Smart city futuristic design, conceptual illustration
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オンライン上に構築された3次元仮想空間「メタバース」における経済活動が活発化する中、仮想空間内の土地を売買する「メタバース不動産市場」が急成長を遂げている。国際企業が競うように市場に参入しており、年内の販売総額は10億ドルを突破する見込みだ。新たなオルタナティブ投資対象としての可能性に迫る。

過去1年間で取引額が2倍以上に増加? 機関投資家参入が追い風に

GAFAM(*1)が本格的に市場へ参入したのを機に、メタバースへの注目度が世界的に高まっている。“SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の未来”と称されるバーチャル・ワールドは瞬(またた)く間にビジネスやエンタメ、金融、投資、教育を含む多様な領域へと拡大し、「メタバース経済圏」という造語まで生みだした。


*1:Google(Alphabet)、Apple、Facebook(Meta)、Amazon、Microsoft


「ブルームバーグ」の予想によると、メタバース市場はさらに成長を続け、今後2年間でその収益規模が8,000億ドル(約110兆461億円)に達する。

市場の成長とともに投資対象としての期待感も高まっている。現在、多数の投資家が熱視線を注いでいるメタバース投資の1つが、「バーチャル(仮想)不動産」とも呼ばれるメタバース内における不動産取引だ。

メタバース不動産はプラットフォーム上に構築された“区画(仮想土地)“を、「Ethereum(イーサリアム)」や各プラットフォームが発行する独自の仮想通貨、「NFT(Non-Fungible Token)(*2)」を用いて取引する。


*2:非代替性トークン。ブロックチェーン上で発行、取引される所有証明書。


現在、10を超えるメタバース・プラットフォームが不動産を販売しており、新たなプラットフォームが続々とローンチされている。そのような中、圧倒的な取引量を誇るのは「Decentraland(ディセントラランド)」「Sandbox(サンドボックス)」「Somnium Space(ソニウム・スペース)」「Cryptovoxels(クリプトボクセルズ)」の4つのプラットフォームだ。

「MetaMetric Solutions(メタメトリック・ソリューションズ)」が分析したメタバース・データは、これら4つのプラットフォーム上におけるメタバース不動産取引額が2021年に5億100万ドル(約687億627万円)に達したことを示しており、2022年はその2倍の10億ドル(約1,370億9,922万円)を超えることが予想される。

メタバース不動産市場の急成長の原動力となっているのは、機関投資家の参入だ。

メタバース不動産の利点として、物理的な不動産とは異なり、国境や時間、法的規制を越えてあらゆる土地にアクセスできる点、SNSのように一方通行的なコミュニケーションになりにくい点が挙げられる。内見や取引手続き、改装・メンテナンスのための労力や莫大なコストからも解放される。また、デジタルという媒介を通し、不動産の用途が無限に広がっている点も大きな魅力だ。

このような期待感を背景に、2022年2月、「JPモルガン・チェース 」が「Decentraland」に自社のバーチャル・ラウンジ「Onyx(オニキス)(*3) by J.P. Morgan」を開設し、国際銀行として初めてメタバース市場に参入した。「HSBC(*4)」や「Estee Lauder(エスティ ローダー)(*5)」「CVS Health(*6)」「Acura(アキュラ)(*7)」なども、続々とメタバース内の土地を取得している。


*3:JPモルガンのブロックチェーン部門
*4:商業銀行を主体とする英メガバンク
*5:米化粧品大手
*6:米ヘルスケア大手
*7:ホンダの海外向け高級車ブランド


バーチャル店舗/オフィスの開設や商品/サービスの販売、ブランディング強化を目的とする広告や顧客とのコミュニティーの形成など各社の意図はさまざまだが、これらの企業がメタバースに無限のビジネスチャンスを見いだしている点は共通する。

メタバース不動産投資の重要ポイントとは?