日銀新総裁人事はサプライズではなかった!!
(画像=セブツー」より引用)

日本銀行(日銀)の新総裁が植田和男氏(71歳、共立女子大教授、日銀元審議委員)に決まった。戦後初の学者出身の日銀総裁で、全く下馬評にも上がっていなかったので、サプライズ人事だと言われている。日本経済新聞(日経)の予想では、雨宮正佳現副総裁(67歳)だったが、雨宮氏は固辞したのだという。どうもこの「固辞」というものも疑わしいという声もある。いわゆる「観測気球」として、日経にリークしてみたら、為替相場が円安になったので、「雨宮は異次元金融緩和の継続者」と見られているようだということになって、雨宮総裁案は却下されたというのが真相だとも言われている。いずれにしても、日経はイイ面の皮ではある。

日銀の総裁2人の副総裁のトップ3人は、財務省出身、日銀出身、学者出身という色分けがきちんとなされおり、現在でも黒田東彦総裁(78歳)=旧大蔵省出身、雨宮副総裁=日銀出身、若田部昌澄副総裁(58歳)=学者出身というようにきちんと組み合わされており、なるほど今回の人事も植田和男新総裁=学者、氷見野良三新副総裁(62歳)=旧大蔵省出身、内田真一新副総裁(60歳)=日銀出身というトップ3人の色分けはきちんと継続されている。

読売新聞オンライン(2月14日)によれば、昨年夏から日銀新総裁選びは本格化しており、「各国の中央銀行トップと理論に基づいた丁々発止のコミュニケーションが取れる人材がほしい」という岸田文雄首相の周囲への注文に基づいた人選が行われていたという。そうした中で、英語に堪能で世界の中央銀行トップ経験者との交流のある植田氏が浮上したようだ。植田氏、FRB(米連邦準備制度理事会)元議長のベン・バーナンキ、欧州中央銀行前総裁のマリオ・ドラギには共通項がある。いずれも著名な経済学者でマサチューセッツ工科大学においてスタンレー・フィッシャー氏の指導を受けたという点だという。

そうした点から言えば、今回の日銀新総裁人事は決してサプライズではなかったことになる。人選が外に漏れることなく穏密裏に行われたということだろう。

植田新総裁は、基本的には黒田現総裁のように頑固一徹の「金融異次元緩和」論者ではないようだ。金融緩和の行き過ぎによる副作用への理解もある、冷静で中立的な金融政策論者のようだ。日銀は中学や高校の教科書には「銀行にとっての銀行」「物価の番人」と書かれている。インフレが急速に進む現状を打開してほしいものだ。当然のことながら、利上げによる金融引き締めの方向に緩やかに蛇を切ることになるのだろうが、これには株価下落、景気後退=失業率アップ、円高=輸出企業へのデメリットなどの副作用があるわけで、そのあたりの微妙なサジ加減が求められている。いずれにしても難局が新総裁を持っていることだけは間違いない。