医師が資産形成に成功するための投資戦略
strannik_fox / stock.adobe.com、ZUU online

医師は富裕層の代表格だ。開業医となれば10億円以上の純資産を保有する人も珍しくない。そこで今回は、医師をはじめとした富裕層向けに資産運用コンサルティングを行う株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口氏に「医師が資産形成に成功するための投資戦略」を解説してもらう。

世古口俊介
世古口 俊介(せこぐち しゅんすけ)
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレー証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして最年少でヴァイス・プレジデントに昇格し、最高預かり残高は400億円超。2016年5月に同社を退職。2016年10月に富裕層向けに資産運用コンサルティングを行う株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者7000名超のYouTubeチャンネル『世古口俊介の資産運用アカデミー』等での情報発信を通じて富裕層の資産形成に貢献。

ほとんどの医師が預金しかしていない

「多くの医師の先生方とお会いして気がついたことだが、投資するのに十分な収入と資産がありながら、実は円預金しかしていない医師が大半である」と世古口氏は語る。

積極的に投資しない理由は、以下のように考えている医師が多いと推測できる。

・投資に失敗して損をするのが怖い
・(投資の仕組みを)完璧に理解してから始めたい
・投資のために借金するなんて不謹慎だ
・投資したあとに手間や面倒がかかる
・信頼できるアドバイザーがいない

世古口氏は「職業柄なのかどうか、医師にはとても真面目な方が多く、『投資はギャンブル』『(投資の仕組みを)完璧に理解してから始めたい』『借金は良くない』などの思いが強い人が多いように感じる。また本当に忙しい先生が多いので、『投資はしたいが、じっくり検討する時間がない。また、投資後のメンテナンスを考えると億劫になってしまう』という方も多い」と続ける。

つまり、ほとんどの医師は投資初心者であり、その前提で資産アドバイザーは顧客(=医師)の資産形成を考える必要があるということだ。

医師の資産形成、4つのポイント

医師の投資に対する考え方、収入の高さ、忙しさなどすべてを考慮したうえで、医師が資産形成に成功するためのポイントには、何が挙げられるのだろうか。世古口氏は以下の4点が重要だと言う。

1. コツコツ株式積立投資
2. お金を借りて不動産投資
3. 外国債券で安定収入
4. 節税で手取りを増やす

1つずつ簡単に説明していこう。

1. コツコツ株式積立投資

株式積立投資は医師の収入の高さを活かせる王道の投資戦略だ。自動的に投資が実行されるので、投資のタイミングを測る必要がなく、どれだけ忙しい先生でも最初の設定だけしっかり行えば実践可能である。

2. お金を借りて不動産投資

不動産投資は借入での投資が前提だ。医師の信用力の高さがあれば、有利な条件で借入を行うことができ、それだけ不動産投資の成功確率は高くなる。ただ、毎月、借入金の返済があるので、購入する物件の利回り次第では、キャッシュフローが手元に残りにくいという点には注意したい。うまく運用すれば、毎月純資産が増えていくという資産形成方法である。

3. 外国債券で安定収入

株式積立投資と不動産投資で、資産をある程度増やしたあとに検討するのが外国債券投資だ。年齢が60代になり、引退が近くなると、安全な資産の割合を増やしたり、引退後の給料に代わる収入を得る手段を考えたりしなければならない。株式と比べると値動きが緩やかで、安定的に外貨の定期収入を得られる外国債券はうってつけの投資対象となる。

4. 節税で手取りを増やす

勤務医は基本的に報酬を個人で受け取るしかないので、高い収入に対して重税が課される。つまり、うまく節税して可能な限り手取りを増やす必要がある。NISAやiDeCo、不動産投資、資産管理会社の活用などが医師の節税のセオリーだ。

以上の4つのポイントをしっかり実践していけば、医師が資産形成で成功する可能性はかなり高くなるはずだ。

資産形成事例(1)(勤務医・40代)

ここからは、実際にウェルス・パートナーで資産形成をお手伝いした医師の実例を紹介してもらおう。

まずは42歳の勤務医だ。相談を受けたときの資産状況や本人情報、要望やウェルス・パートナーと共有した資産運用の目標は以下の通りだ。

資産配分シート(当初)

医師が資産形成に成功するための投資戦略
出典:株式会社ウェルス・パートナー

「本事例のようなご相談内容はとても多い」と世古口氏は解説する。医師本人が受けてきた高度な教育を子供にも受けさせたいと思うのは自然な発想だろう。子供の教育費の高さで老後の資産形成が進まないケースは多く、本事例の医師の心配はもっともだ。

ウェルス・パートナーから提案した運用目標は、前述の4つのポイントでも登場した株式積立投資と不動産投資である。再配分を行なったあとの資産配分は以下の通りだ。

資産配分シート(再配分)

