IFAにとっての資産運用アドバイスの「中立性」とは 株式会社YSKライフコンサルタンツ代表 山内雄一郎氏(後編)
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前編に引き続き、株式会社YSKライフコンサルタンツ 代表取締役社長の山内雄一郎氏に話を聞く。前編ではYSKライフコンサルタンツの創業の経緯や「IFAへの報酬率が業界トップクラスに高い経営方針」の理由などを伺った。後編では、報酬率が高いゆえの功罪、IFA業界の展望について山内氏に意見を聞いた。

株式会社YSKライフコンサルタンツ山内様
山内 雄一郎(やまうち ゆういちろう)
京都生まれ京都育ち。同志社大学商学部を卒業後、2007年4月に日興コーディアル証券株式会社(現SMBC日興証券)のFA課に入社。転勤や昇進がなく、給料が出来高制で決まる部署に就職活動の時から希望して入社。京都支店に配属。FAとして主にリテール営業を担当。11年間勤務し、2018年の4月に退職。2018年5月にIFAとしてCSアセット株式会社に入社。2019年5月にCSアセットを退職し、2019年6月に株式会社YSKライフコンサルタンツの代表取締役社長に就任。2019年7月より金融商品仲介業者として営業を開始。

「コンサルティング」や「PEファンド」のニーズが高まる

―― さまざまな特色を持つIFA法人が増えたことで、顧客サイドでも相談のバリエーションが増えたのではと思います。御社独自の強み、他社に負けない点を教えてください。

当社がフルコミッションのIFAを多数擁し、案件の高報酬率を誇るということもあって、当社に応募してくるIFAには優秀な方が多いと自負しています。それゆえの営業力には自信があります。フルコミッション制だとIFAが自身の報酬を優先して、必ずしも顧客本位の提案をしないのではという懸念もあると思いますが、当社のIFAは(高報酬率であるため)精神的、時間的に余裕を持ってもらっているので、それぞれの顧客のニーズに寄り添った丁寧な提案を行える点が強みになっていると考えています。

また、当社は(証券業だけではなく)不動産やM&A、コンサルティングファームなど約30社と業務提携をしています。週に1回程度の頻度で提携先とオンライン勉強会を企画するなど、本業の資産運用以外にも幅広くアドバイスできる体制を整えていることが強みでもあります。

―― 顧客が「フルコミッション制であるがゆえの懸念」を持つのも理解できます。顧客の懸念に対してはどのようにお考えでしょうか?

IFAに転職したばかりの時は収入に対する不安があると思うので、IFAが自身の報酬を優先してしまう可能性は否定できません。残念ですが、収入面に不安があるIFAほどそのような傾向にあるのではないでしょうか。収入がある程度安定してくると、自身の報酬を優先する無理な販売は減少する傾向にあるようです。結果的に当社のIFAが提供するサービスに満足していただいた顧客から新たな顧客を紹介してもらえるといった好循環も生まれます。

IFA法人に属するIFAには、証券会社の営業担当のような営業ノルマがあるわけではないので、顧客サイドもIFAがどのような意図で商品を勧めているのかが分かりやすい環境にあるといえます。そういう意味では、報酬のために無理な取引を行うIFAは今後、どんどん淘汰されていくと思います。IFAとして長期的に活躍したいのであれば、顧客への提案内容は長期目線で考える必要があると思います。

このようなお話をすると「IFAになったばかりの担当者は避けたほうがよいのでは」と思ってしまうかもしれませんが、必ずしもそうとはいい切れません。そこは人それぞれです。IFAを選ぶ際は「人となり」をよく見ることが大切だと思います。

―― 提携先が30社程度とお伺いしましたが、IFA業界としては多いほうなのでしょうか? また、相対的にニーズが高まっているのはどのようなサービスでしょうか?

