富裕層の定義は明確には決まっていないが、野村総合研究所の調査では「純金融資産保有額が1億円以上5億円未満」の世帯を富裕層としている。純金融資産とは、預貯金や株式、債券などの有価証券、生命保険などの金融資産から負債を差し引いた資産のことで、不動産や貴金属のような実物資産は含まれない。

金融資産が1億円以上となると、その資産をどのように運用すればいいのかは難しい判断になる。最も悩むのは、資産運用を自分で行うか、プロに相談するかという問題だろう。今回は、大きな資産を保有する富裕層が、資産運用をプロに相談すべき理由を紹介する。

1. 冷静な投資判断の助けになる

富裕層が資産運用をプロに相談するべき理由
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投資において最も怖いのは、相場が急落した時だろう。2000年に入ってからも、日本ではITバブルの崩壊やリーマンショック、東日本大震災による株価下落、コロナショックなど、日経平均株価の急激な下落を何度も経験している。

相場が急落すると、多くの人は相場の先行きが気になり、正常な判断ができなくなる。投資を始めた時にきちんとリスク許容度を把握し、損失が出るリスクを納得して受け入れたとしても、実際に自分の資産が大幅に減っているのを目の当たりにすると、冷静でいることは難しい。

投資経験が豊富な人でさえ、相場急落時には焦って資産を売却してしまうことがあるのだから、投資経験が短い人ならば、なおのことパニック状態になってしまうのも仕方がない。

このような状況になると、多くの人は、なんとか損失を最小限に抑えたい、あわよくば損失を取り返したいと考えてしまう。しかし、損失が出ている時に最も大切なことは、冷静になって改めて投資判断を行うことである。

このような時、プロと相談しながら資産運用を行っていると、冷静に投資判断を行える可能性が高まる。これにはいくつか理由がある。

1つ目は、長期的な目標を共有している点だ。

お金の専門家が資産運用のアドバイスをする時に、最も重視するのは「目標の設定」である。人生のゴールの明確化ともいえる。どのような人生が理想といえるのかは、人それぞれで異なる。目標が決まってはじめて、いつまでにいくら必要なのかという具体的な資産運用の方針が決まるのである。

たとえば、老後のために20年後に5,000万円貯めることを目標としている場合、短期的な相場の上下に一喜一憂することは仕方ないにしても、そのことが重要でないことはわかるはずだ。あくまで目標は20年後の結果である。よい専門家は顧客の長期的な目標の達成に常にフォーカスしているため、こうした本当の目標を思い出すのを助けてくれる。

逆に、個人で投資をしている人の中には投資のゴールをとくに設定せず「預貯金の金利に不満があるから、なんとなく投資で増やしたい」と考える人もいる。このように目標の設定が漠然としていると、相場の下落などのニュースに影響を受けやすく、慌てて売却してしまうことが多い。また、いくら運用で資産が増えても、漠然とした不安は消えないままだ。

冷静な投資判断ができる理由の2つ目は、金融商品の選定理由をいつでも確認できる点である。

個人で投資をする場合でも、金融商品を買う時はいろいろと調べるだろうが、相場下落時には「自分の買った金融商品は間違いだったのではないか」と考えて売却してしまうことがある。その点、購入の際に資産アドバイザーに相談をしていれば、売却の前に改めて購入時の見積もりと現在の値動きを比較検討できる。

もちろん、プロの専門家が常に正しい判断をするわけではない。しかし、少なくとも、なぜその運用方法を採用しているのか、そしてなぜその金融商品を選んだのかに対しては、必ず理由を示してくれるはずだ。

自分の投資が失敗だったのではないかと考えながら判断を行うのと、専門家のアドバイスを考慮しながら今後の投資を継続するかしないかを判断するのでは、投資判断の質に大きな差が出ることはわかるだろう。専門家の意見を再確認し、下落は一時的なものだと納得できれば、引き続き投資を続けることができる。逆に、理由に納得できなければ、新たな運用を考え直せばよい。

冷静な投資判断ができる3つ目の理由は、個人的な思い込みによる損失を回避できる点である。

たとえば、相場が急激に下落したとしても、積立方式で投資を行なっている場合、一時的な値下がりは特に問題ではなく、むしろプラスに働くことがある。というのも、毎月同じ金額で投資を行う積立投資では、対象の金融商品の単価が下がれば下がるほど、一度に購入できる口数が増えるため、長期的に価格が元に戻れば大きな利益につながるからである。これは「ドル・コスト平均法」と呼ばれる有名な投資手法だ。

しかし、実際には積立投資をしていても、相場が下がった時に慌てて売却してしまう人はいる。これは上記の積立投資の原理を知らずに投資をしているからだ。積立投資では相場が下落しても慌てて売ってはいけない、ということは知っていても、「なぜ慌てて売ってはいけないのか」を詳しく知らなければ、感情をコントロールして売りを我慢することは難しい。

