ESG(環境・社会・ガバナンス)は、投資家にとっても大手企業にとっても、投資先や取引先を選択する際や、企業の持続的成長を見る際の重要な視点になりつつある。各企業のESG部門担当者に、エネルギー・マネジメントを手がける株式会社アクシス・坂本哲代表が質問を投げかけるスタイルでインタビューを実施。ESGに積極的に取り組み、未来を拓こうとする企業の活動や目標、現状の課題などを紹介する。

今回は、海運を始めとした物流インフラ業界のトップを走る日本郵船株式会社の丸山さんにインタビュー。ESG経営を成長戦略に組み込む、物流業界全体を見通したサステナビリティ推進体制について聞いた。

(取材・執筆・構成=山崎敦)

日本郵船株式会社
丸山 徹(まるやま・とおる)
――日本郵船株式会社 経営企画本部執行役員
広報・IR・主計・財務 各グループ担当
京都大学 経済学部を卒業後、1988年4月に日本郵船株式会社に入社。
主計グループのチーム長、同グループ長代理、財務グループのグループ長代理などを務め、2014年4月よりIRグループへ。2020年からは経営委員(現 執行役員)も務める。

日本郵船株式会社
日本郵船株式会社は1885年に設立された世界有数の総合物流企業です。2022年3月末現在、日本郵船グループでは全世界で約35,000人の従業員が働いており、814隻の船舶を運航しているほか、飛行機やトラックも運行しています。日本郵船グループは、社会や産業にとって必要不可欠な企業グループであり続けるために、長期的な視点で社会と環境の持続可能性を追求し、利益の最大化を図りながら「Sustainable Solution Provider」として新たな価値創造を推進していきます。
坂本 哲(さかもと さとる)
―― 株式会社アクシス代表取締役
1975年生まれ、埼玉県出身。東京都で就職し24歳で独立。情報通信設備構築事業の株式会社アクシスエンジニアリングを設立。その後、37歳で人材派遣会社である株式会社アフェクトを設立。38歳で株式会社アクシスの事業継承のため、家族とともに東京から鳥取へIターン。

株式会社アクシス
エネルギーを通して未来を拓くリーディングカンパニー。1993年9月設立、本社は鳥取県鳥取市。事業内容はシステム開発、ITコンサルティング、インフラ設計構築・運用、超地域密着型生活プラットフォームサービス「Bird(バード)」の運営など、多岐にわたる。

目次

  1. ピンチをチャンスに変える成長戦略を打ち出す
  2. 新規の燃料開発で低炭素化を実現する
  3. ビジネス・DX化と社会貢献を両立させる
  4. 真面目な企業体制が生む、データを生かしたサステナビリティ推進体制

ピンチをチャンスに変える成長戦略を打ち出す

アクシス 坂本氏(以下、社名、敬称略):アクシス代表の坂本です。弊社は鳥取県に本社を構える、システム開発を中心としたIT企業です。ここ10年は再エネの見える化に関するプロダクトも手がけており、クライアント企業のDX支援もしています。地方にありながら、お客様の90%は首都圏のプライム企業というのも特徴です。今回は、御社のESGに対する取り組みについて勉強させていただきます。よろしくお願いいたします。

日本郵船株式会社 経営企画本部執行役員・丸山徹氏(以下、社名・氏名略):弊社は、1885年に設立された総合物流企業です。私は2014年よりIR担当、2020年からは執行役員も務めており、ESG経営を推進しています。本日はよろしくお願いいたします。

坂本:初めに、日本郵船様のESG(サステナビリティ)活動における考え方を簡単にお聞かせください。

丸山:まず、当社がESGに関して発信し始めた時期のお話からさせていただきます。ESG投資、ESG経営という言葉が聞かれるようになったのは4~5年前ですが、それ以前の当社は長年苦しい業績が続いていたこともあり、当社の業務である船の運航に使っている重油の燃料費を削減することでコスト削減を狙い、IT機器を船に装備するといった運航効率を高める工夫をしていました。また、当社は1997年に東京湾でタンカーの原油流出事故を経験しております。それを反省し、もう二度と繰り返さないための対策と取り組みを毎年行っています。安全は第一で、燃費も節減しなければいけないというESGの基礎的なところはずっと行ってきました。

