本記事は、内藤誼人氏の著書『世界最先端の研究が教える新事実 人間関係BEST100』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

最近の若者がお年寄りにやさしくない理由

最近の若者がお年寄りにやさしくない理由
(画像=peopleimages.com/stock.adobe.com)

最近の若者は、お年寄りに親切ではない傾向があります。電車やバスに乗って座っているとき、お年寄りが乗車してきたら、「こちら、どうぞ」と席を譲ってあげればいいのに、なかなかそういうことが自然にできる若者は多くありません。昔は、もう少し若者も、お年寄りに親切でした。お年寄りに対して、ネガティブな印象もそんなに持っていませんでした。むしろ、お年寄りはいろいろな知識や経験を有していて、偉いのだと思っていました。

ところが、最近は「アンチエイジング」という言葉からわかるとおり、年を重ねることは、〝避けるべきこと〟であり、忌避きひすべきことになってきました。当然、お年寄りに対しても、あまりいい印象は持っていません。どうして若者がお年寄りにネガティブなイメージを持ってしまうのかというと、核家族化が大きな理由です。

昔は、自分の家に、おじいちゃんやおばあちゃんが同居していましたから、ごく自然にお年寄りと接することができました。お年寄りと接触する頻度が多かったので、お年寄りにはそんなにネガティブな態度を持つこともありませんでした。ようするに、今の若者が、お年寄りを敬遠するのは、お年寄りとの付き合う時間が減っているからです。

イギリスにあるケント大学のリスベス・ドルーリーは、お年寄りとの付き合いがないから、偏見のようなものが生まれてしまうのだろう、と指摘しています。ドルーリーは、70名の大学生に、「あなたは65歳以上のお年寄りと、どれくらい付き合いがありますか?」と尋ねてみました。アルバイト先や、近所付き合いで、どれくらいお年寄りと接するのかを聞いてみたのです。その一方で、お年寄りに対する印象(怒りっぽい、頑固、冷たい、など)も聞いてみました。すると、お年寄りと「ほとんど接することがない」と答えた人は、「とても頻繁に付き合う」と答えた人に比べて、お年寄りにネガティブな印象を持つことが明らかにされたのです。

私たちが、ある特定の人にネガティブな印象を持ってしまうのは、単純に、その人たちとお付き合いしていないからということがわかりました。

逆にいうと、付き合う時間を増やせば、偏見や差別の心をなくすことができます。付き合う時間を増やすと相手の気持ちがよくわかります。

実をいうと、私もお年寄りが苦手でした。口うるさくて、同じ話を何度もして、退屈な人たちだと思っていたのです。ところが、自治会の付き合いなどで、近所のお年寄りたちと集まっておしゃべりする機会が増えたところ、「お年寄りの話って、意外に面白いな」と思うようになりました。人間というのは不思議なもので、接する頻度が多くなると、嫌悪感のようなものはなくなるのです。もしお年寄りが苦手なのなら、避けるのではなく、むしろ自分から話しかけて接する頻度を増やすのがいいです。そうすれば、嫌いだという気持ちもなくなります。

世界最先端の研究が教える新事実 人間関係BEST100
内藤誼人(ないとう・のりと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。

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