一般的に株式や投資信託よりも値動きの幅が小さい債券は、ローリスク/ローリターンの安定的な資産運用ができる商品として人気だ。債券の金利は原則として発行時に決定されたスケジュールの通りに支払われるが、購入や売却のタイミングによっては別途「経過利子」と呼ばれる金銭の授受が発生する場合がある。本記事ではこの経過利子について、仕組みや計算方法を詳しく解説する。

経過利子とは

債券に投資をするなら知っておきたい経過利子。仕組みや計算方法を徹底解説
(画像=Zoe/stock.adobe.com)

経過利子とは、債券の売り手および買い手が保有期間に応じた利子を得るためにやり取りするお金をいう。

新規に発行される「新発債」を購入し、償還日まで保有する場合、経過利子は発生しない。一方、すでに発行され市場で取引されている「既発債」を購入したり、保有する債券を償還日前に売却したりする場合には、経過利子の授受が必要になる。

経過利子は、前回の利払日から債券の受け渡し日までの利子相当額を日割りで計算し、買い手から売り手に支払われる。これによって、売買のタイミングで受け取れる利子の割合に差が出るのを調整するのだ。

たとえば、6カ月ごとに利息が支払われる債券があったとしよう。前回の利払いから2カ月が経過したところで債券を売却した場合、2カ月分の利息を受け取らないまま債券を手放すことになる。そこで売り手は、売却時に買い手から2カ月分の利子を受け取るのだ。買い手は次回の利払日に6カ月分の利息を受け取るため、損をすることはない。このように経過利子をやり取りすることで、売り手と買い手それぞれが保有期間に応じた利息を受け取れる。

裸値段と利含み値段

既発債を購入する際には、売買価格が「裸値段」なのか「利含み値段」なのかを事前に確認することが重要だ。裸値段とは、売買価格に経過利子が含まれていないものをいう。裸値段での売買では、買い手は別途経過利子を支払う必要がある。

一方の利含み値段は売買価格に経過利子が含まれているため、さらに経過利子を支払う必要はない。裸値段か利含み値段かにより購入に必要な金額が変わるため、あらかじめ確認したうえで取引を進めよう。

初回利子調整額とは

初回利子調整額は、個人向け国債において初回の利子支払い額を調整するためのお金をいう。先述の経過利子が既発債の売買に際して必要となるのに対し、初回利子調整額は新発債の購入時に発生する。

あらかじめ金利や利払日を定めて発行されるはずの国債で、なぜ利子の調整が発生するかというと、購入から初回の利払日までの期間が短くなる場合があるからだ。

個人向け国債は発行日と利子支払日が15日に定められているが、たとえばある月の15日が土日祝日に当たった場合、発行日が翌日以降にずれる。すると初回利子支払い日までの日数が少なくなるため、初回利子調整額によってその減った日数分の利子を調整する。この場合、買い手は短くなった日数分の利子を購入時に支払い、半年後の利払日には6カ月分の利子を受け取ることになる。

なお、2016年4月募集以後の個人向け国債では実際に保有していた期間に対応した利子が支払われることになったため、現在は発行日が15日でない場合も初回利子調整額の支払いは必要ない。

経過利子の受け取り・支払い

既発債への投資や中途解約を考慮に入れた積極的な投資を考えているなら、経過利子の計算方法も知っておくべきだろう。ここでは、購入時および売却時の経過利子の計算方法を解説する。なお、利息にかかる税金は考えないものとする。

債券を購入するとき

債券を購入するときには、前回の利払い日から購入までの期間の利息を売り手に支払う。たとえば、1年に1回3万円の利息を受け取れる債券を、前回の利払日から150日のところで購入したとしよう。その場合、買い手は売り手に1万2,328円(3万円÷365日×150日)の経過利子を支払うことになる。

債券を売却するとき

債券を売却するときには、売り手は買い手から経過利子の支払いを受ける。たとえば、1年に1回5万円の利息を受け取れる債券を、前回の利払日から250日の時点で売却したとしよう。その場合、売り手は3万4,246円(5万円÷365日×250日)の利息を買い手から受け取ることができる。

債券の基本

経過利子についての理解をより深めるために、債券の金利と利回りについておさらいしよう。まずは、債券に関わる用語と仕組みを簡単に確認したい。

▽債券に関わる用語と意味

用語詳細
発行体国や地方自治体、企業など、債券を発行する主体
額面金額債券の券面上に記載される金額。通常、満期時には額面金額で償還される
償還日(満期日)償還金と最後の利子が支払われる日
償還金償還日を迎えたときに、投資家が受け取るお金
金利額面に対して1年間に支払われる利子の割合
利回り投資額に対して得られた利益の割合

債券は、資金を調達したい発行体が発行する有価証券だ。投資家は、発行体にお金を貸す目的で債券を購入し、あらかじめ定められた金利で利子を受け取る。償還日(満期日)には、額面金額が投資家に払い戻される。