医師が資産形成に成功するための投資戦略
出典:株式会社ウェルス・パートナー

余剰の現預金を株式投資に振り向けつつ、国内不動産(区分マンション9部屋)には頭金2,000万円で1億8,000万円の借入を行い、2億円を投資した。また、再配分が完了した後は、毎月の余剰収入から株式への積立投資も毎月40万円行う予定だ。これにより、総資産における株式比率は段々と上昇していく。

「20年後にどうなっているか」のシミュレーションは以下の通りだ。

資産配分シート(20年後)

医師が資産形成に成功するための投資戦略
出典:株式会社ウェルス・パートナー

*利益に対する税金を考慮しておりません。利回りや投資成功を保証するものではありません。|株式シミュレーションの予想リターンはJPモルガン・アセット・マネジメント超長期市場予測の期待リターン2021年を参照(日本大型株式:+5.1%、先進国株式:+3.5%、新興国株式:+5.8%)|不動産シミュレーションの元本返済は借入金額2.5億円、金利1.5%、期間35年、元利均等返済で計算。|不動産シミュレーションの減価償却は建物価値1.2億円、耐用年数35年と想定して1.2億円×20年/35年で計算。|不動産シミュレーションのインフレは毎年1%ずつ物件価値が上昇すると想定して3億円×1%×20年で計算。

株式の成長や不動産のローン返済によって、20年後には、当初の純資産8,000万円が3億8,400万円となる予想だ。これくらい資産が増えれば、ある程度子供の教育費を想定しても老後の資産形成としては十分だろう。

あくまで「シミュレーションどおりにいけば」という前提だが、株式積立投資や不動産投資は、時間をかければこれくらい資産が成長する可能性を秘めている。

資産形成事例(2)(開業医・60代)

次に65歳の開業医の事例を紹介する。医師に限らず人は人生で大きな岐路に直面すると、今までの資産運用を見直すことが多い。本事例の開業医にとっては、引退を考え出したことが相談のきっかけだった。資産状況を見てみよう。

資産配分シート(当初)

医師が資産形成に成功するための投資戦略
出典:株式会社ウェルス・パートナー

世古口氏は「株式の保有割合が明らかに高すぎる。今後、引退して収入がなくなることを考えると、大幅にリスク許容度が下がるので全体的に資産配分を見直す必要がある。また『引退後に裕福な生活を送る』というご希望をかなえるために『現在勤務する病院からの報酬に代わるインカムゲイン収入を得る』という目標を設定した」と解説する。

再配分後の資産配分は以下の通りだ。

資産配分シート(再配分)

医師が資産形成に成功するための投資戦略
出典:株式会社ウェルス・パートナー

*利益に対する税金を考慮しておりません。利回りや投資成功を保証するものではありません。|先進国債券のインカムゲインは投資金額2億円×債券利率6%で計算しております。|国内不動産のインカムゲインは投資金額2億円×実質利回り4.4%−借入元利返済525万円(借入金額1.4億円・期間30年・金利0.8%・元利均等返済が前提)で計算しております。

株式資産の大半を売却し、先進国債券2億円と国内不動産2億円(ローン1億4,000万円)に投資して、資産配分の見直しを行なった。

再配分により債券と不動産の割合が増えたため、値動きが安定し、顧客の精神的なストレスを減らすことができた。またインカムゲインが毎年1,550万円程度(税引前)安定的に入るため、資産運用の目的は達成できたといえるだろう。

現在は病院の売却先も決まり、今後は売却代金や退職金が個人資産に加わるそうだ。その資金でも上記のような資産運用を行えば、現在の「病院からの年収5,000万円以上のインカムゲイン」を投資から得る(資産収入で得る)ことも可能である。

本事例は「資産形成4つのポイント」で紹介した外国債券と不動産投資が中心となった。この2つの資産は、うまく活用すれば引退後のゆとりある生活の切り札になるだろう。

まずは信頼できるアドバイザーを探す

「アドバイザーがいない」ことも医師の資産形成が進まない大きな理由の1つだ。忙しくて探す時間がない、押し売りされそうで怖いなど様々な理由で、アドバイザー探しを諦めている先生も多いと聞く。

ただ現在はネットに情報があふれ、打ち合わせやセミナーのほとんどがリモートで実施されているので、アドバイザーを探すのにそこまでの労力や時間はかからなくなっている。まずは親身になって、自身の資産を一生守ってくれる信頼できるアドバイザーを探すのが先決だろう。

菅野陽平
菅野 陽平(かんの ようへい)
富裕層の資産管理に詳しいファイナンシャル・プランナー 兼 マネーライター。幼少期より学習院で育ち、学習院大学卒業後、2012年に新卒で野村證券に入社。多くの富裕層の資産管理を担当する。2016年、株式会社ZUUに入社し、日本最大級の金融・経済情報メディア「ZUU online」の編集長を務める。プライベートバンカー資格、AFP保有。編集著書に『富裕層・経営者営業大全』(一般社団法人金融財政事情研究会、2020年7月31日発売)。