不動産クラウドファンディングは事業者が急増している分、なかにはコンプライアンス意識のない事業者も一部いるようです。大家さんや個人投資家がどのような点に気をつけて不動産クラウドファンディングに投資をしていけばよいかについて、不特法アドバイザー、行政書士の石井くるみさんに教えていただきました。
【石井くるみさんのプロフィール】
不動産と金融を専門とする「日本橋くるみ行政書士事務所」代表。とくに最近では、不動産特定共同事業に関する専門家として、許可申請サポートや法務コンサルティングの分野で活躍。 国交省「不動産特定共同事業(FTK)の多様な活用手法検討会」総括会委員でもある。早稲田大学・政治経済学部卒。(公財)消費者教育支援センターに研究員として従事後、法律事務所勤務を経て事務所開設。
不動産クラウドファンディングに投資するには目利き力が大事
-ここまで石井さんには、不動産クラウドファンディングの可能性と魅力について教えていただきました(インタビュー前編参照)。しかし、どんな投資商品にも必ずネガティブな面もありますね。この観点で不動産クラウドファンディングに投資をする大家さんや個人投資家へのアドバイスはありますか。
不動産クラウドファンディングの事業者は、不動産特定共同事業法(不特法)のライセンスを受けてファンドを提供しています。しかし、事業者がランセンスを受けているから安心して投資できる、と安易に考えてはいけません。投資は自己責任が問われますので、不動産クラウドファンディングを提供する事業者や個々の投資商品の内容を十分に検討することが重要です。
まず、不特法に基づき提供される不動産クラウドファンディングのうち、事業者が契約の当事者になっているものについては、事業者が倒産した場合に投資したお金が戻ってこないリスクがあります。たとえ投資したクラウドファンディング商品の投資対象不動産に価値が残っていても、不動産クラウドファンディングの投資家は、その不動産から優先的に弁済を受けることができない仕組みとなっています。
また、個別商品の内容もしっかりと理解しましょう。特に、個別商品の投資対象である不動産の情報は要チェックです。例えば、ある土地を投資対象とする個別商品について、土地の価格が10億円と設定され、10億円の資金の募集がなされていたとします。この場合は、国や都道府県が公表している近隣の土地の公示価格などの情報を入手し、10億円の価格設定が適切かを検証しましょう。もし近隣の土地の公示価格などが10億円を大きく下回るような水準であった場合、このような個別商品に投資してはいけません。
-不動産クラウドファンディングには手軽に投資できるメリットがあります。だからといって安易に投資するべきではないんですね。ほかに事業者の信頼性や投資対象の不動産の価値を判断する方法はありますか。
事業者が上場している大手企業だとコンプライアンスの社内体制が整っている可能性が高いですし、企業ブランドを守るために社会的な責任を果たしていきたいという部分が強いため、一定の安心感はあるかもしれません。
しかし、信頼できる企業が提供する商品であっても、投資対象の不動産の価値が下がった場合には損失を被るリスクがあります。不特法には、投資家に損失が生じた場合に事業者がそれを補てんすることを禁ずるルールがあるので、「損が出ても事業者が何とかしてくれる」という訳にはいきません。
結局のところ、どんな事業者、どんな商品にもリスクがあり、これを正確に見極めることは困難であるため、「卵を1つの籠に盛るな」という格言のとおり、1つの事業者や1つの商品に集中して資金を投資しないことが重要となります。
不動産クラウドファンディングの広告や勧誘の規制は十分でない
-石井さんは国交省の不特法に関わる検討会のメンバーも務められていますね。不動産クラウドファンディングは、まさに国交省の不特法で規制されるものですが、今後、規制は緩められていくのでしょうか、逆に、強化されていくのでしょうか。
現状をお話ししますと、不動産クラウドファンディングの広告規制や勧誘規制は金融商品取引法(金商法)と比べると不十分である感があります。今後、広告や勧誘で何か問題が起きたら、事業者に対する検査や規制が強化されていく可能性があります。広告規制や勧誘規制が不十分なのは、不特法には業界の健全な発展及び投資家保護を目的として設立される「自主規制機関」が存在せず、そのため自主規制が制定されていないことが一因であると考えられます。
自主規制でわかりやすいのは、アフィリエイト広告です。商品のことを知らない第三者のアフィリエイターが「ここの商品は、すごくおすすめです」みたいな記事を書いて集客する仕組みです。
この点、金商法の登録を受けた金融商品取引業者向けには、自主規制機関が策定したガイドラインがあって、アフィリエイト広告に関して事業者が対応すべき事項が示されています。この結果、アフィリエイターの記事は事前に審査をするし、問題があれば訂正や契約解除するといった明確かつ具体的な手続が各事業者の実務に落とし込まれているわけです。
他方、不特法については自主規制機関が存在しないので、アフィリエイト広告に関するガイドラインが存在しません。このため、不特法の許認可を受けた事業者については、アフィリエイト広告に関して十分な対応がなされていない可能性があります。
今後は不特法についても自主規制機関が設立され、法令ではカバーされない課題を自主規制でカバーしていくことが望ましいですし、国交省や業界がその方向に進んでいくことを期待しています。
-広告・勧誘などの自主規制を通じて業界の信頼性を高めていくことも大事ですね。今回は貴重なお話をありがとうございました。
(提供:YANUSY)
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