好況期に船を大量発注してしまったり、独占禁止法違反のようなコンプライアンス事案を経験したりしたことも、業績が苦しかった理由として挙げられます。そのため、コンプライアンスにしても投資にしても、意思決定をしっかり行う仕組みの必要性を感じていました。広い意味でいえば、ガバナンスの取り扱い方に関して日本郵船単体だけではなくグループ全体にどう浸透させていくのか。業績があまり振るわない中で、そのような重い課題を抱えていました。

そのような中でESG投資、ESG経営という言葉が流行し始めましたが、その際、当社社長の長澤が社内外のさまざまなステークホルダーと話す中で「ESG投資の流れはピンチではなく、ESGを軸とした成長戦略をしっかりと打ち出せば、他社との差別化にも繋がるのではないか」ということに気が付きました。ESGを経営の中心に据えて成長戦略を行うにあたり、グループ社員一同がESGを理解した上で世の中に発信する必要があるため、NYKグループESGストーリーを作ろうと長澤が声をかけたことが当社のESG経営の始まりです。ESGの個々の分野を開拓していくというより、社内の課題と結び付けた上でESG活動のアクセルを踏み始めたということです。

さらに、時間軸について補足すると、当社は2018年から5年間の中期経営計画を走らせていますが、計画を策定した2018年から「ESGの経営戦略への統合」を掲げていました。しかし、2019年に長澤が新社長に就任し、投資家や他社の経営トップに「ESGに舵を切る」と伝えた時の反応は、「日本郵船さんから成長戦略の話を聞くのってすごく久しぶりですね」というものでした。

これを受けて、成長戦略であれば部署単位ではなく全社で行おうということになり、2019年の暮れあたりからグループ全社を挙げてESGストーリーを作ろうという号令が出ました。単にきれいなパンフレットを作るのが目的ではないので、社内で多くの議論を交わし、号令から1年強かけてNYKグループESGストーリーを策定しました。やはり綺麗事だけでは進められず、肯定的な意見ばかりではなかったため、しっかりまとめ上げるために1年以上かかりました。

ESGという言葉が流行しているからといってフワフワしたものにせず、本気で役員や社員に浸透していくものにしたいという思いでESGストーリーを作りました。

坂本:現在御社が実施されているESG経営の推進体制と、ESG経営を全社に浸透させていくための取り組みについてお聞かせください。

丸山:はい。以下の画像をご覧ください。

日本郵船株式会社
(画像=日本郵船株式会社)

社長を委員長とするESG経営推進委員会を立ち上げまして、現在は中期経営計画を策定中です。推進委員会のメンバーは各部門から選出していまして、中期経営計画の策定もほぼ同じメンバーがオーバーラップするようにして担当しています。ESG経営推進委員会の下にはESG経営推進グループがあり、NYKグループESGストーリーを発表した2021年に設置しました。

ESG推進委員会から経営会議までが執行側の意思決定を行う審議機関になりますが、監督側ではなく執行側に推進委員会を作ることで、ESGを推進する上での諸課題の検討や意思決定を行い、最終的には取締役会につなげるという体制にしております。また、外部の目も入れるためにアドバイザーとしてゴールドマン・サックス証券株式会社の方を招き、ESG経営推進委員会にその意見を取り入れるという仕組みにしています。

また、ESGの考えを社内に浸透させるために、各部署にESGを推進するための取り組みを実際に行う「ESG Navigator」というものを設置しています。もともとCSRという形で各部署に配置していましたが、部署ごとに自主性を持ってESGに取り組むために、その中心となって推進する人物を据えています。ナビゲーターという言葉は聞き慣れないかもしれませんが、当社のような海運会社で取り扱う船で航海計画を策定する際に、最終決定権を持つ船長が間違っていると判断した場合に進言するのがナビゲーター(航海長)です。

