ESG経営の成功事例

ESG経営は2015年頃から広まっているため、すでにさまざまな成功事例がある。ここからは、中小企業が参考にしたい2つの事例を紹介しよう。

【事例1】サステナビリティへの5つの取り組み/森永製菓

大手菓子メーカーの『森永製菓』は、サステナビリティへの取り組みとして以下の施策に取り組んでいる。

○森永製菓のESG経営
・世界の人々のすこやかな生活への貢献(健康につながる商品の提供など)
・多様な人材の活躍(個を活かす職場づくり)
・持続可能なバリューチェーンの実現(フードロス削減推進など)
・地球環境の保全(水資源の有効活用など)
・経営基盤の強化(DX化や情報開示など)

また、公式サイト上でESGデータを公開している点も、中小企業が参考にしたいポイントだ。目標値や達成率などの推移を公開すれば、外部から見ても活動実績が分かりやすいため、透明性が高い印象を与えられる。

【事例2】生活者の目線に立った施策/花王

消費財化学メーカーである『花王』は、生活者の目線に立ったESG経営を意識している。具体的には、以下の3つを主軸とした戦略を策定し、製品のコンパクト化や「ESG よきモノづくり」に取り組んでいる。

○花王のESG戦略(Kirei Lifestyle Plan)の主軸
・快適な暮らしを自分らしく送るために
・思いやりのある選択を社会のために
・よりすこやかな地球のために

また、NGO・NPO団体や地域社会、アカデミア、行政・自治体などと連携している点も参考になるポイントだろう。大規模なプロジェクトは企業単体では難しいため、花王は多様なパートナーと協働する形で施策を進めている。

本業と関わりのあるパートナー企業を見つければ、中小企業も成長を目指しながらESG経営に取り組めるだろう。

ESG経営のよくある質問集

ここからは、ESG経営の基礎知識をQ&A形式で解説する。本記事のおさらいも含めて、経営者や担当者が気になるポイントを確認していこう。

Q1.ESG経営はなぜ必要?

ESG経営は、企業が長期的な成長を目指す上で欠かせない戦略である。

ESGの取り組みはSDGsの達成度に関わるため、政府・企業の動向を注視するステークホルダーが多い。近年ではESGの観点から投資先を選ぶ株主も出てきており、「ESG投資」という言葉も世間に広まりつつある。

つまり、ESG経営は資金調達やイメージアップにつながるので、成長を目指す企業は積極的に導入を検討したい。

Q2.投資家はなぜESG投資をする?

ESG投資の市場は拡大しており、2018年にはすでに30兆ドルを超えている。今後も市場拡大が予想されているため、早めに投資をすると先行者利益を得られる可能性がある。

そのほか、中長期的にはリスクを抑えやすい点や、社会貢献につながる点もESG投資のメリットである。

Q3.ESG経営の課題や問題点は?

ESG経営は長期目標が軸となるため、短期的なリターンは望みにくい。資金や体力が限られた中小企業にとっては、この点がESG経営推進の障害となっている。

また、社会への貢献と企業利益の両立が難しい点も、経営者が注意したい課題である。利益だけではなく、ステークホルダーや社会を意識したプランが必要になるため、ESG経営は正しい方向性を見極めにくい。

Q4.ESG経営の具体例は?

ESG経営の例としては、以下のものが挙げられる。

・安全基準の明確化(商品やサービス)
・人権を守るための製造工程の見直し
・女性や外国人、シニア人材の積極的な雇用
・労働条件の明確化や透明化
・地域活性化につながる事業や資金援助

欧米のように積極的な施策に取り組む地域も多いため、海外事例にも目を通しておきたい。

Q5.ESG評価機関の役割とは?

ESG評価機関は、企業の「環境・社会・ガバナンス」に関する取り組みをスコア化し、機関投資家に情報提供をしている。市場拡大には欠かせない存在であり、一般投資家向けに情報公開をしている機関も多い。

ただし、機関によって基準や比較項目が異なるため、評価元による違いは十分に理解しておく必要がある。