提携先数としては、IFA業界でも多いほうだと思います。先程お話しした不動産やM&A、コンサルティングの他にも、PEファンドの紹介や家族信託サポート、企業型DCの導入サポートなどのサービス会社と提携しています。

相対的にニーズが高まっているのは「コンサルティング」や「PEファンド」ですね。具体的には、「事業を再編し、会社をホールディングス化したい」「子供に事業承継させたい」といったご相談にお応えするケースが多いです。PEファンドですと、国内企業の他にも海外のユニコーン企業などにも投資できます。

IFAとして、競合先との差別化が急務

―― 2018年の創業時と比べて、現在のIFA業界はどのように変化したとお考えですか? また、今後はどのように変化していくとお考えでしょうか。

創業時はIFAという言葉を知らない方が多かったですし、知っていても実際はどのような仕組みなのかが分かっていない方も多かったと思います。現在はほとんどの方がIFAを知っています。「4年間でだいぶ変わったな」というのが率直な感想です。今後もIFAの認知度は向上し、業界としても拡大していくと思いますね。

IFAの立ち位置としては、ネット証券と対面証券の中間を担う存在だと思っています。主に対面証券の顧客がIFAに流れてくると予想してはいますが、証券会社も何かしらの対策を行うことが予想されます。実際に大手証券会社が営業担当社の転勤頻度を下げたりするなど、IFAに近い事業を始めているケースも見られます。それに対して我々は、IFAとしての強みを磨き、差別化を図っていかなければならないと思っています。

―― 競合先として商談バッティングをするケースが多いのは?

現在でも証券会社経由で資産運用をしている方が圧倒的に多いと思うので、商談バッティングする先としてはやはり証券会社が多いですね。IFAに転職したばかりの方は、前職の顧客にアプローチするケースが多いので、そういった意味でも証券会社とは競合関係になります。

他のIFA法人と商談バッティングすることは少なく、当社のIFA同士で商談バッティングしたケースもこれまでに数件程度しかありません。当社のIFAは既存顧客から新規顧客をご紹介いただくケースが多いのですが、そのため(新規顧客の)ほとんどが投資初心者です。

―― 御社として、あるいは御社に所属するIFAとしては、競合先とどのように差別化を図っていけばよいとお考えでしょうか?

当社としてはIFAの満足感を高めることを重視し、競合先と差別化を図っていくつもりです。IFAが働きやすい環境を整えることが個々のIFAのスキル向上につながり、結果的に顧客の満足につながると考えています。

IFAや証券会社は「担当者の質」が求められる

――既存の顧客からのご紹介が多いとお伺いしましたが、顧客の立場からすると御社に資産を預ける意識なのか、それとも個々の担当者(IFA)に預ける意識なのか、どちらのケースが多いのでしょうか。

圧倒的にIFAだと思いますね。顧客としてはIFAと個別にお付き合いをしているという意識だと思います。顧客はIFAがIFA法人に所属していることを認識してはいるものの、特にこだわりがあるようには思いません。

―― IFA法人の提携先によっては取扱サービスや取扱商品が異なると思います。顧客の選択肢が広がるという点では、「バリエーションの豊富さ」も重要だと思うのですが、そのあたりのお考えはいかがでしょうか。

おっしゃる通り、取扱サービスや取扱商品のバリエーションが豊富であれば、顧客としてはメリットがあると思います。しかし、導入段階でそこまで意識している方は少ないと思います。たとえば「〇〇証券で取り扱いがないから、このIFAと取引をするのはやめる」といったケースはほとんどありません。たまたま選んだIFAが、結果的に提案のバリエーションが豊富だった、というケースのほうが多いと思います。

―― 独立系であることのメリットはアドバイスの「中立性」だと思いますが、顧客の立場からすると重要なのは「担当者(IFA)の質」ということでしょうか?

大手証券会社では「企業のネームバリュー」が多少影響してくるかもしれませんが、基本的には担当者の質を重視していると思いますね。そういった点でいいますと、大手証券会社の顧客に他の大手証券会社の担当者を紹介してもあまり響かないと思います。

今の時代でしたらIFAを紹介したほうが新鮮ですし、当社は大手証券会社の商品ラインナップと比べても遜色がないので、それをお伝えすればご安心いただけるケースが多いですね。

極端なことをいえば、現在は証券会社が「中立的なアドバイスを行っていない」からこそ、IFAが「中立性を売りにできる」と思っています。今後、証券会社が中立的なアドバイスを行うようになれば、IFAの特徴がなくなってしまう懸念はあります。すぐにそうなるとはいえませんが、IFAとしてはそうなった時にプラスアルファの特徴を持っていないと厳しいと思います。