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一度に1億ドル(約137億7,170万円)以上の資金を調達するメガラウンドが続出した2021年から一転、2022年のベンチャー・キャピタル(Venture Capital、以下VC)(*1)市場は世界的なインフレ圧力や金利上昇、景気後退への懸念を背景に大きな転換期を迎えている。


*1:将来有望なスタートアップやベンチャー企業などの未上場企業に出資を行う投資企業。


投資の縮小にともない、企業価値が10億ドルを超えるユニコーン企業を取り巻く環境が急速に冷え込んでいる現在、次なるユニコーンに求められている要素とは何なのか。

投資家の関心はクリーンエネルギー分野へ

VC市場の低迷は世界的な現象だが、世界一のユニコーン大国である米国においては、その影響がより顕著に現れている。

「Ernst & Young(アーンスト・アンド・ヤング )」がベンチャー企業データベース「Crunchbase(クランチベース)」のデータを分析したところ、米国における2022年第3四半期のVC投資は総額370億ドル(約5兆940億円)と、前四半期から37%減少した。

投資縮小の直接的要因となったのはメガラウンドの減少だ。このような傾向は2021年に絶好調だった「IT/ビジネス」「金融サービス」セクターで顕著で、それぞれ80%、60%以上落ち込んだ。

対照的に、エネルギーセクターや公益事業セクターへの投資は活発化している。特に、投資家が期待感を高めているのは気候変動の緩和やエネルギー価格の高騰のソリューションとなるテクノロジーで、その代表格であるクリーンエネルギー関連セクターへの投資が勢いを増した。実際、第3四半期のメガラウンドの上位5件中2件は電気自動車の充電インフラ企業だったほか、複数のクリーンエネルギー関連企業が上位入りした。

このような変化を「VC市場の長期的な成長に必要な調節局面」とポジティブに受けとめる声がある一方で、投資家にとって重要な要素であるエグジット・バリュー(*2)に大きな影響を及ぼしているのも事実だ。


*2:将来的な株式売却により、投資資金の回収率や利益率を予測すること。


金融データベース「Pitchbook(ピッチブック)」によると、第1~3四半期のエグジット・バリューは、前年同期比の約11%減の140億ドル(約1兆9,288億円)。上場を果たした企業数は303件から59件へ落ち込んだ。

メガラウンドに成功したスタートアップ3社

投資家が真の価値を創造できるスタートアップを吟味する中、近年VC市場に旋風を巻き起こしていたユニコーン現象にはいったん終止符が打たれ、市場淘汰がますます進むことが予測される。

逆風にさらされながらも大型資金の調達に成功した以下のようなスタートアップの事例から、次なるユニコーン企業に必要な要素が見えてくるかもしれない。