外為マーケットレポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

米シリコンバレー銀行(SVB.)破綻やその後の幾つかの銀行破綻、或いは資金繰り問題に対して米財務省とFRB.は預金保護や米大手10行による問題銀行に対しての預金預け入れなどの措置を速やかに行って、米国発の金融システム不安は、一旦は落ち着いたかに見えたが、今度は欧州からスイスの銀行大手のクレディット・スイス(CS.)の株価下落を発端とした金融不安が発生した。

そもそもは米国発のSVB.の混乱によりここ数年経営内容に問題ありとされていたCS.の株価が大きく下落したことによるが、CS.の筆頭株主であるサウジ国立銀行が追加支援を拒否したことから株価が更に下げると言う悪循環となり、市場は再びリスク・オフとなって債券価格上昇=金利低下、株価下落、ドル上昇、金価格上昇と言う典型的なリスク・オフ相場となった。

週末、スイス国立銀行が奔走してスイス最大の銀行であるUBS.がCS.を買収することが決定されたが、その中身はCS.にとっては屈辱的なものであった。

買収額は30億スイス・フラン(約4300億円)で、先週末のCS.の株価から換算した約1兆円の企業価値からは半分以下のものであった。

取り敢えずアジア市場が始まる前の週末に事の解決を図ろうとしたものであろうが、株主を始めCS.のステーク・ホルダー(利害関係者)はそうすんなりとは納得するまい。

とは言ってもCS.が倒産してしまっては元も子も無くなってしまうが…

米欧の金融不安から米国長期金利は大きく下落し、一時5%を超えていた2年債利回りは3.845%へ、同じく4%を超えていた10年債利回りは3.437%へと大きく下落した。
(金曜日の終値ベース。)

米国10年債利回りの動きに対して連動性の高いドル・円相場は当然金利安につられて下げて金曜日一時131.57の安値を付けたが、上述の米財務省とFRB.の救済策などが出ると長期金利は多少戻す動きも見せており、リスク・オフ=金利低下=ドル・円下落、リスク・オフの戻し=金利上昇=ドル・円上昇と言う分かり易い動きを見せている。

以下は3月に入ってからの米国10年債利回りとドル・円相場の日々の動きを占め示しているが、見事に連動していることが分かる。

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従ってドル・円相場を取引するに当たっては、米国10年債利回りの動きを無視するわけには行かない。

2月に発表された1月の米国経済指標はことごとく市場予想を上回るものであったが、3月に入ってからは風向きが変わってきた。

2月雇用統計の非農業部門雇用者数は前月の+50万4千人から+31万1千人へと減少し、失業率も前月の3.4%から3.6%へと悪化した。

先週発表された2月の消費者物価指数(CPI.)は前年比では前月の+6.4%から+6.0%へと下落したが、前月比では前月同様に0.5%上昇した。

又生産者物価指数(PPI.)は前年比で前月の+5.7%から+4.6%へと下落したが依然として高い水準にある。

2月に発表された1月の米国経済指標を見て市場は次回のFOMC.(21日~22日に開催される。)で0.50%の利上げを期待していたが、先週発表された諸々の経済データや今回の米欧の金融不安を見て再び0.25%の利上げ期待に落ち着きつつある。
一部には、今回のFOMC.では利上げ見送りと言う意見も出だした。

週末に今回の金融不安を受けて、日銀、ECB.、イングランド銀行、スイス国立銀行、FRB.、カナダ銀行の6中央銀行が市中の銀行に対してのドルの供給策を4月末まで講じると伝えられたが、これも非常に迅速で世界的金融システム・リスクに対して主要中央銀行が果敢に対処すると言う姿勢を見せたことは市場にとって朗報である。

この決定は市場に対して、“必要とあらば、どんどんドルを供給しますよ。”と言うメッセージであるが、同時にFRB.は自国で利上げ(金融引き締め)を続けていくことが出来るのであろうか?

パウエルFRB.議長は自国のインフレ重視で利上げを行うのか、或いは金融不安払拭の為に利上げ幅を0.25%に留める、或いは利上げ中止となるのか?
前回のFOMC.後に、“インフレ対策のためなら更なる金融引き締めに対して躊躇はしない。”と言い切ったパウエルFRB.議長の采配が注目される。

ところで今回の金融不安の発端となったSVB.と同じ様なポジションを持っている銀行、或いはヘッジ・ファンドはうようよ居るのではなかろうか?

簡単に言えばこれだけ長期金利が上昇するとは思わずに債券先物を売り越していて、今回の金利上昇(債券価格下落)で痛手を被った連中は少なからず居るのではなかろうかとの勝手な憶測である。

これだけの中央銀行のRescue package(救済策)を見ても相場は落ち着きを取り戻していない。
月曜日午後2時半現在でドル・円相場は131円台で低迷しており、日経平均株価は前日比で凡そ-340円と冴えない動きを見せている。

今までの経験則から言うとこの様な中央銀行の協調策の後は相場は強烈に戻していたと思うのだが..
ドル・円で言えば133円~134円台を回復していても不思議ではないのだが、誰かが売っているのだろう。

今回の一連の金融不安に対して、未だ未だ予断は許さないと思われる。

先週も述べたが現在の様な相場展開ではテクニカル分析は余り役に立たないので、今週もテクニカル分析の見立てはパスさせて頂く。