投資の原理を説明できる専門家と相談できる環境にあれば、「損失が出ている=危険な状態」という思い込みで慌てて売却することを防げるはずだ。

2. 本業に集中できる

適切な投資判断には、さまざまな知識と多くの投資経験が必要だ。稀にたまたま買った銘柄が値上がりし、利益が出ることはあるかもしれないが、それは投資というより投機に近いと考えるべきである。

投資の中で最も一般的な対象は株式投資だが、株式という1つの資産に投資するにしても、必要となる知識は多い。将来的に有望な企業の分析や、どの企業が現在割安かなど、銘柄を選ぶ際の知識はもちろん、リスクとリターンの関係や分散投資などの基本的な投資理論も知っておかなければならない。

また、実際に商品を売買する時のルールも、投資未経験であれば詳しく知らないことが多いだろう。購入方法や購入単位、そして手数料の理解、売却の条件など、知らないと思わぬところで損失を出してしまうことになる。さらに、投資と切っても切り離せないのが税金の知識である。どのような場合に課税されるのか、そして税率はどれくらいなのかを知らないまま投資をすることは危険である。

このように、投資を始めるには多方面の知識が必要になる。そして、こうした一般的な知識を得た後も、実際に投資を行うには日々の情報収集が必要になるのだ。

本業がある現役世代にとって、これらの知識を1から身につけるには、相応の時間と労力が必要になる。特に富裕層になれば、普段の仕事は多忙だろうし、時間当たりの報酬も高いことが多い。したがって、仕事の時間を割いて投資の勉強を行うことが、果たして効率的な選択になるのかも充分に検討しなければならない。

投資判断を専門家に任せることで、投資に必要な知識を得る時間を大幅に削減できることは、富裕層にとっては大きなメリットといえる。いわば、資産運用をアウトソーシングするのである。

もちろん、専門家に任せるといっても、自身でまったく勉強しなくていいわけではない。専門知識があればあるほど、専門家とより深い議論ができるのはどの業界でも同じである。

3. 多様な選択肢を検討できる

投資には「1つのカゴに卵を盛るな」という格言がある。資金を1つのカゴ(資産)に集中した場合、そのカゴがひっくり返るとすべての卵が割れてしまうことを例に、分散投資の必要性を説いた言葉である。資金を複数の種類の資産に分散して投資することで、リスクを分散し、リターンの安定度を増す効果が期待できる。

個人で投資をする場合、投資信託だけ、あるいは個別株式だけというように、少数の資産に偏りがちである。これは幅広い資産クラスに対して理解を深める時間が足りないため、仕方がないことなのかもしれない。

IFAやFPといったお金の専門家が取り扱う金融商品は、契約している証券会社や保険会社の取扱商品に準じるため、基本的には株式や債券、投資信託、ETF、そして保険などである。選択肢自体は個人で購入できるものと大差はないが、それぞれの資産クラスの特性を理解している専門家であれば、各商品のメリット・デメリットを伝え、資産運用に関してより柔軟な選択肢を提案してくれるはずである。

また、一定以上の資産がある富裕層であれば、「ラップサービス」も利用できる。ラップサービスとは、利用者が金融機関と投資一任契約を結ぶサービスである。専門家が利用者から運用方針をヒアリングし、その結果からそれぞれに合った適切な資産配分の提案を行う。運用期間中の資産配分の見直しなど、メンテナンスも金融機関が行うため、投資に対する時間と労力を大幅に少なくすることができるのだ。

まとめ:自分に合った専門家を見つけるには

一定以上の資産を持つ富裕層が、資産運用を専門家に任せるべき理由を紹介した。投資では常に冷静に投資判断を行うべきだが、特にそれは相場の急落時に重要になる。また、多忙な富裕層では、投資の一般的知識の取得と日々の情報収集に時間をかけるより、相談料を払っても資産運用を専門家にアウトソーシングした方が効率的ともいえる。これに関連するが、さまざまな選択肢から適切な資産配分を考える方が、分散投資の効果も高い。

ただし、専門家に任せたいと思っても、世の中には銀行や証券会社の相談員やIFA、ファイナンシャル・プランナー、保険の営業マンなど、お金の専門家の肩書を持つ人は数多い。こうした数多くの専門家の中から、自分に合ったアドバイザーを見つけるために、「ZUU Advisors」を利用してみるのもおすすめだ。このサービスでは、匿名でウェブフォームの質問に答えると、無料で複数のアドバイザーから提案を受けることができる。顧客は気に入ったアドバイザーそれぞれと面談を行うことで、自分が納得できるアドバイザーを選ぶことができる。

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文・松岡紀史(ファイナンシャル・プランナー、ライツワードFP事務所