ナビゲーターがしっかりしていないと船がまっすぐ進まなかったり、事故を起こしてしまったりします。ESG経営をまっすぐ推進していく上でも、ナビゲーターは重要です。そのため人選もしっかり行い、ナビゲーターが上の人間にもじっくり話をできる体制にしています。

新規の燃料開発で低炭素化を実現する

坂本:「脱炭素社会」という世界的に大きな流れは、御社のビジネスにどのような影響を与えていますでしょうか。また、変化した御社のビジネスにおける具体的な戦略、自社ならではの強み、予想される課題を教えていただけますでしょうか。

丸山:脱炭素社会の流れは、当社のビジネスに非常に大きな影響を与えています。2050年までという目標の下にさまざまな数字が出てきていますが、今後もしばらくは大きな影響を与え続けることになるかと思います。ただ、ピンチとチャンスは表裏一体なので、この影響を成長戦略へとうまく変えていきたいと思っています。当社は海運業界の中では先頭集団を走っていると自負していますので、常に一歩、半歩と先んじていくことが課題だと考えています。

自社ならではの強みという部分ですが、現状ではゼロエミッションで航行できる大型の外航船舶は存在しません。ただし、重油よりも温室効果ガス(GHG)排出量が少ないものとして液化天然ガス(LNG)燃料を使用することが技術的に可能になっており、実際に利用も始まっています。いずれにせよ、LNG燃料自体が危険物ですので、LNG燃料を取り扱う船員や技術陣が必要になります。今後も新しい燃料が出てきた際には安全面の問題がありますので、船員を中核としてさまざまな船舶の技術面をカバーしていかなければなりません。

当社はLNG燃料を取り扱える船員や、LNG燃料に関するさまざまな知見を持つ技術陣を多く抱えていますので、そこはLNG燃料を推進するにあたって大きなメリットだと思っています。

当社グループの運航規模は700~800隻ですが、これは世界有数の規模といえます。また、これは日本の海運会社の特徴でもありますが、さまざまな大きさや種類の船を取り扱っています。今後、船ごとに最適な燃料を検討するにあたって、多くの知見があるということは大きな強みだと思っています。実際に、当社ではアンモニアを燃料にするということで、グリーンイノベーション基金事業の一環である国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)助成事業の公募採択を受け、実証のための研究開発を進めています。造船所やエンジンメーカーなどとパートナーシップを組む形でプロジェクトを進めていますが、さまざまな研究対象がある中で当社がアンモニアを次世代燃料の研究開発対象として最も有力だと考え、本気で取り組もうとした際に多くの会社様から賛同をいただき、力を貸していただけるというのは大変ありがたいことです。パートナー企業様から信頼されながら研究開発を進められることは、脱炭素社会へと進む上で非常に大きな強みだと思っています。

▼アンモニア燃料アンモニア輸送船(AFAGC)イメージ図

㈫AFAGC
(画像=日本郵船株式会社)

坂本:重油に比べて、LNG燃料やアンモニア燃料は低炭素化が図れるということでしょうか。

丸山:はい。アンモニアにはブルーやグリーンなどの種類がありますが、アンモニア自体を燃やす際にCO2(二酸化炭素)は発生しませんので、仮にすべての船がアンモニアを燃料にすれば、船からCO2が排出されることはなくなります。いくつもの候補がある中で、現時点ではアンモニアが将来の船のゼロエミッション燃料として有力だと考えています。

アンモニアの他に水素やメタノール、合成メタンなどの候補もあり、世界中で研究開発が進められています。一方で、それらの燃料は技術的に、もしくは船舶用燃料としてのサプライチェーンが確立されていません。その点、LNG燃料は技術的にも船舶用燃料のサプライチェーンのインフラも整っているため、当社はLNG燃料を将来的なゼロエミッション船を実現するまでのブリッジソリューションの一つと位置付け、業界内で先駆けてLNG燃料船の導入を進めています。 ただ、LNG燃料船は船の価格自体が一般的な船舶より2割ほど高いと言われており、かといって運賃は簡単に上げられません。LNG燃料を使う理由をしっかりとお伝えし、お客様に納得していただいた上で、お客様にパートナーとしてLNG燃料船を使っていただく必要があります。

