今から始める行動変容
では、目標を定めたファミリービジネスのオーナーが前へと進み続けるために、具体的にどのような行動を取るべきなのだろうか。
まずは自社の市場における競争力を分析し、一族及び企業が持つ経営資源を考慮し、足りない部分を補うための経営変革に前倒しで着手することだ。その際、一族集団として引き継ぐべきものが何であるか、事業を支える一族で考え、受け継いできたもの(伝統)と、今市場から求められているもの(イノベーション)とをファミリービジネスの永続化の視点で融合していくことが大切になってくる。
VUCAの時代に人生100年時代が重なり、先が見通せない中で長く生きなければいけないという厳しい現実に直面しているオーナー個人には、学び、資産形成、そして健康の3領域において生き延びる手段を分散化する必要もある。
すでに第1回の記事でも書いている通り、学びで言えば、1つの専門分野のみに頼るのではなく、関連する複数の専門分野を持つことで専門知識の陳腐化リスクに備えることが重要だ。
資産形成の面では、固定費を小さくし、収入を分散して、余剰資金を長期的に運用していくことで、必要あらば最後の貸し手として個人資産を事業に投入する「責任ある株主」としての役割を担えるように備える必要がある。健康面から言えば、健康寿命を平均寿命に近づける努力を怠らず、長く働くことで、ファミリービジネスを後世に受け継いでいくための時間を確保できるようになる。
これらの行動の一つひとつは、わたしたちが日々直面している選択肢の中から意図的に選び取っていけるもので、人生をコントロールできる要素である。意識の変容は、行動の変容につながる。そして行動してみて初めてその選択肢が有効だったかどうかが分かってくるし、有効性が分かればその行動がより強化され、あなたのファミリービジネスが目指している未来像へとまた一歩近づけるのだ。
文・山田ちとら