近年は、年間100社前後の企業がIPO(新規公開株式)により証券市場へ上場している。2021年度におけるIPO企業の社長の平均年齢は50.3歳と、2011年度の52.3歳から若年化しているのが特徴だ。本企画では、市場に新しい風を巻き起こすことが期待されるIPO企業の代表者に企業概要や上場の狙い、今後の展望についてインタビューを実施している。

今回はヘルスケア・ビューティケアやハウスホールドの領域で、自社オリジナル商品と海外商品の国内販売で数々のロングセラーを生み出している株式会社グラフィコ代表取締役社長CEO長谷川純代氏にお話を伺った。

(取材・執筆・構成=杉野 遥)

株式会社グラフィコ
長谷川 純代
株式会社グラフィコ代表取締役社長CEO
群馬県生まれ。独学でグラフィックデザインを学び、1993年にクリエイティブ事務所として起業。1996 年有限会社スタジオグラフィコ(現当社)を設立、大手企業のクリエイティブ及び、商品企画、開発、マーケティング、プロモーションを行う外部シンクタンクの活動を経て、2004年にメーカーへ転身。日用品・化粧品・健康食品の分野でヒット商品といわれるミリオンセラーを多数プロデュース。途上国の自立を支援するFEELPEACEプロジェクトや、一般財団法人 PEACE DAYの評議員も務める。

株式会社グラフィコ
「モノ創りで、笑顔を繋ぐ。」を経営ビジョンとして、変容する社会課題やライフスタイルの中で頑張る方々を支援する。心身ともに健康的で美しくありたいと願う女性達や家族が笑顔で幸せな生活を楽しめる商品の創出によって、社会に貢献する企業を目指している。

目次

  1. 株式会社グラフィコの事業概要について
  2. 株式会社グラフィコが誇る事業の強み
  3. 上場の目的と上場後の変化について
  4. 激動の時代において企業に求められるもの
  5. 株式会社グラフィコの未来構想

株式会社グラフィコの事業概要について

―― 御社の歩みと事業概要についてお聞かせください。

株式会社グラフィコ代表取締役社長CEO長谷川 純代氏(以下、社名・氏名略):当社はもともと私が個人事業として始めたグラフィックデザインが祖業でございますが、顧客が増えていく中でコピーライティングやマーケティング、プロモーションという風に仕事の幅が広がり、2000年に株式会社化をいたしました。大手化粧品メーカーや海外ブランドの外部シンクタンクとして活動しておりましたが、蓄積したノウハウをもとに2004年からはオリジナル商品の企画・開発・販売を手がけるメーカーへと事業を転換いたしました。製造や物流は、各商品の特徴に合った会社へ外部委託するファブレス形態を採用しております。

現在は「人々を楽しく、幸せにできるモノづくり」をコンセプトに、ヘルスケア、ビューティケア、ハウスホールドの領域で9ブランドのオリジナル商品を手がけ、海外商品の日本における独占販売元としても活動しております。主な販売先はドラッグストア、GMS(総合スーパー)、ホームセンター、バラエティストアです。衛生対策の強化が求められたコロナ禍におきましては、日本の独占販売元として販売している酸素系漂白剤「オキシクリーン」の販売数が一層伸長しました。

オリジナル商品に関しては「よもぎ温座パット」など、女性特有の悩みに寄り添ったフェムケア商品を得意としております。今では「温活(おんかつ)」は毎年メディアで特集が組まれるキーワードですが、もともとは女性の体を温める大切さを社会に広めるために当社が創り出した言葉なんです。

▼株式会社グラフィコのビジョン

株式会社グラフィコ
(画像=株式会社グラフィコ)

株式会社グラフィコが誇る事業の強み

―― 競合他社と比較して、御社の強みはどこにありますか?

まずは、リサーチから企画、開発、宣伝、販売までのアクションを当社が一貫して行える体制です。
リサーチで消費者の深い悩みを理解し、悩みを解消するためにどのような商品が必要なのか、そして商品の実感値をいかに高められるかという点を大事にして、商品開発に取り組んでいます。また、私たちの想いと熱量を消費者に伝えるには、売り場でどのような打ち出し方をしたらよいのかということを考え抜き、プロモーションを行っています。おかげさまで、消費者の皆様や販売店舗、卸問屋さんにも商品価値に共感していただけていると感じています。

リサーチでは、コミュニケーションを重視しています。座談会やアンケートなどを活用することで、なかなか表に出てこない悩みが見つかるからです。例えば生理のつらさ。皮肉な話ですが、男女平等が求められる今だからこそ、平等であることに気を遣って女性が生理による不調をなかなか言い出せないのだとか。「ひたすら鎮痛剤を服用して我慢している」という方もいました。
このように徹底的なリサーチで消費者の深い悩みと社会の実情をつかみ、バリュープロポジションを見つけ出せることも私たちの大きな強みです。また、これは意識的な取り組みではないのですが、商品企画部は女性のみで構成されており、それも商品の企画・開発に活きていると思います。

当社の商品はロングセラーとなるものが多く、これまでに8アイテムのミリオンセラーを出しており、そのうち2アイテムは1,000万個を超えています。商品づくりの源泉は、貢献意欲の高い人材の活躍に他なりません。「何とかして解決したい」「とにかく誰かを笑顔にしたい」といった、まっすぐな想いが結果につながっている。これは、当社の最大の強みだと思っています。

