伝統的な金融機関を介さず、貸し手(投資家)が借り手(個人・中小企業)にプラットフォームを介して融資を行う「P2Pレンディング(*1)」。欧米などに比べると普及が進んでいない日本においては、「高リターン/高リスク」というイメージをもっている投資家が多いのではないだろうか。
ところが、海外においては「今後5年間で市場規模が73兆円を超える」と予想されるなど、需要が再燃しており、次なるオルタナティブ投資対象として注目が高まっている。
*「ソーシャル・レンディング」あるいは、投資家の視点から「P2P Investment(投資)」と呼ばれることもある。
2027年までに市場規模が約5倍に?
P2Pレンディングは、資金を必要としている個人/企業と資金を提供してリターン(利息)を得たい個人/機関投資家を結びつける融資マッチング・プラットフォームだ。P2Pレンディングが英国で発祥した2005年当初、新たな融資モデルとして一躍脚光を浴び、瞬く間に世界中に広がった。
P2Pレンディングのメリットは、借り手にとっては、金融機関から融資を受けるより簡単、迅速、低金利でお金を借りることができること、貸し手にとっては高リターンを狙える点だ。そのリターンは2桁のものが多く、中には30%を超えるものもある。
その反面、貸し倒れのリスクが高いというデメリットもある。実際、2016年には、米P2P大手「Lending Club(レンディング・クラブ)」が巨額のローン債権を不正に投資ファンドに販売するという不祥事が発覚したほか、2018年には市場規模1,950億ドル(約27兆2,065億円)のP2P金融大国に急成長した中国において、P2P金融業者の破綻や資金凍結が相次いだ。
このような背景から投資家間でP2Pレンディングを警戒する動きが広がったところに、新型コロナウィルス禍が拍車をかけた。パンデミック初期には先行きの不透明さを懸念した投資家の資金引き揚げが相次ぎ、多くのP2Pレンディング企業が苦境に立たされた。
ところが2020年後半には、既存の金融機関で融資を受けられない中小企業がP2Pレンディングに殺到するなど、風向きが一転。アイルランドのダブリンに拠点を置く市場調査企業「Research and Markets(リサーチ・アンド・マーケッツ)」の調査報告書(" P2P Lending Market: Global Industry Trends, Share, Size, Growth, Opportunity and Forecast 2022-2027") によると、世界のP2P レンディング市場は2021年に1,129億ドル(約15兆7562億円)に達した。今後5年間に渡り、CAGR(年平均成長率)28.1%のペースで成長を続け、2027年までにおよそ5倍の5,253億ドル(約73兆3,018億円)規模に拡大すると予想されている。