150人以上のフルコミッションIFAが資産運用などをアドバイス 株式会社YSKライフコンサルタンツ代表 山内雄一郎氏(前編)
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株式会社YSKライフコンサルタンツは、フルコミッションのIFA約150人を擁するIFA法人。正社員ではなく、完全業務委託型を採用する意図を同社 代表取締役社長の山内雄一郎氏は「IFAがお客さまによい提案をするためには金銭的な余裕を持ち、精神的にも時間的にも余裕を持つ必要があるから」とする。そのためIFAの報酬率は「最低68%」という高水準を維持する。

株式会社YSKライフコンサルタンツ山内様
山内 雄一郎(やまうち ゆういちろう)
京都生まれ京都育ち。同志社大学商学部を卒業後、2007年4月に日興コーディアル証券株式会社(現SMBC日興証券)のFA課に入社。転勤や昇進がなく、給料が出来高制で決まる部署に就職活動の時から希望して入社。京都支店に配属。FAとして主にリテール営業を担当。11年間勤務し、2018年の4月に退職。2018年5月にIFAとしてCSアセット株式会社に入社。2019年5月にCSアセットを退職し、2019年6月に株式会社YSKライフコンサルタンツの代表取締役社長に就任。2019年7月より金融商品仲介業者として営業を開始。

IFAなら証券会社の「FA職」に近い働き方ができると思い、独立を決意

―― ご自身のキャリアを含めて、御社について簡単に教えていただけますでしょうか。

2007年に大手証券会社の「FA課」に就職し、11年間勤務しました。FAの大きな特徴は、証券会社の社員でありながら、歩合制のような勤務形態であることですね。

退職後1年間はIFAとして活動しつつ、当社の起業準備をしていまして、2019年の7月に「YSKライフコンサルタンツ」として営業を開始しました。現在は約20店舗まで規模を拡大し、所属IFAは150名以上まで増えています。

所属IFA全員が業務委託契約で、フルコミッション制の働き方をしてもらっているのですが、半分以上がIFA歴1年未満です。会社としてもまだまだ若く、これから成長するために研鑽を積んでいます。

―― 2007年に証券会社へ入社したとお伺いしましたが、入社後はBNPパリバショックやリーマンショックで大変な相場だったと思います。当時の状況をお聞かせいただけますでしょうか。

リーマンショックが起こるまでは投資家心理がそこまで悪化していなかったので、入社後1年半くらいは新規開拓ができる環境にありました。しかしリーマンショックが起きてからは厳しい環境が続きましたね。お客さまからの批判も多かったですし、2012年11月からのアベノミクス相場が始まる頃までは立て直しが困難でした。幸いリーマンショック以降に投資を始める方も多かったので、その方々には喜んでいただくことが多かったのですが。

―― 証券会社を退職した経緯や、御社を起業したきっかけについて、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか。

勤めていた証券会社がメガバンクの傘下に入り、その頃からFA課の自由度が徐々になくなっていきました。小さな支店ではFA課自体がなくなるケースもあり、総合職と同じように扱われることも増えていきましたね。このままでは本来考えていたFAとしての働き方ができないと思い、転職を検討し始めました。

キャリアの選択肢としてはフルコミッション制のライフプランナー(生命保険の営業マン)のようなものもありましたが、やはり「証券」の営業を続けたかったという思いはありました。漠然と転職を考えていたときに「IFA」について詳しく調べたところ、これだったら従来の「FA課」に近いような働き方ができると思いました。

当時はIFA法人を立ち上げるのに最低2人(営業責任者と内部管理責任者)が必要でしたが、証券会社の同僚がわたしと同じような思いを持っていたこともあり、IFAを一緒にやってくれる人が4~5人集まりそうでした。わたし以外にもIFAに興味がある仲間がいるのであれば「自分たちでIFA法人を立ち上げてみてもいいかな」と思い、起業を決意しました。

―― 起業されてからの業績推移について教えてください。

当社は12月決算です。前期(2021年)までは相場環境が良好だったことや人員が増加したこともあり、業績は順調に伸びています。今期は相場環境が厳しかったこともあり、売上高の成長率は鈍化、利益は前期の3分の1といったところですね。ただ、利益に関しては、IFAや事務員に還元するため意識して落とした部分もあり、しっかり黒字はキープしています。

IFAの報酬率は「最低68%」

―― IFAへの報酬率を高めに設定し、人員を集めるといった経営戦略で会社を運営されているのでしょうか?

