この記事は2022年11月14日に「月刊暗号資産」で公開された「FTX、破産申請後に暗号資産の大規模不正流出が判明」を一部編集し、転載したものです。
破産申請を行った大手暗号資産(仮想通貨)取引所FTXにおいて、暗号資産の不正流出が明らかになった。
この不正流出はFTXが米連邦破産法11条(Chapter11)に基づく申請を行った後に発生。12日にはFTXが公式テレグラムなどでハッキングによる不正流出を報告している。すでに公式サイトやFTXが提供するアプリがマルウェア感染している可能性もあることから、ユーザーに対しアクセスしないよう呼びかけを行なっている。
オンチェーンデータを確認すると、FTX USやFTXグローバルのウォレットから複数の暗号資産が流出しており、中にはDEX(分散型取引所)等に送金されているものもある。
流出した暗号資産はイーサリアム(ETH)やソラナ(SOL)のほか、バイナンススマートチェーン(BSC)、アバランチチェーン上で発行されたトークンだという。テザー(USDT)をダイ(DAI)、リドステイクイーサ(stETH)からイーサリアムに交換する動きなどが確認されている。テザーを発行する米テザー社はこれを受け、すでに不正流出に関連するテザーをブラックリスト化した。
総額は6億6300万ドル(約921億円)以上で、ブロックチェーン分析企業Ellipticによれば、そのうち4億7,700万ドル(約663億円)相当はすでに盗まれた可能性があるという。一方で、残りの資産はFTXによって新規アドレスに移されたものである可能性があると指摘した。実際、FTX USの法務担当であるライン・ミラー(Ryne Miller)氏は12日、不正流出を受けて一部資産をコールドウォレットへ移動させたと発表している。
この不正流出はFTXが破産申請を行った同日に発生したことから、一部では内部関係者による犯行ではないかとの指摘もある。
なお、FTXは11日にバハマ在住ユーザーを優先に出金対応を開始した。これに伴い、バハマユーザーへNFT(非代替性トークン)等を手数料として支払い、自身の代わりに資金の引き出しを求める行為も横行しているようだ。
FTXはバハマユーザーの出金を再開した理由について、「バハマ本社の規制と規制当局の指示により、引き出しを開始した」述べているが、バハマ証券取引委員会はこれを否定。バハマ在住者の出金を優先するよう指示・提案したことはないと声明を出している。
FTXの破綻による影響は依然として収集の目処が立っておらず、新たな事実が発生すれば市場にも大きな打撃を与える可能性が考えられる。
一連の騒動を巡っては、米国をはじめ各国の規制当局が懸念を示し、声明を発表していることから、規制面の動向に関しても今後注視する必要があるだろう。(提供:月刊暗号資産)