株式会社ZUUでは現在、投資について悩みを抱える利用者に独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)などの専門家をマッチングするサービス「ZUU Advisors」のベータ版を提供している。資産アドバイザーというと、投資の知識がない人のためのものだ、というイメージを持つ方も多いかもしれない。しかし本サービスのコンシェルジュを務める竹林浩司氏は「基礎的な知識のある方にも、IFAは活用いただける」と語る。資産家/個人投資家がIFAを活用するメリットや、国内におけるIFAビジネス拡大の背景、さらにはZUU Advisorsのサービス展望などについて、竹林氏に話を聞いた。

世古口俊介
竹林 浩司(たけばやし こうじ)
立命館大学、首都大学東京大学院社会科学研究科経営学専攻修了。2001年に大学卒業後、インターネット企業にてアライアンス・新規事業開発、子会社経営に従事。2008年に株式会社シーエー・モバイル(現CAM)に入社。入社後、アライアンス、経営戦略や事業戦略の策定支援、新規事業開発を担当。2017年に医療機関の経営再生事業を展開するキャピタルメディカに入社し、事業開発・推進に従事。2020年3月に株式会社ZUUに参画し、現在はZUU Advisorsの事業責任者を務める。

なぜ資産アドバイザーが必要なのか?

金融の力で、誰もが1億円を形成できる社会を実現する――ZUU Advisors責任者 竹林氏インタビュー

―― まずは、ZUU Advisorsの概要について教えてください。

ZUU Advisorsは、お客様の人生におけるゴールを実現する手段となる資産運用・管理について、その実行支援を行うための資産アドバイザーを紹介するサービスです。

「ZUU online」の運営を通じて構築された資産アドバイザーのネットワークから、利用者の資産状況や目的に合わせた最適な事業者をご紹介しますので、彼らとの相談を通じて、より成果を挙げやすい資産運用・管理を進めていただけます。

―― 資産運用にあたってアドバイザーが必要だ、と考えている人は、読者の中にはあまり多くないのではないかと思います。

もちろん、アドバイザーを付けずに資産運用を行える方もいらっしゃいますが、資産運用や管理にあたってプロのアドバイスを受けることは、多くの方にとって有効です。

まずは、金融商品に関する基本的な知識がない方。資産運用の必要性は感じつつも、これまで株や投資信託に触れてこなかった、という方は、アドバイザーを活用することで効率的に投資を始められるのではないでしょうか。

また効率の面から言うと、資産運用のために十分な時間が取れない方にも資産アドバイザーは向いているのではないかと思います。
本業が忙しい方はもちろん、ライフスタイルの変化や健康問題などによって時間の余裕がなくなったときなどにも、人生において重要な資産運用を置き去りにしないよう、ぜひプロの力を活用していただきたいですね。

さらに、基本的な投資の知識や時間のある方であっても、資産全体を総合的に捉える、という面において資産アドバイザーを利用する価値は高いです。

一般の方が投資を行う際にはどうしても、金融機関の担当者やご友人、あるいはニュースなどの情報を頼りにしながら、なんとなく良さそうな商品を購入する、といった形で投資を進めることが多いかと思います。

そうするとどうしてもポートフォリオがバランスの悪いものになってしまいますし、そもそも適切なポートフォリオというのは、ご自身が人生において目指すゴールや、現在の資産状況などによって大きく変わってきます。

不確かな情報や短期的な商品の値動きに惑わされず、常にゴールを意識した軌道修正を行いながら、長期的な視点で適切に資産運用を進めていく。そのためには、プロの知識と客観的な視点を持ったアドバイザーの助言が大いに役立つはずです。投資に自信のある方にも、セカンドオピニオンのように利用していただければと思います。

―― 資産運用の相談先としては、全国のファイナンシャルプランナーや証券会社の外務員など、これまですでに多くの選択肢があったかと思います。その中でも特に、ZUU Advisorsを通じて資産アドバイザーを探すメリットとしては、どのようなものがあるでしょうか。

