本記事は、鹿子木 健氏の著書『投資で失敗する人 成功する人 ―― あなたの人生を貧しくする投資のウラ側』(自由国民社)の中から一部を抜粋・編集しています

投資で失敗する人 成功する人
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

勉強にコストをかける

お金の使い方だけでなく、時間の使い方を見れば、その人の価値観がわかります。そして、成功している人の時間の使い方と、そうでない人の時間の使い方には明確な違いがあります。

♦限られた時間をどう使うか?

時間は命です。なぜなら私たちの命とは、心臓や脳のことではなく、あとどのくらい生きられるかという余命、つまり残された時間のことだからです。その時間を投資で成功する人はどのように使うのでしょうか?

成功している人は、探求心と向上心がモチベーションになっています。だから、一生学び続けます。

学びとは、学校の勉強のことだけではありません。むしろ、高校や大学を卒業してからが本当の学びです。

ビジネスでも投資でも、学ぶ人が先に行くことができ、稼ぎ続けることができます。学ばない人は取り残されていきます。

勉強はただではありません。コストがかかります。

コストとは、お金と時間です。お金はもちろん、時間も重要なコストです。

もし1週間のうちの10時間を勉強に使うとして、その10時間を勉強ではなく仕事や商売に使っていれば稼ぐことができたであろうお金は「機会損失」に当たります。成功者は機会損失を払ってでも、勉強を選びます。

私は自分を成功者とは思っていませんが、本を年間最低100冊は読むようにしています。本を読む時間は貴重なので、できるだけ早く読めるようにと速読を勉強しています。

サブスクリプションのオンラインサロンの会費にも毎月7~8万円かけています。これだけで年間100万円になりますが、私立大学の学費よりはずっと安いです。

セミナーへの参加や、個人的に教えを乞うために人を訪ねる旅費などを加えると、倍以上になります。

それだけお金をかけても学ぶことが重要だと考えているので、お金を使いすぎたとは思いませんし、時間がもったいないとも思いません。

あるクライアントの方は、毎年テーマを決めて学びを受けられています。「今年はこれを学ぶ」と決めて、年間数百万円の予算をつくり、プロレベルまで知識とスキルを高める取り組みを何年も継続されています。

その学びをしたほうが、将来稼げるお金が何千万、何億、何十億と変わってくるなら、お金を使うことが惜しいはずはありませんし、むしろ学ばないほうが損でしょう。そんな思考で生きている人と、勉強するためにお金を使うのはもったいないと考えている人では、経済格差が広がっていきます。

しかし、成功者は損得勘定だけで学んでいるわけではありません。

私たちは最後の息を引き取る瞬間に、お金をあの世に持って行くことはできません。子孫にお金を残すことはできても、相続税がこれだけ高い国です。すぐになくなります。

お金を知識に換え、スキルに換え、ノウハウに換え、知性や教養に換える──これらを無形資産と言います。

子供にお金を残すのも悪くありません。しかし、「子供に伝えられること」をよりたくさん持っていることのほうに価値があります。

こうやって、成功者は学びを通して人生の「わらしべ長者」になっていくわけです。

では、具体的にどのように学んでいけばよいのでしょうか?

だれでも、学びのために使えるお金は無制限ではありません。限られたお金を、より価値ある学びに変えていくための考え方をご紹介します。

学びに何百万円もかけることができない場合は、どうしたらよいのでしょうか?

1 学びのための1カ月間の予算を決める
2 1週間で勉強できる時間を決める
3 紙の本を1週間に最低でも1冊読む

♦勉強のための「予算」を決める

まずは、1カ月に5,000円からでもよいので、予算を決めることです。予算を決めることは重要な意思決定でありコミットです。

子供の学費が彼らが将来よりよく生きるための必要な支出であるならば、大人の学費は私たちが後悔せずに死ねるようになるための支出です。

お金を貯めなかったことで後悔の涙を流す人は、それほどいないと思います。でも、勉強しなかったことで大きな悔いを残して死んでいく人は、少なくありません。

勉強したことが役に立つかどうか、それももちろん大切です。何の役にも立たないことのために何十万、何百万もお金をかけるのは浪費かもしれません。しかし勉強で得た知識やスキルよりも、勉強の過程で獲得した人間関係や考え方、またインスピレーションによって大きな投資やビジネスを成功させた人もいます。

♦「勉強する時間」を先に決める

次に、勉強の時間を先に決めておくことが必要です。

「時間ができたら本を読みます」「仕事が落ち着いたら勉強を始めます」と言っている人は、1年後も2年後も勉強はできません。

忙しい人ほど勉強しています。成功している人ほど、勉強に時間を使っています。

成功している人はお金があるから勉強する暇があるんですよ、と言いたくなるかもしれません。いいえ、違います。

お金の価値で測るなら、成功者が勉強することのほうが経済的ハードルが高いはずです。

時給1,000円の人が勉強に10時間使っても、機会損失(働いていれば本来獲得できたはずの利益を失うこと)は1万円だけで済みますが、時給10万円の人が勉強に10時間使ったら、機会損失は100万円になります。

1つのことを極めるために500時間必要だとして、時給1,000円の人が払う代償は50万円の機会損失ですが、時給10万円の人が払う代償は5,000万円の機会損失です。

私たちは勉強のために、学費だけでなく、機会損失も支払っているわけです。収入が高い人のほうが機会損失も大きいので、「勉強しないで仕事をしていたほうが儲かる」という思考になりやすいと思いますが、成功している人はそれでも勉強しようとします。

