ミレニアル世代の富裕層(*1)を中心に、若い世代間でオルタナティブ投資への関心が強まっている。実際、ミレニアル世代の富裕層投資家のうち、80%はなんらかのオルタナティブ資産へ投資している、あるいは投資を検討していることが、米大手銀行「バンク・オブ・アメリカ(BofA)」の最新レポート『2022年バンク・オブ・アメリカ・プライベート・バンク 米富裕層に関する調査(2022 Bank of America Private BankStudy of Wealthy Americans 』で明らかになった。
若年の富裕層投資家は、どのようなオルタナティブ商品に投資しているのだろうか。この新たなトレンドは、今後どのような影響を投資市場に与えるのだろうか。
*1:1981年~1996年に生まれた世代
「7年以内に機関投資家がデジタル資産の主流投資家」に?
ミレニアル世代投資家の最大の関心は「暗号資産」
この調査は300万ドル(約4億4,316万円)以上の投資可能資産を保有する21歳以上の富裕層1,052人を対象に、各世代の投資動向をまとめたもの。世代間の“投資に対する温度差“を浮き彫りにする興味深い調査結果が報告されている。
従来の投資アドバイスの1つに、「若い時こそハイリスク、ハイリターンを狙え」というものがある。これは「若い人ほどリスクをとりやすい」という考えに起因するもので、株式投資はハイリスク、ハイリターンを狙える投資商品の代表格とされてきた。
ところが、このような風潮に大きな変化の兆しが見えている。若年層の投資家の関心が、伝統的な資産からオルタナティブ資産へ移行しているのだ。
同調査によると、年配層が米株式(41%)、不動産(31%)、新興株(26%)に“最大の成長の機会“を見込んでいるのに対し、ミレニアル世代は仮想通貨及びデジタル資産(29%)、不動産(28%)、企業への直接投資(25%)、プライベート・エクイティ(25%)などのオルタナティブ資産に期待を寄せている。ポートフォリオに株式が占める割合は4分の1と、年配層の半分以下だ。
ミレニアル世代の47%がボラティリティの激しい仮想通貨に投資している理由は、“仮想通貨及びデジタル資産の長期的な成長の可能性“に対する期待感である。29%が暗号資産について、“富を生み出すための有力なチャンス“と見なしている。対照的に、暗号資産に期待を寄せている年配層はわずか7%に留まった。
「株式や債券といった伝統的な金融資産に投資するだけでは、平均以上のリターンを期待できない」と考えるミレニアル世代は75%に及ぶ。このような見解は、不安定な動きが続く株式市場と債券市場に対する警戒心に起因するものかと推測される。
その一方で、ミレニアル世代の関心は、伝統的なオルタナティブ資産の1つであるアートにも向けられている。アート資産の所有率は66%と年配層のおよそ2.9倍にのぼり、95%が「今後、価値のあるアート資産を購入する可能性がある」と答えた。
意外なことに、アートに投資する最大の理由は「美的価値を楽しむため(63%)」であり、「時間とともに価値の上昇を期待できる資産だから(47%)」「安全資産として(21%)」など、投資を目的とする回答は半数以下だった。