投資信託のメリット・デメリットとは?

そんな投資信託の最大にして最強のメリットは、「少額で分散投資ができる」という点にあります。ほかに、まったく同じメリットを持つ金融商品はありません。少額で買える金融商品はいろいろありますが、1つ買っただけで分散投資の効果を持つ金融商品は、投資信託だけです。全世界の株に分散投資をする投資信託でも、販売会社によって最低100円から買うことができます。

自分で1から投資先を検討し、分散投資をするというのはなかなか大変です。投資信託なら、それをファンドマネージャーに全部やってもらえる、というのもメリットでしょう。個人では投資しづらいエリアの資産も含め、幅広い金融商品への分散投資を任せられます。

一方で、投資信託にはいくつかデメリットもあります。

1つ目のデメリットは、元本保証ではないこと。投資信託の中身は、株や債券、不動産、コモディティです。コモディティとは原油や天然ガスなどのエネルギー、金やプラチナなどの貴金属類、トウモロコシなどの穀物類といった「商品」のことです。どれも完全な元本保証ではありません。よって、それらを詰め合わせた投資信託も、当然ながら元本保証ではなく、「価格変動リスク」があります。

投資信託は株などと違い、市場でひっきりなしに取引されて、1分1秒単位で価格が変動するわけではなく、値動きするのは1日に1回だけです。その日の基準価額(投資信託のその時の市場価格)が発表されるのは、平日の夕方頃。前日の基準価額からあまり変動しないものもありますが、株と同じくらい1日で大きく値動きする投資信託もあるので、「すべての投資信託=株よりも安全」と見なすのは間違いです。

また、すぐには儲かりにくいところも、投資信託のデメリットと言えるかもしれません。選ぶ商品にもよるものの、投資信託は基本的に中長期での資産形成に適した金融商品です。そのため、「投資信託=買ったらすぐ儲かる」と思い込んでいたとしたら、肩透かしを食うことになります。

さらに、手数料がかかる点もデメリット。銀行にお金を預けるだけなら通常はかかりません(*1)が、投資信託は保有しているだけで手数料がかかります。

*1:2022年時点。未利用口座(一定期間動きのない口座)に対し、口座維持手数料がかかる銀行もあります。今後は手数料がかかるようになる可能性があります

投資信託の主な手数料は次の3つです。

  • 購入時手数料
  • 信託報酬(運用管理費用)
  • 信託財産留保額

購入時手数料とは、投資信託を買うとき、販売会社に支払う手数料です。ただし、最近は「ノーロード」と呼ばれる購入時手数料が無料の投資信託もたくさんあります。

信託報酬とは、投資信託を保有している間中、毎日支払うことにな手数料です。購入時手数料と、後からお話しする信託財産留保額はかからない投資信託も多いですが、信託報酬はどの投資信託でも必ずかかります。もちろん、安ければ安いほど◎。似たような中身の投資信託であっても、信託報酬には差があるので、比べて確認する必要があります。

信託報酬の計算方法は、たとえば信託報酬が0.5%だとしたら、投資信託の購入金額×0.5%×1.1(消費税)÷365で、1日あたりに負担する(=実際には基準価額から自動的に差し引かれる)金額を導き出せます。1日あたりの金額はかなり少ないですが、投資信託は基本的に長く持っている前提なので、塵も積もれば山となります。信託報酬を軽く見てはいけません。

最後に信託財産留保額とは、投資信託を売る(解約する)ときにかかる手数料です。投資信託ごとに異なりますが、「基準価額の0.3%」程度の金額が解約代金から差し引かれます。

「投資信託って、そんなに手数料がかかるのか!」

と、驚いた人もいるのではないでしょうか。いくら少額で始められても、手数料が高かったらあまりトクではないような気がしてきますよね。

ただ、最近は手数料が非常に安くなっています。20~30年くらい前までは手数料ばかり高くて、買った人にメリットがあまりない投資信託が目立ちました。しかし、状況は変わりました。手数料が安くなった理由の1つにネット証券の普及が挙げられます。

20年くらい前は、まだ今のようにネット専業の金融機関が普及していませんでした。そのため、株や投資信託などを買いたければ、証券会社の窓口に出向いたり、電話で注文したりするのが当たり前でした。

こうしたお客さんに対応をするため、証券会社側は接客スタッフの人件費などにコストを割く必要があります。その分が、金融商品の売買をするための手数料に上乗せされて、高くなっていたのです。

その後、インターネットの普及によってネット証券、ネット銀行が登場し、金融商品をネットで買える時代が到来しました。ネット証券などは店舗がない分、人件費や店舗の家賃などのコストがかからないため、従来型(店舗をあちこちに展開している)の金融機関よりも、投資信託や株などの手数料を引き下げることができたのです。

この結果、投資信託の手数料はどんどん下がっていき、ノーロードの商品が増えて、信託報酬も各社が競い合うようにして引き下げていきました。

=18歳からの投資信託の教科書
横山光昭
家計再生コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー
株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの家計再生件数は2万1,000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。

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