▼ロングセラーのオリジナル商品「よもぎ温座パット」

株式会社グラフィコ
(画像=株式会社グラフィコ)

上場の目的と上場後の変化について

―― 上場の目的とその後の変化についてお聞かせください。

上場の最大の目的は、会社としての信用力と認知度の向上でした。というのも「この商品もこの商品も知っているけど、同じ会社のものとは知らなかった」と言われることが多かったのです。

上場後の変化でいうと、外部との連携がスムーズに進むようになった点が大きいですね。これは上場したことによる変化かどうかは分かりませんが、金融機関のサポートもあり、これまでお取引関係のなかった規模の大きな企業様との接点も進めさせていただいたりもしています。業務提携も、当社の成長にとっては大きな前進といえます。2021年6月には Varinos(バリノス)株式会社というゲノム解析を行う企業と業務提携をし、不妊治療をゲノム解析の観点からサポートする商品の開発を進めています。採用面では、もともと大企業で働いていた方からの応募が増えており、それも上場の効果なのかなと感じています。

現在の株主構成は個人株主が中心ですが、株価に対する反応がダイレクトに届くため、勉強させていただくことも多いです。IRの重要性を痛感しますね。今後は一層体制を強化し、発信方法などもブラッシュアップしていきたいと思っております。

激動の時代において企業に求められるもの

―― 激動の時代において、企業には何が求められるのでしょうか?

経済環境やリスクが変われば人々の心理も変わり、行動も変わります。その変化を見定めて、今までの概念にとらわれずに対応するスピード感と柔軟性が必要でしょう。コロナ禍に物価高、為替の変動と、まさに激動の時代です。私たち企業は価値観をブラッシュアップして、チャレンジすることが求められていると思います。

大ヒットとなったオキシクリーンは、コロナ禍による暮らしの変化に合わせたプロモーションが功を奏した好例です。コロナ禍で生活が変わり、私たちはどんなニーズが出てくるかを想像しました。まずは感染対策として、衛生面に敏感になる。そして、おうち時間が増えることでニオイが気になる。そしてテレワークなどで時間を有効に使えるようになり、今まで気にしていなかった場所をキレイにしたくなる、といった具合です。また、テレワーク下で表面化した男女の家事分担の問題も解決できないかと模索しました。

そこで、オキシクリーンは「除菌」を強く打ち出した宣伝を行うとともに、「男女関係なく家事を楽しむ!」「しんどい時こそ楽しく!前向きに過ごそう」というメッセージで、お掃除動画などで具体的な使用イメージが湧くようなプロモーションを展開しました。

これから先は耐える時期もあるでしょうから、忍耐力を持ちつつ、果敢に挑戦する姿勢を大切にしたいですね。混乱の時代こそ、「企業は人の集合体」という本質に立ち返ることが重要だと感じました。消費者を始め、社員もあらゆるステークホルダーも含めて、思いやる気持ちが何より重要だと感じています。

▼コロナ禍ではオキシクリーンの売上が大幅に伸長

株式会社グラフィコ
(画像=株式会社グラフィコ)

株式会社グラフィコの未来構想

―― 中長期計画を含めて、御社の未来構想を教えてください。

大まかなイメージとしては、5年後には規模感(売上高・従業員数)を2倍、10年後にはさらに2倍に拡大することを目標としています。より多くの方をハッピーにできるようなサービス・商品を創出していきたいです。

規模を拡大するには従来の事業に革新をもたらすことと、新規分野への推進力の両方を併せ持つことが必要だと考えています。SNSやデジタルツールを活用した多面的なアプローチでコミュニケーションの量と質を高め、顧客満足度の高い商品・サービスづくりを進めてまいります。

既存の海外事業の事業規模は全体の1割未満にとどまっていますが、さらなる成長をめざします。日本と同じような社会問題を持つ国も多々ありますので、ローカライズしつつ、水平展開できるような動きも検討しています。

働く人にとっての会社の価値を高めることも、私の大きな目標です。仕事は人生の1/3ほどの時間を費やすものですから、少しでも楽しい、意義があると思ってもらえる会社でありたいと。従業員やステークホルダーの皆さんすべてが笑顔になるような、収益性と社会貢献性を両立する企業として成長していきたいと強く思っています。
近年はSDGsも注目されるようになり、私たちが大切にしてきた社会貢献性を企業価値として見ていただけるようになりました。私たちが目指す方向へ、思い切って舵を切っていきたいですね。

――最後に、ZUU onlineをご覧の皆様へメッセージをお願いします。

私たちは「とにかく誰かを笑顔に、誰かを助けたい」という想いを胸に、具体的なソリューションを生み出し続けてきた会社です。これまでも着実に成長することを心がけてまいりましたが、まだ手を付けられていないこともたくさんあります。将来は、世界と地球全体に貢献する企業になることを目指して成長してまいります。

上場という新たなステップを踏んだ今、社会的責任を果たすことはもちろん、ステークホルダーの皆様を笑顔にできるよう、成長し続けたいと思っています。タイミングを見ながらにはなりますが、株主還元についても取り組んでまいります。投資してくださる方は「グラフィコと一緒に社会貢献をしていこう」という気持ちで応援していただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。