第一に、ZUU Advisorsでは日本に数多くいる資産アドバイザーをキュレーションすることで、利用者に最適な方をご紹介できる、という点が挙げられます。

独立系資産アドバイザー(IFA)、つまり特定の金融機関に属していないファイナンシャルアドバイザーは日本全国に900社以上存在し、またFPことファイナンシャルプランナー資格の保有者は日本で20万人以上にのぼります。さらに税理士資格の保有者もおよそ20万人程度。こういった方々を含めたお金の専門家は、日本全国に190万人ほど存在します。

この中から自分に合った方を探すのには相当な労力がかかりますから、ZUU Advisorsがそのようなアドバイザーの方々をあらかじめフィルタリングし、信頼のおける方を選定していることについては、利用者の方にも価値を感じていただけるのではないでしょうか。

また本サービスでは、登録している資産アドバイザーに事前面談を行うことで「正しい運用によって、最短で成果を挙げる」ための戦略を共有しています。

面談では、利用者のゴールと現状を把握すること、ポートフォリオの構築から戦略設計を行うことを指導しているため、利用者の方には先に挙げたような資産アドバイザーのメリットを最大限活用していただけます。

さらにZUU Advisorsでは、アドバイザーを紹介して終わり、ではない一生涯のサポートを提供できる点もメリットです。

ウェビナー/イベントを通じた情報提供や、ZUU子会社を通じて組成したファンドのご紹介など、単なるアドバイザーの紹介にとどまらない中長期的な支援が可能となっています。

より顧客に合った資産アドバイザーを紹介するために

―― 今日本では、IFA、つまり特定の金融機関に属さない独立系の資産アドバイザーが増えている、という話を伺いました。どのような背景があるのでしょうか。

大きく分けて3つの理由があると思います。

まずはアドバイザーさん側に、もっと自由な立場で、特定の金融機関や証券会社に縛られることなく提案を行いたい、というニーズが高まっていること。

もう1つは、金融機関や証券会社側が、IFAと提携したビジネスに力を入れていること。

さらに、たとえば保険代理店の方々がIFAに取り組むために仲介業の免許を取得するなど、他業種からの参入が増えていることです。

こういった背景から、現在ひとくちにIFAといっても様々な背景の方がいる、という状況になっていますので、個人の方が自分に合ったアドバイザーを探すことはますます難しくなっているのではないかなと思います。

―― そういった状況の中で適切な事業者をキュレーションするために、ZUU Advisorsが行っていることをお聞かせください。

本サービスでは、資産アドバイザーの選定にあたって3つの条件を設けています。

まずは、富裕層に対する資産コンサルティングの実績が5年以上あること。次に、手数料収入のために短期売買を重視した案内を行わないこと。そして特定のアセットクラスに限らず、利用者の資産全体についてコンサルティングができることです。

実績以外の点についてはいずれもあたりまえのように思えますが、実際のところこれらの基準を満たさない資産アドバイザーもまだまだいるのが現状です。本サービスを利用することで、IFA/FP/不動産/税理士など、利用者の方が生涯通して付き合える様々な資産アドバイザーとマッチングしやすくなると考えています。

ZUU Advisorsの提携事業者にできること

―― これまでZUU Advisorsで相談を受けてきた利用者の属性や、それに応じた提案の内容などについて、可能な範囲で教えていただけますでしょうか。

まず年齢層についてお答えしますと、30代から60代まで幅広い方にご相談頂いているものの、40代以上の方が特に多くなっています。職業についても様々ですが、経営者の方が36%、会社員の方が33%、経営幹部の方が30%といった内訳です。

金融資産に関しては、1億円以上の方が54%、5000万円以上の方が約26%となっておりますが、資産5000万円未満、3000万円未満の方にもご利用いただいています。

