この記事は、2022年11月7日に三菱UFJ国際投信で公開された投資環境ウィークリーを一部編集し、転載したものです。全体をご覧になりたい方は、こちらをご覧ください。加えて、デイリーレポートについては、mattoco lifeをご覧ください。

企業業績
(画像=Have a nice day/stock.adobe.com)

目次

  1. 鉱工業生産指数は4カ月ぶりに低下
  2. 消費は緩やかな回復、物価高が抑制要因
  3. 円安を背景に企業業績は回復基調

鉱工業生産指数は4カ月ぶりに低下

2022年9月の鉱工業生産は前月比▲1.6%と4カ月ぶりに低下しました(図1)。自動車工業の生産が落ち込むなど好調だった2022年8月の反動がみられました。

生産は緩やかな回復基調
(画像=三菱UFJ国際投信)

四半期でみると2022年7~9月期は前期比+5.9%(2022年4~6月期は同▲2.7%)と高い伸びとなり、中国・上海の都市封鎖解除の影響や供給制約緩和により回復しています。製造工業生産予測調査によると、2022年10月は前月比▲0.4%(計画のバイアスを補正した試算値は同▲3.7%)、2022年11月は同+0.8%と見込まれています。

先行きは供給制約の緩和を背景に正常化が進む一方で、欧米の景気減速による外需の縮小が生産を下押しするとみています。生産は緩やかな上昇にとどまり、2022年10~12月期の伸び率は鈍化する見通しです。

消費は緩やかな回復、物価高が抑制要因

2022年9月の小売販売額は前月比+1.1%と3カ月連続で増加しました。業種別にみると自動車小売業や家庭用機械器具小売業の増加寄与が大きく、半導体などの部品不足が一部緩和された事が反映されたと考えられます。

他方、織物・衣服・身の回り品小売業は減少が続いており、物価上昇の影響が懸念されます。2022年10月の消費者態度指数は2カ月連続で悪化し、2021年1月以来の低水準となっています(図2)。

物価高が響き消費者マインドは悪化
(画像=三菱UFJ国際投信)

構成項目では「暮らし向き」の悪化が目立ちます。2022年10月に食料をはじめ多くの品目で値上げが実施された事が影響していると考えられます。1年後の物価見通しは物価上昇を見込む回答が依然として高水準であり、期待インフレ率の高止まりを示しています。

全国旅行支援の実施もあり個人消費は緩やかな回復が続くとみられますが、引き続き物価上昇が家計の購買意欲を低下させる可能性には注意が必要と言えます。

円安を背景に企業業績は回復基調

2022年11月4日までに東証株価指数(TOPIX)対象企業の4割強が2022年7~9月期決算を発表し、売上高は前年比+21.7%、1株当たり利益は同+2.0%の増収増益となっています(Bloomberg集計、図3)。

三菱UFJ国際投信
(画像=三菱UFJ国際投信)

セクター別では工業、テクノロジー、原材料の増益、一般消費財、通信、金融の減益が目立ちます。実績が事前予想を上回った会社割合は売上高が6割強、1株当たり利益が5割強でした。

円安やコスト上昇の価格転嫁が寄与したとみられ、今決算で為替前提を従来よりも円安方向に設定する事で、2022年度予想は前回決算時に比べ上方修正が見込まれます。

TOPIXは2022年10月に月間で+5.1%上昇、先週も週間で+0.9%上昇と堅調を維持しており、年度末に向けて業績予想改善が株価の下支え要因になるとみています。

三菱UFJ国際投信株式会社
戦略運用部 経済調査室 シニアエコノミスト
向吉 善秀