金利と利回りの違い

金利と利回りはどちらも運用中に得られる利益の割合を示す言葉だが、意味や計算方法には大きな違いがある。金利は、額面に対して1年間に支払われる利子の割合を示す。計算式は以下のとおりだ。

▽金利の計算式
金利(%)=利息÷額面金額×100

たとえば、100万円の額面に対し年間3万円の利子を受け取れる債券の金利は3%(3万円÷100万円×100(%))である。また、金利が5%の債券に100万円投資をすると、1年間で受け取れる利子は5万円(100万円×5%)と計算できる。

一方、利回りは投資額に対して得た利益の割合をいう。投資によって最終的にどのくらいの運用成果が出たかを測るには、金利ではなく利回りを把握する必要がある。利回りの計算は、以下の式で行う。

▽利回りの計算式
利回り(%)=(利息+償還差損益)÷運用年数÷投資金額×100

たとえば、額面が100万円で金利3%の新発債を購入し償還まで5年間保有したとすると、利回りは3%(100万円×3%×5年÷5年÷100万円)だ。もし、同じ債券を4年で解約し償還差損が2万円発生したとすると、利回りは2.5%(((100万円×3%×4年)-償還差損2万円)÷4年÷100万円×100)となる。

発行時に買った債券を償還まで保有した場合は、金利と利回りは等しくなる。一方、既発債を購入したり中途解約をしたりすると償還差損益が発生するため、金利と利回りに差が生まれる。また償還差損益を計算する際には、利含み値段ではなく裸値段を用いる点に注意しよう。

ここからは、より詳しい利回りのシミュレーションを3つのケースで確認する。

ケース1:新発債を購入し満期まで保有した場合

すでに述べた通り、この場合金利と利回りが等しくなる。たとえば、額面金額が100万円で金利が3%、満期までの期間が5年の債券の利回りは、3%((100万円×3%×5年)÷5年÷100万円×100)となる。

ケース2:既発債を購入した場合

既発債は、額面金額ではなく市場価格で取り引きされる。市場価格は株価と同様に毎日変動しているため、取引するタイミングによって最終的な利回りが変わることは知っておこう。

・額面金額よりも低い価格で購入したとき
額面金額100万円で金利が3%、満期までの期間が5年の債券を発行から1年後に95万円で購入したとする。この場合の利回りは、約4.47%(((100万円×3%×4年)+(100万円-95万円))÷4÷95万円×100)になる。

・額面金額よりも高い価格で購入したとき
額面金額100万円で金利が3%、満期までの期間が5年の債券を発行から1年後に102万円で購入したとする。この場合の利回りは約2.45%(((100万円×3%×4年)+(100万円-102万円))÷4年÷102万円×100)となる。

ケース3:中途解約をした場合

保有している債券を満期前に中途解約したときも、市場価格での売却になる。債券の中途解約をするなら、しっかりと利回りを計算し運用成果を確かめたうえで手続きを進めることが重要だろう。

・額面金額よりも低い価格で売却したとき
額面金額が100万円で金利が3%、満期までの期間が5年の債券を残存期間1年の時点で売却したとする。売却価格が90万円だとすると、利回りは0.5%(((100万円×3%×4年)+(90万円-100万円))÷4年÷100万円×100)となる。

・額面金額よりも高い価格で売却したとき
額面金額が100万円で金利が3%、満期までの期間が5年の債券を残存期間1年の時点で売却したとする。売却価格が105万円だとすると、利回りは4.25%(((100万円×3%×4年)+(105万円-100万円))÷4年÷100万円×100)となる。

まとめ

債券は一般的に値動きの幅が小さく、ローリスクローリターンの投資先として人気の商品だ。新発債を購入し満期まで保有した場合は原則として元本割れの心配がなく、あらかじめ定められた金利で利息を得られるため、運用計画が立てやすい側面もある。

ただし既発債を購入したり、中途解約したりする場合には、保有期間に応じた利子の調整を目的とした「経過利子」が発生する。また、既発債の購入や中途解約は市場価格での取引となり、売買価格によって利回りが変わる。債券を活用した積極的な資産運用を行うなら、経過利子や利回りの意味、計算方法を押さえておくことが重要だ。

こうした細かな計算に不安を感じるなら、運用の専門家に相談をするのも有効だろう。資産アドバイザー無料マッチングサービスのZUU Advisorsなら、自身の投資スタイルに合ったアドバイザーからオンラインで提案を受けることができる。

融資型クラウドファンディング「COOL」を活用すれば、最低1万円から円建てで値動きのない 手堅い利回り投資をすることができる。

・平均利回りは4.5%(税引前)*23年10月時点
・3ヶ月〜12ヶ月程度の短期運用ができるファンドが多数
・円建てで株のような値動きなし
・最低1万円から投資ができる

過去には、高級焼肉店やすっぽん・フカヒレ店の優待券がもらえる特典付きファンドや、 より安心感のある保証付きのファンド等、申し込みが多く募集開始直後に満額となったファンドもある。

気になるファンドの投資機会を見逃さないためにも、まずは口座開設をしてみてはどうだろうか。

詳細&無料口座開設はこちらから

cool