「報酬率を高めに」というのが主題ではないのですが、できる限り報酬率を高め、IFAに還元をすることを意識して運営しています。具体的にいうと、現在はIFAに対する報酬率を「最低68%」に設定しており、在籍料として月5万円いただくような形にしています。

IFAによっては報酬率が70%を超える方もいるので、業界ではトップクラスの報酬率だと思いますね。会社が運営できるくらいの利益が残ればよいと考えているので、それ以外はIFAに還元する方針です。

―― IFA法人のなかには正社員が中心の会社もあります。業務委託契約を中心にして高い報酬率を設定している背景にはどのようなお考えがあるのでしょうか。

創業時のメンバーが自分に近しいメンバー(証券会社の同僚や先輩など)だったこともあり、仲間たちからお金を取るという感覚がなかったことが1つの理由ですね。わたしが事務的な手続きを行うために代表に就任し、その対価として受け取る部分は受け取りましたが、それ以外はメンバーに還元する制度を作りました。その名残りが今でも残っているといった感じです。

もう1つの理由としては、IFAがお客さまによい提案をするためには金銭的な余裕を持ち、精神的にも時間的にも余裕を持つ必要があると考えているからです。そういった環境を作るためにもIFAにはなるべく多く還元し、自己研鑽をしてもらったり、無理な取引をしないようにしてもらいたいというのが主な目的です。

顧客層は40~60代、預かり資産は1,000~5,000万円がボリュームゾーン

―― 所属IFAは150名以上とうかがいしましたが、業界としてはどのくらいの規模感なのでしょうか?

証券系のIFA法人ですと、所属IFAの人数としては2番目に多い水準です。預かり残高は650億円くらいなので、1人あたりに換算すると4億円程度とそこまで多くはありませんが、今後は伸びていくと思っています。

―― 150名を超える組織になると「サービスの均一化」が難しいのではないかと思うのですが、代表として意識されていることや工夫されていることはありますか?

わたしが意識しているのは、人数が増えても「(IFA)1人ひとりに丁寧に接すること」ですね。新たに契約したIFAがいれば必ず会いに行きますし、支店にも定期的に顔を出しています。支店によって「色」があるのでサービスを均一化させることが必ずしも“正義”とは思いませんが、「IFAを豊かにすることがその先にいるお客さまを幸せにする」という理念のもと、IFAが働きやすい環境づくりを意識しています。

――お客さまの年代や属性もさまざまだと思いますが、あえていうなら御社のお客さまはどのような年代や属性の方が多い印象でしょうか?

当社のお客さまは40~60代といった世代の方が多く、職業ですと経営者やお医者様が多いと思います。預かり資産としては1,000万円~5,000万円がボリュームゾーンです。

お客さまの総資産に対して、当社にお預けいただいている資産の比率はそこまで高くない印象です。ただ、現金として置いておくべきご資金をお預かりしても、双方にとってあまり意味がないと考えているので、IFAも無理に預かり資産を増やそうとはしていませんね。

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2022年はノックインした仕組債への対応が増えた

―― 今年は相場環境が厳しかったと思いますが、お客さまからどのようなご相談が多かったでしょうか。

仕組債がノックインしているので、「償還した株券をどうしたらよいか」「損失を取り戻すにはどうしたらいいか」といった相談が多かったように思います。IFAの提案としては外国債券や投資信託への乗り換えが多く、劣後債や株式型の積立投信などの取引が増えました。

―― 仕組債の販売は難しくなっています。仕組債の取り扱いに関して、御社ではどのような方針をお持ちでしょうか。

当社は現場の自主性を重んじており、会社として取引する商品をIFAに指示することはないため、彼ら(IFA)が仕組債を取り扱うケースはあるかもしれません。ただ、おっしゃる通り仕組債の取り扱いには気を付ける必要があると思っています。IFAには注意深く取引を行うように伝えているので、当社として収益の柱にするようなことはありません。

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