この記事は2022年10月21日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「東亜ディーケーケー 【スタンダード・6848】水質計・PM2.5測定機器で国内トップクラス 半導体市場開拓と生産体制拡充で売上200億円へ」を一部編集し、転載したものです。
東亜ディーケーケーは、環境と医療を柱に事業展開する計測機器メーカー。新型コロナの流行でエッセンシャルワーカーに注目が集まったように、同社の計測機器もまた、安心・安全な暮らしを守るために欠かせない。
2022年3月期は営業利益率11%以上を維持しながら、増収増益を達成。機器販売とアフターサービスの両輪で安定した業績を堅持しつつ、今年度は売上高200億円へ向けた生産体制を整えている。
▼高橋 俊夫社長
少量多品種の豊富な製品群 安全・安心な水道水を供給
同社は、水・大気・医療・ガスの4領域に特化した分析機器の開発・製造・販売・アフターサービスを行っている。製品は、水質計や大気測定装置等の「環境・プロセス分析機器」、ラボ・ポータブル用の「科学分析機器」、透析医療を支える「医療関連機器」、産業用ガス検知警報器の4つに分類される。
水分野で国内トップクラスのシェアを占めるのが、水の酸・アルカリ濃度を測るpH計だ。顧客の細やかな要望に対応できる、少量多品種の生産体制を強みに、pH計だけでも豊富な製品群を取り揃える。導入先は、浄水場、下水処理場などの官公庁から、発電所、食品・化学等の各種工場などの民間企業まで多業種に渡る。用途も、研究開発、品質管理、環境保全(水や大気の汚染監視)など様々だ。
清掃工場の排水水質測定器でも国内シェアの半分以上を占める。また水質7項目を測定できる「水道水用水質自動測定装置」も主力の1つ。安全・安心な水道水を供給するため、公園や家庭の近くなど全国1,000カ所以上に同社の製品が設置されている。さらに医療分野では、透析用薬剤粉末の溶解装置が国内シェア7割を占める。
「当社の計測器は普段目にすることはありませんが、マーケットシェアの高い製品が沢山あります。国内に設置されたPM2.5測定装置は約6割のシェアを持っています。天気予報で出るPM2.5の数値を見ながら、変な数字が出たら機器の故障ではないかとドキッとします」(高橋俊夫社長)
機器販売と保守で安定 置き換え需要で好循環
1944年、前身の東亜電波工業が、翌年に電気化学計器(DKK)が設立。2000年に両社が合併し、現在の東亜ディーケーケーが誕生した。2005年には米国の水質分析計メーカー、ハック・カンパニーと業務資本提携を締結。アジアを中心に海外市場も開拓している。
2022年3月期の業績は、売上高164億2,400万円、営業利益19億900万円。計測機器事業が売上高の98.4%を占め、その内訳は「装置・機器販売」が52.2%、「保守、部品・補用品販売」のアフタービジネスが46.2%。この両輪のビジネスモデルによって安定した業績を堅持している。
機器が最初に導入される時は他社と競合するが、一旦導入すれば保守サービスと消耗品販売で、安定した売上・利益を確保できる。基本リースで購入された機器は、約7年毎に定期的な置き換え需要も発生する。
「お客様の満足を得ていれば、次の製品のリプレースも獲得しやすい。大抵はメーカー指定で当社にご注文いただけますので良い循環を作っています」(同氏)
成長路線へ方向転換 中国の公害問題で特需
2000年の合併以来、売上は145億円程で長く安定的に推移してきた。成長路線へと方向転換したのが、高橋社長が社長就任した2017年頃だ。
「先代の社長も財務体質を強化し、利益率が上がり基盤が確立できました。そこで思い切って売上を伸ばすため、安定から成長へと舵を切りました」(同氏)
当時、中国では公害が社会問題になり政府を挙げての対策が始まっていた。その流れに乗り同社も中国市場での販売に注力。2019年には中国の排水規制による排水モニタリング装置の特需が生まれ、過去最高業績の売上高175億円、営業利益19億円を記録した。
「日本で年間約150台売れる製品が、当時中国で月200台売れました。しかし1年で特需は終わると見ていたため設備投資はしませんでした。同じ頃、ニプロと透析用薬剤粉末の溶解装置で契約して、生産を倍増しないといけない時だったので、医療用の新生産棟を建設しました。これにより溶解装置を生産していた場所が空き、特需分の装置の生産に充てることができました」(同氏)
国内市場を新規開拓 営業利益率10%保持
新中期経営計画(2022~2024年度)では、2024年度の売上高188億5,000万円、営業利益19億円を指標にしている。計画達成のためには国内で新たな市場を開拓していく。
期待される分野の1つが半導体だ。国内の半導体産業は、海外企業に買収されるなどで撤退・縮小傾向だったが、現在は地政学的リスクの高まりで、生産体制の国内回帰が進む。そうした状況を鑑みて、半導体の製造過程で使われる純水装置メーカー向けに拡販をしていく。
また脱炭素化に向かうエネルギー分野においては、火力発電所やバイオマス発電設備向けにボイラー水管理装置などを収めており、今後のアンモニアや水素利用に向けたシステム転換による新たな製品需要も捉えていく。そのため開発投資を大幅に増やす計画だ。
中計を達成した次のステージは、売上高200億円を目指す。200億円規模の生産体制を整えるため、現在埼玉県狭山市に新生産棟を建設中。新製品の開発から量産化へのスピードアップを実現するマザー機能を確立する。また業務一元化のための新システムやDX化で自動操業のための設備導入も進めている。
「コロナで経済が停滞しても、当社の売上は落ちませんでした。生活する上で必要な製品だと我々も改めて認識しました。この2年間は巣ごもり状態でしたが、今年度からは10%の利益を残しながら積極的に活動します。ぜひ個人投資家の方にも当社のことを知ってもらいたい」(同氏)
将来的には、水質監視のソリューション提案などにも着手していく予定だ。
▼現場設置型pH計
▼水道水用水質自動測定装置
▼PM2.5測定装置
▼埼玉県狭山市に建設中の新生産棟のパース
2022年3月期 連結業績
売上高 | 164億2,400万円 | 前期比 2.7%増 |
---|---|---|
営業利益 | 19億900万円 | 同 3.1%増 |
経常利益 | 19億6,800万円 | 同 3.2%増 |
当期純利益 | 13億4,700万円 | 同 2.0%減 |
2023年3月期 連結業績予想
売上高 | 173億円 | 前期比 5.3%増 |
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営業利益 | 17億4,000万円 | 同 8.9%減 |
経常利益 | 18億円 | 同 8.6%減 |
当期純利益 | 12億4,000万円 | 同 7.9%減 |
*株主手帳2022年11月号発売日時点