▼LNG燃料自動車専用船「PLUMERIA LEADER」

㈫AFAGC
(画像=日本郵船株式会社)

坂本:低炭素・脱炭素化を見据えた自社設備投資や、新たな顧客向けサービス展開について教えていただけますでしょうか。

丸山:現在当社のLNG燃料船の取り組みで先行しているのは、立体駐車場がそのまま移動しているような6,000~7,000台の自動車を輸送する自動車専用船です。自動車専用船に関しては、今後2020年代後半にかけて竣工済みのものも含めて20隻のLNG燃料自動車専用船を就航させる予定です。ちなみに、当社は自動車専用船が停泊する港湾ターミナルも世界中で運営しています。

日本やベルギー、中国には太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーだけでエネルギーを賄っているターミナルもあります。 LNG燃料自動車専用船で自動車を再エネ100%でエネルギーを賄っているベルギーのターミナルまで運び、ベルギーのターミナルからまたLNG燃料自動車専用船に乗せ換えてヨーロッパ地域内を二次輸送する、といったサプライチェーン全体で輸送の低炭素化を進めるサービスにも取り組み、お客様に提案しています。

▼ベルギーの完成車ターミナル内に設置された風力発電タービンの写真

㈭ICO風車写真

ビジネス・DX化と社会貢献を両立させる

坂本:アクシスは地方IT企業として地域社会のための地方創生などの活動を精力的に行っています。日本郵船様で行われている社会貢献活動について具体的な取り組みをお聞かせください。

丸山:社会貢献は所謂ボランティアからビジネスにつながるパターンまで色々あるかと思いますが、当社の場合はビジネス上の行動が社会貢献にもつながるという考えも重視して実施しています。

例えば優秀な船員をたくさん育てたいという思いから15年ほど前にフィリピンの現地パートナーと協力して船員学校を設立しました。フィリピン人船員は世界中で活躍しているのですが、最終的に船長や機関長になるような人材を育成するための学校です。主に当社の船に乗ってもらう人材を育成しているわけですが、貧しい家庭の方も多くいらっしゃいますので奨学金制度を設け、卒業して当社の船に乗っていただけたなら、その給与の中から奨学金を返済していただくような仕組みを用意しています。フィリピンでは高く評価していただいており、ひいては当社の船の競争力にもつながるようなことが、フィリピンでの社会貢献にもなっているようです。

また、日本でも洋上風力発電が本格的に始まろうとしている中、当社は2022年に秋田県と包括的連携に関する協定書を締結し、秋田県に支店を開設しました。洋上風力発電事業にしっかり取り組んでいくためには技術者や作業員、現場までの船を運転する人材などが必要となるため、秋田県に洋上風力発電の総合訓練センターを設立することにしました。このように、当社の取り組みが地域の活性化に結び付く、地域の役に立つといった活動も行っています。

▼包括的連携に関する協定書の締結式を行う秋田県 佐竹知事(左)と日本郵船 長澤社長(右)

㈰秋田県との包括連携協定写真

坂本:DX、IoTが進み、スマートシティのような構想が現実味を帯びてきています。来るべき未来において、御社が考える「脱炭素社会」のイメージをお聞かせください。その社会で御社はどのような企業であり、どういった役割を担うべきだとお考えでしょうか。また、そうなるために現在御社が注力していることについて教えていただけますでしょうか。

丸山:DX化やIoT、スマートシティといった未来の社会に対して海運会社の観点で申し上げますと、「無人運航船・自律運航船」の研究開発の取り組みがあります。自動車業界ではすでに自動運転・自律運転機能として実証実験が始まっている分野です。

▼DFFASコンソーシアムで開発した無人運航システムの概要(陸上側システムから船舶の航行状況を監視し、有事には遠隔操船に切り替えも可能)

