
不動産投資をはじめたいが「知識がないので一歩が踏み出せない」という人もいるのではないだろうか。投資初心者の場合、不動産投資の「不労所得」というイメージが先行して本質を捉え間違っていることも少なくない。そこで本記事では、不動産投資をこれからはじめる人や、必要な知識を効率的に賃貸経営のことを学びたい人に向けて不動産投資の心構えや基本知識を紹介する。
不動産投資で「簡単に不労所得を得られる」は間違い
はじめに不動産投資の心構えから再確認していこう。一般的に不動産投資は「不労所得を得られる仕組み」といわれることが多い。なぜなら賃貸経営に欠かせない業務(入居者の募集や清掃など)を不動産仲介会社や管理会社へ委託すればオーナーの手間がかからないからだ。
たしかに不動産投資で不労所得を得やすいのは事実である。しかし「管理会社へ丸投げすれば誰でも簡単に儲かる」と勘違いすると失敗しかねないため、以下のようなポイントは押さえておきたい。
不動産投資の本質は「賃貸物件の経営」
不動産投資とは、賃貸物件の経営のことであり、オーナーは経営者である。自分が経営者と自覚して不動産投資に向き合えば、一つ一つの判断が慎重になったり必要な知識を得るための努力がしやすかったりするだろう。
それにより「悪徳業者の甘い誘惑を鵜呑みにしてリスクの高い物件を割高で購入してしまう」「質の低い管理を相場よりも高い報酬で契約してしまう」といった失敗することも回避しやすくなるはずだ。
拘束時間は短いがやるべきことがある
賃貸物件のオーナーの業務は給与所得者と比べて拘束時間が短いが、そのなかでも賃貸経営物件の経営者としてやるべきことがある。賃貸物件におけるオーナーの主なタスクは、以下の3つだ。
- オーナーのタスク1.情報収集
賃貸物件のオーナーには、次のような幅広い知見が求められる。
・不動産市場や金融(融資や金利)の動向
・対象エリアの傾向
なぜこれらの情報が必要なのだろうか。これは、賃貸経営が不動産市場に加えて経済や金融とも深く結びついているからだ。また重視しているエリアの景気や再開発の予定などをチェックすることも欠かせない。これらの情報をバランスよく収集することで、物件を購入したり売買したりする絶妙なタイミングを見極めやすくなる。
- オーナーのタスク2.管理会社の管理
信頼できる管理会社をパートナーに選ぶことは非常に重要だが、管理会社にすべて丸投げでよいわけではない。一定の規模のある管理会社であれば、オーナーに対して以下のような定期報告の義務がある。
・家賃管理など管理事務に関する報告
・入居者からのクレーム発生状況や対応
定期報告の義務は、賃貸住宅管理業法の第20条に定められている内容だ。
出典:e-Gov※この先は外部サイトに遷移します。
オーナーは、日ごろから入居者の満足度を高めて安定経営を実現することが求められる。そのため定期報告を受けた際に管理会社へ適切な指示を出すことも必要だ。
不動産投資の初心者のなかには「管理会社に意見しにくい」という人もいるかもしれない。もちろん不動産のプロである管理会社の提案は参考にするべきだ。しかし管理会社は経営者ではないため、あくまでもオーナーが最終判断を行わなければならない。
- オーナーのタスク3.意思決定
賃貸オーナーは、管理会社に次の業務の代理を依頼しているのが一般的だ。
- 家賃や敷金などの徴収、オーナーへの引き渡し
- 未収金の督促
- 入居者からオーナーへの通知の受領
- 賃貸借契約の更新手続き
- 修繕の費用負担についての入居者との協議
- 原状回復についての入居者との協議 など
これらの業務のうち4~6については、一歩間違うとクレームやトラブルになりかねないため、オーナーは経営者として慎重に最終的な判断を心がけたい。
不動産投資に必要な知識を総まとめ
不動産投資にはじめるにあたって最低限必要な6つの知識を列挙していく。すでにご存じの方は復習の意味で活用してほしい。
必要な知識1.不動産投資の種類
一口に不動産投資といっても大別すると次のような種類がある。
- 新築、中古
- マンション、アパート、戸建て
- 一棟所有と区分所有
- 都心物件と郊外物件 など
これらのうちどれを選択するかによって初期費用や利回りなどが大きく変わってくる。不動産投資の種類を選ぶときは、成り行きではなく以下のような内容を基準にしたい。
- オーナーとして重視すること(安定性、利回りなど)は何か
- 目標(老後の資産形成)に合っているか
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必要な知識2.不動産投資のインカムゲイン、キャピタルゲイン
不動産投資は、次の2つの利益が期待できる投資だ。
- インカムゲイン(家賃収入で得られる利益)
- キャピタルゲイン(売却益で得られる利益)
