日本の不動産価格は世界的に見て過小評価されている?

IMF(国際通貨基金)は『Global Housing Watch』というサイトを2014年6月に立ち上げて、住宅価格の国際比較等を提供している。同サイトは世界各国の住宅価格の対賃料比率と対収入比率を四半期毎に更新し、各国の住宅価格の対賃料比率と対収入比率を、歴史的な平均値からの偏差として比較したデータを公表している。このデータはプラスであれば住宅価格が過大評価されており、マイナスであれば過小評価されていることになる。

Global Housing Watchに掲載されている 2014年第2四半期もしくは最新のデータを使った分析を見ると、住宅価格の対賃料比率、対収入比率ともに、歴史的な平均値から偏差がマイナス方向に最も大きな国が日本ということになっており、日本の不動産価格は世界的に見て過小評価(“不動産投資利回り”が大きく評価)されていることがわかる。

また、日本の金利は世界的に見て最も低い水準にあり、“イールドスプレッド”(不動産投資利回りと長期金利の差)も世界最大であることを意味している。この議論は住宅市場の比較を行ったものであるが、各国内の市場においては、特にREITを通して投資を行う投資家は、居住用不動産(住宅)への投資を行うのか事業用不動産(オフィスビル)への投資を行うかの比較を投資利回りで決定することになるために、住宅市場とオフィスビル市場は連動していると考えられる。このために日本のオフィス不動産も世界的にみて最も割安な市場の1つになっていることが伺われる。


オフィスビルに対する投資効果は非常に明るい?

また、日本不動研究所と三鬼商事の予測によると、東京のオフィス賃料は2013年から上昇に転じ、2014年~2015年は前年比+6%~+9%と上昇が続き、2016年に44万坪の新規大量供給があるが同+5%を維持する見込みである。2017年以降もオフィス賃料は上昇が続くがその上昇幅は低下していく。2025年の賃料は2020年に比べて微増という予測になっている。一方、空室率は2014年に5.3%、2015年に4.6%まで低下し、その後は4.5%前後で横ばいし、2025年には4.1%となる見込みである。

この予測通りに推移すると考えると、オフィスビルに対する投資効果は非常に明るいと考えられる。外人投資家にも2つのタイプがあると考えており、欧米の投資家は上記3つの理由により東京のオフィスビルへの投資を行っていると考えている。またアジアの投資家は、上記3つの理由の他に、4つ目として、実はあまり語られていないが、自国の経済成長とともに自国の企業がグローバルに進出していくための一貫として日本への進出も考えており、そのための不動産物件を東京で買っているとも思われる。

海外投資家によるオフィスビル投資ばかりでなく、特にアジアの個人富裕層による東京の高級マンションへの投資も多く見られる。これは、東京の高級マンションの価格がアジア各国の高級マンション価格と比べて非常に安くなっているからである。2014年4月に日本不動産研究所が発表した第2回「国際不動産価格賃料指数」の調査結果によると、高級マンションの価格比較を行うと、東京(元麻布)を100とすると、上海129.3、香港212.2、台北160.7、シンガポール149.6となっている。

また、上海や香港の高級マンションの作りは東京の高級マンションと比べて作りが極めて雑であり、東京の高級マンションを見たアジアの富裕層は一発で気に入ってしまうようである。

深井 豊(ふかい・ゆたか)CFP、証券アナリスト、宅地建物取引主任者

ウェルスプランニング株式会社代表取締役、住宅ローンFP相談センター代表。ドイツ銀行で日本株PFをグローバルに提供、またヘッジファンド等で日本株の運用に従事。その後UBSで超富裕層に対するコンサルタント経て、ウェルスプランニング株式会社を設立。

会社URL:http://www.weplan.co.jp/

(提供:不動産 online)

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