この記事は2023年3月10日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「割安感高まる日本株、足元の株価上昇は再評価へののろしか」を一部編集し、転載したものです。


割安感高まる日本株、足元の株価上昇は再評価へののろしか
(画像=studiov-zwoelf/stock.adobe.com)

2023年2月以降の世界の株式相場を振り返ると、日本株や米国株が伸び悩んだのに対して、欧州株は好調な推移を見せている。例えば、英FTSE100指数は最高値を更新する場面もあった。日本や米国では金融政策への不透明感が高まったが、欧州ではインフレ沈静化への期待から、今後のさらなる金融引き締めへの懸念が和らいだことが背景にあると考えられる。

もう一つの背景として、欧州企業の堅調な業績を挙げることもできよう。日米欧の企業について、12カ月先までの1株当たり利益(EPS)の市場予想を見ると、欧州企業の見通しは底堅さを保っている。それが欧州の株高をサポートしてきたと考えられる。

ここで、日米欧の株式のバリュエーションを比較したい(図表)。企業業績と長期金利の動向を反映したイールドスプレッド(10年国債利回り-株式益回り)に基づき、日米欧の株価の割高・割安度合いを判断した。図表からは、米国株が相対的に割高な推移を続けていることが分かり、そのことが足元の株価一服に関係しているとみられる。一方、欧州株は相対的に割安に推移してきたことで、最近の欧州株買いにつながったと解釈できよう。

では、日本株はどうか。もともと、底堅い企業業績見通しという点では、日本企業も同様だ。為替が円安水準で比較的安定していることもあり、先行きの見通しは欧州とさほど遜色ないように思える。そのことを踏まえると、欧州株以上に割安感が高まっており、今後、再評価の動きが強まってきてもおかしくない状態だ。

日本株の再評価という観点で注目されるポイントは次の3点である。

一つ目は、日銀新体制の下で、金融政策の修正が緩やかに進められることによる極端な円高懸念の後退。二つ目は、コロナ対策の緩和によってインバウンドも含めた国内の経済活動の活発化への期待。三つ目は、今春の賃上げ機運の高まりだ。こうした状況が正しく認識されることで、投資家の関心が欧州株から日本株へとシフトする可能性は十分にある。

3月6日の東京市場では、日経平均株価は2万8,000円台を回復して取引を終えた。これは昨年12月半ば以来、およそ2カ月半ぶりのことだ。まさに、日本株再評価の始まりとなるかもしれない。

割安感高まる日本株、足元の株価上昇は再評価へののろしか
(画像=きんざいOnline)

大和証券 チーフグローバルストラテジスト/壁谷 洋和
週刊金融財政事情 2023年3月14日号