これらの知識も欠かせない。例えば長期的に不動産投資を継続していく観点では、インカムゲインを主体に考えていくことが必要だ。一方、賃貸経営の損益と売却時の損益のトータルの収支を考えるとキャピタルゲインも大事になってくる。なぜなら、どんなにインカムゲインを積み重ねても最終的な売却で大きなキャピタルロスとなってしまうと本末転倒だからだ。
必要な知識3.不動産投資のメリット、デメリット
不動産投資では、メリットだけでなくデメリットの知識もしっかりと押さえておきたい。この両方を十分に認識したうえで不動産投資をはじめるべきかを検討しよう。
不動産投資のメリット | 不動産投資のデメリット |
・安定した家賃収入(インカムゲイン)を得やすい ・不動産市況によっては売却益(キャピタルゲイン)も得られる ・融資によって手元資金にレバレッジをかけられる ・資産家が利用すると相続対策にもなる可能性がある ・実物資産なのでインフレに強い傾向がある |
・空室や家賃下落などのリスクがある ・物件管理の手間がかかる(自主管理の場合) ・流動性が低く、現金化に期間を要する ・一定の収入、安定した収入がないと融資を受けることが難しい |
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必要な知識4.不動産投資の8つのリスク
不動産投資で成功するには、リスクに関する知識も必要だ。主なリスクは、以下の8つのようなものがある。
- 家賃下落リスク
- 家賃滞納リスク
- 空室リスク
- 物件価格下落リスク
- 修繕費リスク
- 固定費リスク
- 災害リスク
- 事件事故リスク
ポイントは、それぞれのリスクに事前対策があることだ。事前対策を行うことでリスクを軽減したり回避したりすることが期待できる。逆にいうと、リスクに対して事前対策を行わなければ、不動産投資で成功するのは難しいということだ。
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必要な知識5.不動産投資のキャッシュフロー
不動産投資を継続的に続けていくには、帳簿上の損益と実際の収支(キャッシュフロー)が大切だ。特に長期的な安定経営には、キャッシュフローが欠かせない。帳簿上は黒字でもキャッシュフローがマイナスでは手元資金が減ってしまうため、気をつけよう。
帳簿上の損益とキャッシュフローが違う理由は、建物の減価償却費の扱いが違うからだ。帳簿上の損益には減価償却費が反映されるが、キャッシュフローには減価償却費が反映されない。なぜなら、減価償却費は実際に支出したお金ではないからだ。そのため、帳簿上の損益だけでなく、キャッシュフローも把握していくことが大事だ。
必要な知識6.不動産投資に欠かせない指標
不動産投資の初心者であれば、利回りをもとに物件探しをしていく人も多いだろう。しかし利回りは、大きく分けると以下の2つがある。
- 表面利回り:年間の家賃収入を物件価格で割ったもの
- 実質利回り:表面利回りに諸経費を反映したもの
上記のように同じ「利回り」という言葉でも意味が大きく変わってくる。物件比較では、簡易的な「表面利回り」を使い、物件の購入検討では「実質利回り」を用いるなど適宜使い分けていきたい。
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不動産投資に必要な知識を得る方法と注意点
ここまでお話ししてきた内容は、「不動産投資に必要な知識」の入り口でしかない。さまざまなアプローチで知識を深掘りしていこう。
賃貸経営に関することを学ぶ
不動産投資で成功するには、当然賃貸経営の知識が必要になってくる。ポイントは、複数の勉強方法を用いてバランスよく知見を得ることだろう。具体的な勉強方法は、次の通りだ。
- 不動産投資に関する書籍
- 不動産投資のセミナー(ウェビナー)や勉強会
- 賃貸経営の業界誌、業界紙
- 不動産投資のWEBサイト
- 不動産投資に役立つ資格取得(宅建士、賃貸不動産経営管理士)など
成功事例と失敗事例の両方を学ぶ
賃貸経営に必要な知識を得る際のもう一つのポイントは、成功事例と失敗事例の両方を学ぶことだ。成功事例だけを学ぶと、どうしても不動産投資のメリットだけに意識が集中しがちだが、失敗事例を知ることでリスク対策の重要性も理解しやすくなる。
不動産投資に必要な知識を得てから始めよう
不動産投資は初期投資の金額が大きいため、株式や投資信託のように少額を投資して失敗しながら経験を積むといったことが難しい。そのため、基本知識やリスク対策などを十分に理解したうえではじめることが非常に重要だ。不動産投資にはさまざまなリスクがあるが、「無知のリスク」以上のリスクはない。はじめて不動産投資へ挑戦する人は、物件探しよりも知識収集を優先しよう。
(提供:manabu不動産投資 )
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