㈪無人運航船実証試験写真

当社グループは、公益財団法人 日本財団が進める無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」における「無人運航船の実証実験にかかる技術開発共同プログラム」に参画するDFFAS(Designing the Future of Full Autonomous Ship)コンソーシアムに参画し、無人運航船の研究開発を行っています。 日本国内を行き来する内航船の業界には、重要なインフラであるにも関わらず現場では人手が不足しており危険な作業もあるため、今後高齢化が進む中でどうするべきかといった課題があります。また、ヒューマンエラーによる海難事故もまだまだあるため、これら社会的課題の解決のため無人運航船の研究開発を進めています。 ただ、何かトラブルが発生しても路肩に停めることができる自動車と違い、「無人運航船・自律運航船」の開発は非常にハードルが高く、船と陸を繋ぐ通信環境の整備など課題は多くあります。法整備やルール対応についても考えていく必要があります。

真面目な企業体制が生む、データを生かしたサステナビリティ推進体制

坂本:省エネ・脱炭素を実現するには、電力やガスなどエネルギーの使用量を数値化・共有する、エネルギーの見える化が必須です。弊社は電力トレーサビリティシステムを開発するなど、エネルギーの見える化に取り組んでいますが、御社ではエネルギーの見える化について、どのように取り組んでいらっしゃいますか。

丸山:船から排出するCO2という観点でいえば、何トンの燃料を消費すれば何トンのCO2を排出したかということは、割と簡単に算出できます。ただ、自社で所有して運航している船だけでなく、船のオーナーからお借りして運航している船もあり、期間も1航海だけということもあれば、10年といった期間お借りすることもあります。それらすべてを網羅的に把握するために、まずは自社で保有している船からスタートし、次に長期で借りている船、その次に短期で借りている船に調査を広げてきたところです。

当社に限らず日本の他の企業でも、スコープ3に関してはどこまで、どのような精度でデータを取っていくのかを決めるのは大変だと思います。しかし、スコープ3という観点で自社だけでなく関係する業者の排出量も把握することについてはニーズがどんどん高まっていますので、商売としても自社の責任という意味でも、データ取得の精度を高めつつ範囲を広げる動きを進めています。

データを取得して排出量を把握するだけでなく、排出量を減らすためにはデータの精度や粒度が重要になります。現在はデータ取得の範囲を広げることと、精度・粒度を高めることの両軸で取り組んでいます。

坂本:グループ会社の排出量の報告に関しては御社が主導で行われているのか、各グループ会社が個別に行われているのかどちらでしょうか。

丸山:各事業会社がそれぞれ使用燃料量や使用電力量を当社本体に報告し、プロトコルや国際海事機関(IMO)の指針に則り当社本体での使用燃料量や使用電力量と合わせて当社グループ全体の排出GHGを集計、 第三者認証を受けた上で排出データを公開しています。23年度よりESG戦略本部という新しい本部を立ち上げ、その中に脱炭素グループを設置しますので、その部署でより高頻度に、より精度を上げた収集方法へ体制も強化する予定です。

坂本:最後の質問です。昨今は多くの機関・個人投資家がESG投資に関心を寄せています。この観点で、御社を応援することの魅力をお聞かせください。

丸山:当社を理解していただくためには、IRなどで一生懸命説明する必要があると思っていますが、一番理解していただきたいのは本当に一生懸命、真面目に取り組んでいるということです。自社だけでできることは限られていますので、多くのパートナーや他の業界の方と、お互いに良い影響を与え合いながら進んでいこうと思っています。

冒頭で申し上げたとおり、NYKグループESGストーリーを策定するのに1年以上かかりました。政府が2050年ネットゼロという目標を出したのは、2021年だったと思います。当社より先に2050年ネットゼロに関して発表する企業はいらっしゃいましたが、当社が発表したのは少し遅れて2021年の9月30日でした。達成までの道筋がないままに発表するのは無責任であるという考えから、時間をかけてNYKグループESGストーリーを策定し、ご説明させていただいたのは真面目さの裏返しであるとご理解いただければと思います。

最近は投資家の方とのESGエンゲージメントも増えていますが、当社は2050年のネットゼロに向けてLNG燃料や長期的には水素やアンモニア燃料の船に転換することと、それに必要な投資額を発表していますが、ここまでしっかりと金額に落とし込んでいる会社はなかなかないと思います。ステークホルダーの皆様におかれましては、ぜひ当社と同じ船に乗って応援していただければ幸いです。