大切にしている」と感じることができるのではないでしょうか。
このような施策は、従業員の定着率を向上させ、ここで働きたいという求職者の数と質を向上させるのに貢献します。
おそらくこれが直接の目的だと思いますが、それ以外にも重要な要素があります。
従業員のコミュニケーションを促しアイデアを育む
食堂の充実や、フリースペースの利用を促すことで、従業員同士が部門の垣根を越えて活発に交流することができます。
そうすると、会社のさまざまな情報を個人間で共有することができ、従業員同士の連帯感や絆を深めることができます。
また、業務外のコミュニケーションを意図的に増やすことで、さまざまな情報を融合して新たな企画を生み出す企業文化を醸成しています。
多くの従業員を抱える企業が従業員の円滑なコミュニケーションを促進しするのに有効な方法です。
日本の企業も会社主催のスポーツ大会や社員旅行を実施する会社がありますが、最近ではだいぶ減ってきました。
手間と時間がかかるイベントは主催する側も参加する側も負担を感じるため、致しかたありません。
多くの企業では現在、政府が推進している「働き方改革」に「コロナ禍」が相まって、親睦会や歓送迎会の機会が減り、従業員や上司を含めた社内でのコミュニケーションが不足している傾向にあります。
組織やチーム、業務上のコミュニケーションだけでは入らない情報が多々あり、その中に貴重なアイデアの種が隠れていたりします。
1人よりもチーム、チームよりも組織、組織よりも会社全体を巻き込んだ方が多様な価値観を持ち寄ってアイデアを昇華させることができることをGAFAの福利厚生は体現しているのです。
GAFAの福利厚生はそれぞれのホームページの採用欄に記載されています。きっとそのいくつかは、皆さんにとってのヒントになるはずです。興味のある方はぜひ確認してみてください。
参考にしたいGoogleの福利厚生
こんな福利厚生があったら良いなというものを、私なりにGoogleの日本語版ホームページに掲載されている福利厚生から抜粋しました。
これらはどんな企業でもそれほど手間とお金をかけずに従業員のエンゲージメントを高める可能性があるのではないかと思います。福利厚生を検討する上での参考になれば幸いです。
▼学費ローンの返済サポート
若手社員にとって、学費ローンの返済が固定費としてかかるのは厳しいものです。返済金額を会社が負担して、返済後に会社が補填した分を従業員に返済してもらうような制度はいかがでしょうか?若手社員にとっては月々の返済額を低くし、期間を延ばすイメージです。もちろん、完済前に退職するときは全額返済する契約を取り交わす必要があります。
▼有給休暇制度
さまざまなライフイベントに応じた休暇制度があることは、従業員は仕事と私生活のバランスを保つことができます。また、個人の時間を尊重する企業の姿勢を「粋」に感じるかもしれません。もちろん、制度はあるのに権利を行使しづらい、形骸化した仕組みでは逆効果になることに注意が必要です。有給休暇の種類として、長期休暇、忌引休暇、裁判員休暇、病気休暇、育児休暇、障がい休暇、祝祭日などがあります。
▼パートタイムやワークシェアリング可能
この制度は従業員にある程度の裁量を持たせることになります。こちらも従業員に自立と責任を促す対応として、会社の柔軟な姿勢に好感を持つことでしょう。
▼従業員同士が学び合い、コーチングし合えるプラットフォームを提供
コーチング制度、ブラザーシスター制度、メンター制度など、先輩従業員が後輩従業員を業務面、精神面でサポートする施策はさまざまなものが打ち出されています。
私も育成される側、育成する側どちらも経験していますが、指導者の意見や発言がしっくりこなかったり、企業からの強制力を感じたりして形だけの対応になってしまうことも多かったように思います。
一方、同じ志の下で自然発生的にできたグループは、目標が明確で相互に高め合う雰囲気が勝手に醸成されているものです。画一的な制度の施行ではなく、グループ形成を促すきっかけ作りの場の提供が求められています。
▼従業員で構成される社内コミュニティと地域文化クラブ
従業員同士がつながるきっかけづくりと考えれば良いかと思います。
私は母校のOB会に携わっている関係で、たまに大学に行く機会があるのですが、土曜日の朝に行くと、学生がゴミ袋とトングをもって大学周辺のゴミ拾いをしています。その姿が実に楽しそうで見ていて清々しい気持ちになります。
「やらされ仕事」ではなく、「やりたい仕事」を行うことの大切さを学生が教えてくれます。内部のコミュニケーションを充実させ、社会貢献にもなるクラブ活動は企業も積極的に取り入れると組織活性化に役立つのではないかと思います。
▼作業、息抜き、同僚との協業に適した魅力的な空間
企業の会議室はどうしても閉塞的になりがちです。しかも会議室はいつも予約がいっぱいで、利用するには1週間前に予約しなければならないという会社もあります。これでは、ちょっとした会話を促すことができません。
私が新人社員だったころは、各会社に「たばこ部屋」というのがあって、そこに行くと全身たばこのにおいになるのと引き換えにさまざまな情報を収集することができました。
そのため、喫煙しないにもかかわらず、敢えて定期的にたばこ部屋に通っていた経験があります。
今ではたばこ部屋のような施設は無くなり、人が集まれる場所が限られています。
もしも自社に食堂があれば終日開放することでコミュニティスペースになります。なければ会社の机の配置を検討して、パーティションで区切ってスペースを作ることもできます。
全くゆとりがない場合は、今が会社の規模を拡大するチャンスと捉えて、少し広い事務所を検討しても良い時期かもしれません。
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