成功しているから勉強しているのではなく、勉強しているから成功できた、と考えたほうが理にかなっています。

♦先行投資は生き方や行動そのもの

予算をつくることにしても勉強の時間をあらかじめ決めることにしても、共通しているのは「先行投資」であることです。

成功する人は先行投資が生き方そのものになっています。

先行投資ができる人、先行投資の考え方が身についている人が、成功します。

「給料が上がったらまじめに働いてやろう」と考える人は、給料が上がっていくことはありません。給料が上がる前に働く人の給料がその働きの結果として、あるいは信頼を勝ち取って、上がっていくのです。

「親切にしてくれた人にだけ笑顔を返してあげよう」と考えていつもムスっとしている人は、だれからも親しく接してもらえず、損をします。誰に何をしてもらったわけではなくとも自分から笑顔で人に接する人は、人間関係も良好になり、仕事でも経済的にもうまくいくことが多いでしょう。

こんな小さなことでも先行投資です。

投資の世界での最大の先行投資は、やはり「学び」だと思います。

まだ経済的に成功していない段階で、学びに投資することが大事です。「大企業への就職が内定してから大学に行く」などはないのと同じです。

お金ができてから学ぼうと思っていたら、いつまでたっても学ぶチャンスなどやってきません。学ぶためには、お金と時間がかかります。いや、「かかる」のではなくて、「かける」のです。

毎月5万円程度の利益を得るために、毎月1万円を「かける」。毎月10万円程度の利益を得るために、毎月2~3万円を「かける」。1,000万円稼げるようになるために、200万円かける。1億円稼げるようになるために、1,000万円を「かける」。

10年間、投資で利益を獲得し続けられる状態をつくるために、1年間は勉強と練習に時間を「かける」。

将来30年にわたってお金で心配しなくてもいいようになるために、3年間は学びに時間を「かける」。

この考え方が先行投資です。

♦インプットではなくアウトプットのための読書

最後に、紙の本を最低でも1週間に1冊読むことです。

1週間に1冊以上という基準はまず脇に置いておいて、なぜデジタル(キンドルなど)ではなく紙の本なのでしょうか。

読書はインプットするために行っていると思っている人が多いかもしれません。しかし、読書はインプットではなくアウトプットのためにするものです。本をインプットのために読もうとする人は、知らない知識を吸収するために読もうとします。本に書いてある内容を、情報として獲得しようとする行為です。

しかし本の内容を全部インプットする必要はありません。その本に書いてある内容は、95%以上は理解できるものですし(日本語が理解できないなら読めない)、知らない言葉もほとんど出てきません。仮に出てきたとしても、ネットで検索すればわかります。

本の内容を覚えようとして一生懸命読んでも、すでに知っていることばかりだとしたら時間の無駄だと思いませんか?

同じ本を何度も繰り返し読んだという経験はないでしょうか? 映画でも、漫画でも、何度も同じものを楽しむ経験です。すでに知っているものを、繰り返してインプットする必要はありません。それほど好きならとうに記憶に定着していると思います。

新しい情報など何一つないにもかかわらず、繰り返し楽しむことは無意味でしょうか? いいえ、価値のあることです。その価値こそアウトプットです。

本に書いてある新しい情報を吸収するインプットではなく、本を読むことを通して新しいことを自分の中に生み出すこと──これがアウトプット読書の醍醐味です。

本を読みながら、作者の意図や思想に思いをはせ、作者とのぶつかり合いにより新しい考えや行動の原動力を生み出していくのです。これがアウトプットです。だからこそデジタルではなく紙がよいのです。

あるときは、本の内容は忘れても、ページを触った感覚や付箋を挟んだ感覚、ページの上下左右どの位置に書いてあったかの記憶などが、身体感覚として心に刻まれます。

本の内容には上の空で考えごとをしているときに、新しい投資やビジネスのアイデアが生まれることもあります。この場合本は役に立っていないのでしょうか? 否、本がこの重要なきっかけをつくってくれているのです。

1週間に1冊読めば、毎週新たなアウトプットができます。

本の内容が素晴らしいとか勉強になったとか、それは極論すれば何も関係ありません(もちろん、つまらない本が続くと嫌になりますが)。

素晴らしい本に出会えることは幸運なことです。いつもそんな幸運が続くわけではありません。10冊に1冊かもしれませんし、100冊に1冊かもしれません。

たとえ100冊に1冊だとしても、アウトプットを目的に読書をすれば、99冊が時間の無駄だったということにはなりません。

正解は与えられるものでもなければ見つけるものでもなく、自分でつくっていくものです。「この本はよかった」「この本は悪かった」などと本のせいにするのではなく、その本を読んだことが正解になるように行動する。つまりアウトプットすれば勝ちです。

投資で失敗する人 成功する人――あなたの人生を貧しくする投資のウラ側
鹿子木 健(かなこぎ・けん)
株式会社メデュ代表取締役。1974年熊本県生まれ。投資と金融を12年滞在した中国で事業の傍ら学んだ。個人・法人顧客の資産防衛を主軸に活動しているが、専門分野は中国経済、宗教哲学、成人教育、デリバティブ。障がい児・者支援福祉事業にも携わる。現在展開している事業は外国為替の投資助言、法人向けコンサルティング、投資家教育の一環としての鹿子木相場塾など。
登録番号は〔投資助言・代理業 近畿財務局長(金商)第409号〕。

著書に「初心者からプロまで一生使える FXチャート分析の教科書」(総合法令出版)、「常勝FX 99%の人が実践していない勝ちパターンのつくり方」(ぱる出版)など9冊がある。

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