提案の内容については、もちろんお客様の年齢や資産状況などによっても変わりますが、大きな方向性として「昨今の市場環境の中で、なるべくリスクを抑えて安定した利回りを得たい」「将来を見据えて、ある程度のリスクを取りながら積極的な運用を行いたい」という2種の提案があるかなと思います。

前者のニーズに対しては、インカムゲインを得るため外国債券や社債をベースにしつつ、お客様のリスク許容度に応じて他の商品を追加するケースが多くなっています。後者については、ヘッジファンドや私募ファンドなど、通常なかなか購入の機会がないような商品を提案する場合が多いですね。

―― ZUU Advisorsに興味を持たれた読者のために、登録から運用までのスキームについて教えてください。

お客様に申し込みいただいた後は、まず事前面談を行ってお客様のニーズや今後の目標などについてヒアリングさせていただきます。

その内容をもとに我々がIFAやFP、不動産事業者などを選定し、お客さま、事業者、ZUU Advisorsの3者で面談を行います。2回目以降は我々を挟まず2者で面談を重ねていただきますが、適宜フォローも行います。

IFAと面談を行った場合は、最終的にお客様が事業者の提案に基づいて商品を購入する際、証券会社等に支払う手数料の一部がIFA事業者の収入となります。相談から商品の購入に至るまで、お客様からZUU Advisorsに費用を支払う必要はありません。

―― IFA事業者が商品の売買手数料から利益を得るのであれば、利用者が商品の売買を繰り返すほどIFAに利益が出る、ということになるかと思います。

はい、そういった意味では、IFAとZUU Advisors利用者の間に利益相反が生じることになりますが、ZUU AdvisorsではIFA事業者への事前面談にて、短期的な売買を重視した提案は行わないよう通達を行っています。利用者からそのような提案について報告があれば改めて指導を行いますが、今のところそういった相談は受けていませんね。

また事前面談では、お客様にとって理解が及ばないような、難解で分かりづらい商品についてもなるべく提案を避けていただくようお話ししています。

昨今注目されている債券投資の中でも、EB債などのいわゆる仕組債と言われる商品は、非常にリスクリターンがわかりにくくなっていますし、金融庁も危険視しています。そういった商品については、お客様からのご要望がない限り率先して提案することがないように伝えています。

1億人が1億円を形成できる社会のために

―― 竹林さんのこれまでの経歴や、ZUU Advisorsを立ち上げるに至った背景、また今後の展望などについてお聞かせください。

大学を卒業してからは、株式会社USENにてインターネットサービスの運用を行っていました。その後ベンチャーやサイバーエージェントの子会社などで、新規事業の立ち上げやアライアンス、子会社経営を多く担当していました。

前職にあたるキャピタルメディカ(現ユカリア)では、医療機関で利用する採用管理システムの開発や、子会社である介護施設の業務改革などを行っていたのですが、現場視察を行った際、介護職員の給料がなかなか上がらない現状を目の当たりにしたんです。

介護施設の職員はみな非常にホスピタリティが溢れていますし、利用者一人ひとりに対してもしっかり向き合っているのですが、そういった働きがまったく収入に反映されていない。個人が従事する仕事として、持続可能性が全く感じられませんでした。

そういった状況を解消するには、まずお金の問題から解決すべきだろうと考えました。2020年の3月に縁あってZUUに入社したこともあり、金融の力を、かつて私が出会った介護職員さんのような方々の未来を切り開くために活用できれば、という思いでZUU Advisorsを立ち上げました。

現在ZUU Advisorsはある程度の金融資産がある人向けのサービスとして運用していますが、ゆくゆくは日本中すべての方に投資を促すためのサービスにできたらと考えています。日本人1億人が全員、今でいう1億円相当の資産を形成できる世界。その実現のためにも、まずは事業基盤を充実させること、利用者のニーズや状況に応じた戦略の提案とモニタリングについて改善を続けること、富裕層の資産運用に関する知見を集めて一般層への展開に備えることを推し進めていきたいと考えています。