この記事は2022年11月25日に「月刊暗号資産」で公開された「ロシア政府、国営暗号資産取引所を設立か」を一部編集し、転載したものです。
ロシア政府が国会議会下院の主導のもと、財務省とロシア中央銀行の協力を得て、国営暗号資産(仮想通貨)取引所を立ち上げる準備を進めていることがわかった。23日、現地メディア・Vedomosti紙が報じた。
ロシア議会下院は同国で暗号資産取引所を設立するため、「デジタル金融資産」に関する法改正について議論し、変更に着手しているという。修正案はまずロシア政府およびロシア中央銀行に提出されるようだ。
報道によると、経済政策委員会のセルゲイ・アルトゥホフ(Sergei Altukhov)氏は「暗号資産の存在を否定しても無意味なものだが、問題は政府の規制外で大量に流通していることだ。流通額は数十億ルーブルを上回り、国家予算で数十億ルーブルの税収が失われている」と指摘した。その上で、「暗号資産の合法化の条件を策定し、“ゲームのルール調整”のように規制する必要がある。ロシア中央銀行と政府の立場は矛盾していない。現在、議員たちが暗号資産と規制当局の狭間にある障壁について議論している」と語ったという。
今年7月、アナトリー・アクサコフ(Anatoly Aksakov)下院財政委員長はモスクワ証券取引所内に国営の暗号資産取引所を設立することを提案した。これに対応する形で、モスクワ証券取引所は9月、国内でのデジタル資産の取引を許可する法案を起草した。
ウクライナの侵攻が始まって以来、ロシアは欧米諸国より経済制裁を受けている。その制裁回避の手段として、暗号資産などのデジタル資産の需要が高まっていると指摘されている。
また、アクサコフ氏は米国中心の国際金融システムを弱める目的で、ロシア政府が中央銀行デジタル通貨(CBDC)である「デジタルルーブル」を来年早々に発行し、中国との二国間決済に利用する計画も明らかにしている。アクサコフ氏の発表の前には、アレクセイ・モイセイエフ(Alexey Moiseyev)財務副大臣が友好国との国際決済でステーブルコインを利用する考えを示していた。
アクサコフ氏が9月に議会紙の取材で語ったところによると、「西側諸国が制裁を発動し、国際決済を含めた銀行取引に問題が生じている現在、デジタル資産やデジタルルーブル、暗号資産に関する話題が国内で活性化している。非友好国がコントロールするシステムを迂回して金融取引を行う意味でデジタル化は重要だ」と指摘したという。
さらに、同氏はすでに試験的運用が行われているデジタルルーブルの次の段階として、中国との二国間決済に向けた計画が進んでいると述べた。この計画が実現すれば他国もデジタルルーブルを利用し始めることが想定され、「米国が国際金融システムを牛耳る時代は幕を閉じるだろう」と述べている。(提供:月刊暗号資産)